はつゆき型

はつゆき型

初代DD、次世代護衛艦として建造

昭和末期〜平成20年代、海自の屋台骨を支えた軍艦

※文頭写真:海上自衛隊

昭和57年(1982年)に1番艦「はつゆき」(DD-122)が就役、昭和62年(1987年)の12番艦「しまゆき」(DD-133)まで5年にわたり12隻が建造されました。昭和末期〜平成20年代まで海自護衛隊の屋台骨を支えた護衛艦級です。

初の純ガスタービンエンジン艦であり、ヘリコプター、情報システム、兵装などバランスに優れた護衛艦となっています。

1番艦の就役から約35年が経過しており、同「はつゆき」(DD-122)の平成22年(2010年)退役に続き、平成28年(2016年)までに9隻が退役もしくは練習艦への艦首変更となり、現役を退いています。

「はつゆき型」は平成22年(2010年)〜平成30年(2018年)頃にかけて退役するわけですが、後継を担うのは、「はつゆき型」の2,950トン〜3,050トンを大型化し改良した「あさぎり型」(3,500トン〜3,550トン)です。「はつゆき型」の最終艦である「しまゆき」(DD-133)が就役した翌年の昭和63年(1988年)から始まり8隻が就役しています。

8艦8機体制(新八八艦隊)の基盤となる

海上自衛隊の護衛艦隊は昭和36年(1961年)の創設以来、当然のことながら様々な情勢にあわせた計画のもとに建造され、配備されています。8機8機体制という言葉もその中からうまれ、護衛艦8隻、ヘリコプター8機で1つの機動運用部隊(護衛隊群)を構成するという意味です。

大日本帝国海軍時代の八八艦隊という艦隊整備計画になぞらえて新八八艦隊とも呼ばれます。この編制は現在でも継承されており、護衛隊群は護衛艦4隻で構成される護衛隊を2つ束ね、8艦8機体制となっています。

戦術データ・リンクを搭載できず

12隻という多数を建造、バランスの良い走攻守を備えて海自護衛艦隊の基幹を担った「はつゆき型」でしたが、予算の関係から戦術データ・リンクであるリンク11を搭載することができず、これが大きなマイナスポイントとなりました。

リンク11とは、米軍、NATO軍、日本の海上/航空自衛隊など、西側諸国において、各種情報を通信・共有する際に使用される戦術データ・リンクです。飛行機でも艦艇でも、どれか1つの部隊が敵を発見すれば、その情報は即座にリンク11というネットワークに繋がる全部隊が共有することとなり、最も有効な打撃を加えることができます。

後継の「あさぎり型」では、これらの欠点は改良され、リンク11、14、衛生通信装置などC4I(情報処理システム)関連の装備充実が実現しています。

「はつゆき型」計画当時のこと

「はつゆき型」が計画されたのは昭和52年(1977年)。時は東西冷戦の最中、強力な米国空母艦隊に対抗するため、ソ連は空や海、さらに海中からの対艦ミサイルによる飽和攻撃体制を整えていました。

昭和29年(1954年)の防衛庁発足、海上自衛隊創設から23年が経過しており、1950年代後半に就役した「はるかぜ型」、「むらさめ型」などの老朽化が進んでいました。また、自主国防論議の高まりとともに作成された第4次防衛力整備計画(昭和47年度〜昭和52年度)終了年でもあります。

海自では対潜能力に重点を置いた対潜護衛艦(DDK)と対空に重点を置いた対空護衛艦(DDA)を配備してきましたが、ポスト4次防における8艦8機体制ではこれを統合するより高性能の汎用護衛艦(DD)が求められた結果、本級「はつゆき型」が計画され、12隻を建造、長らく海自護衛隊群の基幹を担う艦艇となりました。

この後、DDK、DDAを統合した汎用護衛艦(DD)は継続して建造されており、「はつゆき型」は次の「あさぎり型」とともに汎用護衛艦(DD)における第1世代といわれます。

少し話がそれますが、当時の出来事を見てみます。前年の昭和51年(1976年)にはロッキード事件が起こり、南北ベトナム統一によりベトナム社会主義共和国が成立、昭和52年(1977年)にはジミー・カーターが米大統領に就任、海自「しらね型」1番艦「しらね」(DDH-143)が起工されています。

船体・機関

基準排水量は2,950トン、8番艦「やまゆき」(DD-129)以降は3,050トン。全長は130m、全幅13.6m、深さ8.5m、速力は30kノット、航続距離は20ノット巡航において5,590海里、乗員約200名、1番艦「はつゆき」(DD-122)の建造費用は300億円です。

次級「あさぎり型」3,500トン、「はつゆき型」と「あさぎり型」の後継ともいえる「むらさめ型」では4,550トン、続く「たかなみ型」は4,650トン、さらに射撃指揮装置を国産とし国産純度の極めて高い「あきづき型」は5,050トンとなっています。

現在の護衛艦はガスタービンエンジン4基が標準となっていますが、初めてこれを実現したのが「はつゆき型」です。世界で初めて純ガスタービンエンジン化した軍艦は英国海軍の21型フリゲートであり、昭和49年(1974年)から翌年にかけて就役しています。

「はつゆき型」は、英国ロールス・ロイス社のタイン、ロールス・ロイス タイン(4,620ps)を巡航用として2基、英国ロールス・ロイス オリンパス TM3B(22,500ps)を高速用として2基、これらをCOGOG方式により搭載しています。

COGOG方式とはCOmbined Gas turbine Or Gas turbineの略であり、これは、最大出力付近において最も燃料効率が良くなるガスタービンエンジンの特徴にあわせて、巡航時には出力の小さいロールス・ロイス タイン(4,620ps)を使用し、高速航行時には出力の大きいロールス・ロイス オリンパス TM3B(22,500ps)を使用することにより、効率的な運転を可能にしています。

対空兵装

◎62口径76ミリ速射砲(1基)
イタリアのオート・メラーラ社が開発し、世界40か国以上で使用されているベストセラー艦砲「コンパクト砲」を日本が「62口径76ミリ速射砲」として採用したもの。陸自の純国産戦車10(ひとまる)式戦車の砲塔を製造したことで名高い日本製鋼所がライセンス生産しています。前甲板に設置され、通常弾の最大射程は18,400m、発射速度は毎分85発です。

62口径76ミリ速射砲。写真:海上自衛隊
62口径76ミリ速射砲。写真:海上自衛隊

◎短SAM装置一式
「短」とは短距離、SAMとはShip to Air Missileの略、艦対空ミサイルという意味で、短距離艦対空ミサイルとなります。具体的にはシースパローという米国製ミサイルを発射する装置一式ということになります。シースパローは発展型もあり、最新の「あきづき型」にも発展型シースパロー(ESSM)が搭載されています。「62口径76ミリ速射砲」と同じく、西側諸国の標準装備といってもいいベストセラーです。

短SAM装置一式。短距離艦対空ミサイル「シースパロー」のことです。写真:海上自衛隊
短SAM装置一式。短距離艦対空ミサイル「シースパロー」のことです。写真:海上自衛隊

「はつゆき型」には当初E型、後にF型とM型が使用されました。F/M型は有効射程18km、飛翔速度は最大で毎秒850mです。「あきづき型」の発展型シースパロー(ESSM)は、射程距離50km、飛翔速度マッハ2.5〜3となっています。

◎高性能20ミリ機関砲(2基)
米国レイセオン・システムズ社が開発した艦艇用近接防御火器システム(CIWS=Close In Weapon System)、ファランクス(Phalanx)を海上自衛隊が採用し「高性能20ミリ機関砲」と呼称しています。M61バルカン6砲身ガトリング砲をシステム化したもので、捜索・追跡レーダー、制御装置などシステム全体が独立しているため追加装備が容易となっています。

高性能20ミリ機関砲(CIWS)。写真:海上自衛隊
高性能20ミリ機関砲(CIWS)。写真:海上自衛隊

近接という名の通り、有効射程は1.5kmと至近距離ですから敵ミサイルからの艦艇防衛としては最終手段ということになります。飛翔してくる敵ミサイルを約5.6km付近において探知し迎撃。発射した弾の弾道をレーダーで計測、補正して目標に着弾させます。
いずも型、あきづき型、ひゅうが型、こんごう型などの海自護衛艦を始め、米海軍、英海軍、豪海軍、トルコ海軍、カナダ海軍など世界各国の海軍に採用されています。

対水上兵装

◎SSM装置一式
SSMとはShip to Shop Missileの略で、艦隊艦ミサイルを意味します。「はつゆき型」では米国のハープーンミサイルを採用し、4連装発射筒を2基備えています。敵ミサイルのように自艦に飛来してくる目標を迎撃する場合と異なり、敵艦を攻撃するため敵艦より遠くから撃てることが望ましく、長い射程距離が求められます。米国のハープーン(射程約130km)、トマホークTASM(開発未定、射程1,000km?)、ロシアのP-270(射程90-250km)、P-800マラヒート(射程300km)などがあります。

SSM装置一式。「はつゆき型」には艦対艦ミサイルとしてハープーンが搭載されています。写真:海上自衛隊
SSM装置一式。「はつゆき型」には艦対艦ミサイルとしてハープーンが搭載されています。写真:海上自衛隊

ちなみに、対艦攻撃に関して日本には世界最強クラスの対艦攻撃能力を持つ三菱F-2戦闘機があり、こちらが打撃の主力を担います。F-2はいずれも国産の80式空対艦誘導弾(ASM-1、射程50km)、93式空対艦誘導弾(ASM-2、射程144-170km)、さらには平成28年度開発完了予定の大幅な能力向上型XASM-3といった対艦ミサイルを4発搭載でき、4機編隊16発の強力な攻撃力を誇ります。
世界有数の対艦攻撃能力を持つ、日本のF-2戦闘機。写真:USAF
世界有数の対艦攻撃能力を持つ、日本のF-2戦闘機。写真:USAF

対潜兵装

◎アスロック装置一式
アスロック(ASROC)はAnti Submarine Rocketの略で、米国で開発された艦対潜ミサイルです。8連装の射装置はアスロックランチャーといい、こちらは防衛省技術研究本部が開発し三菱重工業が製造しています。「はつゆき型」では艦橋の前あたりに設置されています。

アスロック装置一式。艦対潜ミサイルと発射装置です。写真:海上自衛隊
アスロック装置一式。艦対潜ミサイルと発射装置です。写真:海上自衛隊

アスロックは英文のとおりロケットであり、先端にホーミング魚雷(Mk.44、73式、Mk-46魚雷)を取り付けます。アスロックロケットにより目標付近まで最大速度マッハ1超で飛翔すると、ホーミング魚雷を切り離します。魚雷はパラシュートにより海面に着水、目標に向かいます。最大射程は約5nm(9.25km)、弾体は全長約5.2m、重量約450kg、直径約30cm、発射機の重量は23トンです。平成5年(1993年)から就役した「こんごう型」以降は概ね垂直発射装置(VLS=Vertical Launching System)に切り替えられています。他に、3連装の短魚雷発射管を2基備えています。

艦載機

「はつゆき型」の中央後部に、中二階のような形でヘリコプター発着スペースが設けられています。対潜能力の高いヘリコプターは海上自衛隊の護衛艦にとってはとても重要な装備です。当初はHSS-2Bが搭載され、その後、後継のSH-60Jへと切り替えられました。

日本の優秀な潜水艦ハンター、SH-60Jヘリコプター。
日本の優秀な潜水艦ハンター、SH-60Jヘリコプター。

「はつゆき型」4番艦「さわゆき」(DD-125)。写真:海上自衛隊
「はつゆき型」4番艦「さわゆき」(DD-125)。写真:海上自衛隊

種別汎用護衛艦
運用者海上自衛隊
はつゆき型
製造者-
母港-
排水量2,950t、3,050t
全長130m
全幅13.6m
吃水4.1m、4.2m、4.4m
速力30ノット
乗員200名
発動機COGOG方式/ロールス・ロイス タインRM1C×2、ロールス・ロイス オリンパスTM3B×2
主な兵装62口径76ミリ速射砲x1
SSM装置一式・短SAM装置一式
アスロック装置一式
3連装短魚雷発射管x2
高性能20ミリ機関砲x2
搭載機対潜・哨戒ヘリコプター(SH-60J)1機
進水1980年-1988年
就役1982年-1990年
退役2010年-

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