チャンス・ボートF7Uカットラス

Chance Vought F7U Cutlass
チャンス・ボートF7UカットラスChance Vought F7U Cutlass

傑作F-8への道標!?

革新的すぎた機体

※文頭写真:USNAVY

写真をみれば航空機の知識があまりない人でも、ちょっと変わった形の戦闘機だと感じるはずです。航空関連書籍の珍機コーナーなどでは必ずといっていいほどとりあげられ、散々な失敗作と揶揄されることもしばしば。そんなジェット戦闘機史上の異端児が本機、チャンス・ボートF7Uカットラスです。

レシプロ機から最新鋭のF-35ライトニングⅡまでほとんどの艦上戦闘機には水平尾翼(胴体後部に水平につけられた翼)がついていますが、F8Uカットラスにはついていません。かわりに後退角を備える主翼が胴体後部まで伸び、その後部に垂直尾翼があります。これに双発のエンジンを備える姿は、ナチスドイツの研究成果を引き継いたものでした。

艦上に並ぶF7Uカットラス。前脚の長さがわかります。PHOTO USNAVY
艦上に並ぶF7Uカットラス。前脚の長さがわかります。PHOTO USNAVY

水平尾翼というのは水平方向の安定性を司り、可動式の昇降舵などによって機首の上げ下げを制御する大きな機能を持つ部品です。通常は機体後尾についていますが、機体前方に装備される場合もあります。F7Uにはこの水平尾翼がなく、さらには高揚力装置(フラップ)も装備できませんでした。

狭い甲板から発進するため急に大きな揚力を得なければいけない艦上戦闘機において、水平尾翼、高揚力装置(フラップ)などの高揚力発生装置のない設計は大きな足かせとなりました。この解決策として14度もの迎え角を持つ程に最初から機首を上げる、という方策がとられました。

高速で狭い艦上で離発着する際に、機首が14度も上を向いているのです。要するに単純な話、視界が悪い。前方がよくみえないのです。さらに機首を上げるために主脚を長くしたため脆弱になりました。このため、生産数の1/4が離着艦時に失われたといいます。

先進的過ぎたF7Uカットラス。PHOTO USNAVY
先進的過ぎたF7Uカットラス。PHOTO USNAVY

そもそもこのような形状になったのは、米海軍の艦上戦闘機高速化要求に答えるためのものでした。一応、艦上機としては最高速度を記録し、米戦闘機として初めて設計段階からアフターバーナーを搭載した機体としても名を残しています。しかし、いくら高速性能があっても、まともに離着艦できない艦上戦闘機ではまともな運用はできず「ガットレス(根性なし)カットラス」と揶揄されることとなりました。

F7Uが初飛行した1948年9月から7年後、チャンス・ボート社は当時の空軍機をも凌駕する艦上ジェット戦闘機の傑作、F-8クルーセイダーを生み出すこととなります。

確かにF7Uカットラスは革新的すぎました。しかし、数ある設計案の中からこのような革新的な案を選ぶところに、ネイティブを殺しつくしてアメリカ大陸を奪い取り、第2次世界大戦に勝利し、世界の覇権に向かって邁進する移民国家アメリカのパワーを垣間見るようにも思います

運用者アメリカ海軍
主要なバリエーションXF7U-1 試作機。3機製造され事故全損
F7U-1 量産型。14機製造F7U-2 計画のみ。エンジン換装
F7U-3 量産型。エンジン換装(J46-WE-8 アフターバーナー付)。152機製造
F7U-3M 98機製造。レーダー換装。空対空ミサイル、AAM-2スパロー対応。
F7U-3P 写真偵察型
A2U-1 計画のみ。エンジン換装ほか
生産数320
スペック型式-
全 幅11.78m
全 長13.48m
全 高4.45m
翼面積49.75㎡
自 重8,390kg
総重量/最大離陸重量10,917kg
発動機J46-WE-8A(2,177kg/AB 2,722kg)×2
最大速度1,041km/h
実用上昇限度15,250m
戦闘行動半径-
航続距離1,120km
乗 員1名
初飛行1948年9月29日
就 役1954年4月
退 役1957年9月
兵 装20mm機関砲×4
2,500kg爆弾

「チャンス・ボートF7Uカットラス」への1件のフィードバック

  1. 艦載機の命である離着艦性能に致命的欠陥があったので、早期退役は当然でしたが、当時操縦していたパイロットからは空戦能力は非常に高いという評判もあったと聞きます。もし、ベトナム戦争の頃まで使われていたら、当初のMig17との空中戦でリードできたかも知れませんね。でも、クレーセイダーがあったから関係ないか…。

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