ジョージ・H・W・ブッシュ

George H.W.Bush(CVN-77)
ジョージ・H・W・ブッシュGeorge H.W.Bush(CVN-77)

世界最強、アメリカ海軍最新空母

ニミッツ級空母基本を踏襲しつつ、次世代を見据えた新機軸を導入

※文頭写真:アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦、第10番艦、ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)は、アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦の第10番艦。2009年に就役したアメリカ海軍最新の航空母艦です。次世代の空母としては2016年に就役を予定して建造中の次世代新型空母、ジェラルド・R・フォード級が控えています。

キティホークに代わって横須賀に配備されるといわれたこともありましたが、母港はアメリカ、バージニア州ノーフォークとなりました。

2011年1月29日、大西洋において訓練中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY
2011年1月29日、大西洋において訓練中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY

2013年7月10日、無人機XB-47がジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)への初着艦に成功したことは、近年進化を続ける無人機開発において記念碑的な出来事となりました。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)艦上において、タッチアンドゴーを行う、無人艦上戦闘機XB-47。無人機発の空母への離着艦となりました。2013年5月17日。最も高価かつ脆弱な部品である人間を載せない無人機は画期的な技術です。PHOTO USNAVY
ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)艦上において、タッチアンドゴーを行う、無人艦上戦闘機XB-47。無人機発の空母への離着艦となりました。2013年5月17日。最も高価かつ脆弱な部品である人間を載せない無人機は画期的な技術です。PHOTO USNAVY

発注は2001年1月26日、イラクの自由作戦が始まって半年後の2003年9月6日に起工され、2006年10月9日に進水、2009年1月10日にアメリカ、バージニア州ノーフォークの海軍基地において就役しています。

建造はアメリカ、バージニア州のニューポート・ニューズ造船所で行われました。同造船所は、アメリカ国内最大の民間造船所であり、全長333mという大きさに加えて最新の技術を駆使したニミッツ級空母を建造可能な唯一の造船所です。

全体のサイズは満載排水量10万2,000t、全長333m、全幅41m、吃水12.5m、速力30ノット+とこれまでのニミッツ級空母と同等です。機関も同じくウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービンを4基搭載し、4軸推進により26万shp(194MW)を出力します。建造費は62億ドル(約7,500億円/1ドル120円で換算)。

2006年3月、ニューポート・ニューズ造船所で建造中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。7か月後の10月9日に進水します。PHOTO USNAVY
2006年3月、ニューポート・ニューズ造船所で建造中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。7か月後の10月9日に進水します。PHOTO USNAVY

ノースロップ・グラマン社のニューポート・ニューズ造船所で建造中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。スーパーリフトが700トンもの艦橋を釣り上げています。PHOTO USNAVY
ノースロップ・グラマン社のニューポート・ニューズ造船所で建造中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。スーパーリフトが700トンもの艦橋を釣り上げています。PHOTO USNAVY

ニミッツ級空母

ロナルド・レーガン(CVN-76)が9番艦となるアメリカ海軍のニミッツ級は世界最大となる軍艦の級であり、世界で初めて量産された原子力空母の級でもあります。

アメリカは原子力空母を1950年頃から計画しており、初の原子力空母となったエンタープライズ(CVN-65)は1957年に発注され、1961年に就役、2012年に退役して現在解体作業が行われています。

飛行甲板において消防訓練中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY
飛行甲板において消防訓練中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY

エンタープライズに次ぐ原子力空母となるニミッツ級のネームシップである第1番艦、ニミッツ(CVN-68)は1967年に発注され、1972年に進水、1975年に就役しました。その後2009年にジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が就役するまで34年間に渡り10隻が建造され、アメリカ海軍の主力として世界中に睨みをきかせています。ニミッツ級の耐用年数は45年〜50年といわれていますから、第10番艦のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が退役する2060年頃まで第一線で活躍することとなります。

ニミッツ級の各部

船殻(せんこく=機関などを除く、船の骨格と外部を形成する構造主体)の特徴としては、まず第一にその大きさでしょうか。全長333m、全幅76.8m、満載排水量100,020t〜104,600tという巨体です。飛行甲板の面積は4.5エーカー(1.82ヘクタール)にもなります。ちなみに、戦艦大和は全長263m、全幅39m、満載排水量71,600tですから、その大きさがわかります。

空母の力となる艦載機数は最大90機ですが、艦上戦闘機56機、ヘリコプター15機、概ね70機程度を搭載して運用されています。最新の戦闘機を50機以上搭載する攻撃力は、例えばF-16を60機保有するノルウェー空軍に匹敵するものがあります。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)艦上の第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)、“トムキャッターズ”。使用機はF/A-18E。PHOTO USNAVY
ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)艦上の第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)、“トムキャッターズ”。使用機はF/A-18E。PHOTO USNAVY

そして、ニミッツ級では、これら艦載機が使用する燃料や武器・弾薬などの搭載量はそれまでの通常動力空母に比べて倍増しており、航空燃料約6,000t、航空機用の武器・弾薬約1,250tを搭載することができます。この搭載量のおかげで最大16日間という作戦行動を可能にしています。

85機〜90機が搭載される航空機のオペレーションにおいても、離着艦・回収装置の自動化が図られ、より少ない人数によってオペレーションできるよう効率化が進められています。計画中には現在のスチームカタパルトに変えて、リニアモーターを使用したより新しい形式の電磁式カタパルトが採用されるといわれていましたが、結局現在主流のスチームカタパルトとなりました。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)において離艦しようとする第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)、“トムキャッターズ”。PHOTO USNAVY
ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)において離艦しようとする第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)、“トムキャッターズ”。PHOTO USNAVY

蒸気カタパルトの蒸気測定値を監視する船員。PHOTO USNAVY
蒸気カタパルトの蒸気測定値を監視する船員。PHOTO USNAVY

近代空母の代名詞的な飛行甲板であるアングルド・デッキ、電波環境を良くするため後方に配置されたレーダーだらけの艦橋、船首吃水下にある赤い突起(バルバス・バウ)などが印象的です。

アングルド・デッキとは中心線から左舷側に8度以上(本艦の場合は9度4分)開いた着艦用の滑走帯のことです。飛行甲板が昔の空母のように直線のみによって構成されるのではなく、直線の他に斜めに滑走路があります。

アングルド・デッキは空母を変えた画期的な発明です。直線式飛行甲板の場合、前方に飛行機が駐機していると着艦に失敗した場合に接触事故を起こす他、オペレーションを阻害してしまいます。これに対して、アングルド・デッキは斜めに開いた着艦専用甲板を設けることにより、発艦・着艦のオペレーションを劇的に向上させました。

バルバス・バウは、船首吃水下につけられた赤い大きな突起。水をかき分けて進む際に生じる波の抵抗を打ち消すためのものです。

動力機関は、ウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービン4基を4軸により配し、26万馬力を出力します。エンタープライズでは4基であった原子炉は、技術の進歩により半分の2基となり、より効率的な艦内設計を可能にしています。

蒸気タービンは最高出力付近において最も効率良くなるため、全タービンを稼働して出力を調整するのではなく、4軸によりできるだけ最も効率的な最高出力付近で運用できるようにしています。

A4W原子炉の出力は商用原子炉の数分の1〜十数分の1といわれています。あらゆる過酷な環境下において確実な作動を要求される軍用機器は、民間のものより低性能であることがよくあります。例えば戦闘機のコンピュータは、最新のコンピュータよりもはるかに旧式のものが使われています。原子炉は主機関の他、蒸気カタパルトにも高圧蒸気を供給しています。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)にはそれまでの蒸気カタパルトにかわり、電磁式カタパルトが採用される予定でしたが、蒸気カタパルトとなりました。これは、高度な技術を要する電磁式カタパルトの開発が間に合わなかったといわれており、次世代のジェラルド・R・フォード級に搭載されることになっています。

蒸気カタパルトは、アングルド・デッキとあわせて空母を劇的に変えた発明。航空機を蒸気の力によって射出する装置です。カタパルトの長さは約94mあり、約2秒で時速265km程度まで加速させることができます。ロナルド・レーガン(CVN-76)にはキティ・ホーク級のMk.13カタパルトの改良型であるMk.13-2が4基設置されています。

飛行機が着艦する際には飛行機の機体につけられたアレスティング・フックを艦のアレスティング・ワイヤーに引っ掛けて停止させます。ロナルド・レーガンにはMk.7-3と呼ばれるアレスティング・ワイヤーが採用されています。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)に着艦する第213戦闘攻撃飛行隊(VFA-213)“ブラック・ライオンズ”のF/A-18F。PHOTO USNAVY
ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)に着艦する第213戦闘攻撃飛行隊(VFA-213)“ブラック・ライオンズ”のF/A-18F。PHOTO USNAVY

環境対策のアップグレードは、真空機器(VCHT)と海洋消毒装置です。二つの技術を融合したシステムを搭載した空母はジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が世界初となりました。ちなみに、艦内には423もの便器が設置されています。

現代の空母は巨大な電子機器の塊といってもいい程、複雑な電子設備を搭載しています。ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)では、光ファイバーを活用して軽量化・省力化が進められています。また、電子機器の搬入・整備などを容易にするため船室の一部はモジュール化され、柔軟な対応を可能にしています。

主なレーダー

対空レーダーは、AN/SPS-49A(V)1が搭載されています。AN/SPS-49はアメリカのレイセオン社が開発した2次元対空レーダーです。レイセオン社は世界第一位のミサイルメーカーとして知られています。

探知距離はレーダー反射断面積(RCS=Radar Cross Section)1平米の目標に対して460km、探知高度は46,000m、精度は56mです。1975年に配備されて以来、改良を重ねながら世界各国の軍艦に搭載されている実績ある対空レーダーです。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)に搭載されているA(V)1型は1990年代に登場した改良型。目標毎の速度測定、クラッター抑制性能が向上するなどしています。クラッターとは、レーダースリーン上の乱れ(擾乱)のことです。

次世代のジェラルド・R・フォード級ではイージス艦に搭載されている多機能レーダーの最新型であるAN/APY-3が搭載される予定です。

射撃指揮レーダーはSPQ-9B。こちらも1970年代に就役した定評あるパルス・ドップラー・レーダーであり、水上目標と低高度の空中目標を対象とした捜索・追尾レーダー。探知距離は137km、探知高度は610mです。ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)に搭載されたB型はそれまでの2次元から3次元レーダーとなりました。3次元レーダーはビームを送受信することにより、方位と仰角を同時に走査することができます。

多くの艦上機を運用するニミッツ級は多数の航空管制レーダーを搭載しています。遠距離ではAN/URN-25戦術航法装置により誘導し、次いで92.6km〜55.56kmの探知距離を持つAN/APN-43航空管制捜索レーダーが航空機を補足します。さらに近づいてくるとAN/SPN-46空母進入用レーダーが使われます。条件が揃えば自動着艦も可能な程に進化していますが、パイロットの技量を維持するため普段は手動にて行っているといわれています。

着艦の最終段階において使用される最終段階光学着艦装置は、縦横にライトを並べ、着艦の最終段階にある操縦士が進入角度や方向を判断することができる装置です。ニミッツ級空母にはより改良された改良型フランネルレンズ光学着艦装置が搭載されています。

兵装

いかに強力な艦上戦闘機群を持っていても、1隻約7,500億円(62億ドルを1ドル120円で換算)の原子力空母が単独で行動することはなく、アメリカ海軍空母は空母打撃群(CSG=Carrier Strike Group)という単位で行動し、艦上戦闘機を除いた兵装は控えめなものです。

ちなみに、構成は時代や状況により異なりますが、現在では原子力空母1隻、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦1隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦×2、ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦1隻、補給艦1隻、総乗員は約7,000人というのが標準的な空母打撃群となっています。

主な兵装はMk.29 ESSMランチャー×2、RIM-116×2、ファランクスCIWS×4となっています。

Mk.29 ESSMランチャー
Mk.29 ESSMランチャーはRIM162 ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)艦対空ミサイルを発射します。速度はマッハ2.5〜3、射程距離は30〜50km、空母に搭載された射撃指揮装置(イルミネーター)からのレーダー波による誘導と、ミサイル自身のセンサによって自律誘導する慣性航法装置を併用したセミ・アクティブ・レーダー・ホーミング
(SARH=Semi Active Radar Homing)を採用しています。

ミサイル自身の能力のみに頼らないこの方式は、ミサイル開発の負担が軽減される反面、1目標に対してレーダーが1つ必要となり、飽和攻撃に対する同時多目標迎撃に弱点があったものの、近年では時間分割情報処理によりこの問題を解決しています。

RIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイル
上記のRIM-162 ESSMが30〜50kmの対空迎撃を担当するのに対して、400m〜1.5kmという近距離を担当するのがRIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイルです。こちらは艦のレーダーを活用せず、自身のレーダーのみによって対艦ミサイルを迎撃します。4枚の後翼によってゆるやかに回転しながら飛翔することから名前がつきました。艦のレーダーに依存せず、タ弾数近接迎撃が可能な21連裝の発射システムを2基搭載しています。

艦載機

アメリカ海軍の空母に艦載される航空機は、空母航空団(CVW=Carrier Air Wing)と名付けら編制されています。ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)に艦載されるのは第8空母航空団です。内訳は以下のとおりです。

アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦、第10番艦、ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦、第10番艦、ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY

第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)“トムキャッターズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 31 “TOMCATTERS”
使用機:F/A-18E ブロック2

第213戦闘攻撃飛行隊(VFA-213)“ブラック・ライオンズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 213 “BLACK LIONS”
使用機:F/A-18F ブロック2

第15戦闘攻撃飛行隊(VFA-15)“バリオンズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 15 “VALIONS”
使用機:F/A-18C

第87戦闘攻撃飛行隊(VFA-87)“ゴールデン・ウォーリアーズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 87 “GOLDEN WARRIORS”
使用機:F/A-18C

第134電子攻撃飛行隊(VAQ-134)“ガルーダズ”
ELECTRONIC ATTACK SQUADRON 134 “GAURUDAS”
使用機:EA-6B

第124早期警戒飛行隊(VAQ-124)“ベア・エーセス”
CARRIER AIRBONE EALRY WARNING SQUADRON 124 “BEAR ACES”
使用機:E2-C

第9ヘリコプター海上作戦飛行隊(HSC-9)“トライデンツ”
HELICOPTER SEA COMBAT SQUADRON 9 “TRIDENTS”
使用機:MH-60S

第70ヘリコプター海洋攻撃飛行隊(HSM-70)“スパルタンズ”
HELICOPTER MARITIME STRIKE SQUADRON 70 “SPARTANS”
使用機:MH-60R

第40艦隊後方支援飛行隊(VRC-40)“ロウハイズ”
FLEET LOGISTICS SUPPORT SQUADRON 40 “RAWHIDES”
使用機:C-2A

種別原子力空母
運用者アメリカ海軍
ニミッツ級
製造者ノースロップ・グラマン
母港アメリカ、バージニア州、ノーフォーク
排水量102,000t
全長333m
全幅76.8m
吃水12.5m
速力30ノット(55.6km/h)+
乗員
発動機ウェスティングハウスA4W原子炉×2
蒸気タービン×4(260,000shp)
4軸
主な兵装Mk29 ESSM 短SAM×2
RIM-116 RAM
搭載機90機
進水2006年10月9日
就役2009年1月10日
退役-

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