
F-5E/Fの発展型
優秀な軽量級戦闘機ながら、F-16に敗れる
ノースロップF-20タイガーシャーク(1982)は、名機F-5の後継機としてノースロップ社が開発したアメリカの戦闘機です。友好国への供与を目的に開発されましたが、折しも実運用実績豊富なF-16の海外供与が解禁となり、試作機の段階で中止となりました。
アメリカの戦闘機は基本路線として世界最強を目指すため、そのほとんどが大型・フル装備の高級機となり、本体価格の高騰はもとより、更新、整備などには高い技術力が必要とされ、維持費も膨大なものとなります。
自由諸国の盟主であるアメリカの戦闘機は、有効各国に供与されますから、このような高級機ばかりでは一部の先進国しか購入・運用は困難となっていました。
そのため、アメリカは友好国供与を主眼とした軽量級の安価で高性能な戦闘機を随時開発してきました。1959年(昭和34年)に初飛行し、トルコ、ノルウェー、台湾、ギリシャ、イランなどに供与されたF-5A/B、1972年に初飛行し、ブラジル、イエメン、スイス、南ベトナム、インドネシア、タイ、エチオピア、オーストリア、メキシコ、チュニジアなどに採用されたF-5E/FタイガーⅡなどがこれにあたります。
上記の2機種を開発したアメリカのノースロップ社が後継として開発したのが、F-20タイガーシャークです。
1970年代中ごろ、F-5E/Fの導入国であった台湾は、軍事力増強を進める中国に対処するため、F-5E/Fに空対空ミサイルAIM-7スパローの搭載能力を加えるようアメリカに要求しました。
アメリカは台湾の要求に応じてノースロップ社に検討を要請、その結果、AIM-7スパローは視界外射程(BVR=Beyond Visual Range、概ね37km以上の射程)を持つミサイルであり、これが搭載されれば大きく攻撃力は強化されますが、それに伴う大型レーダーの搭載などにより機体が大型化し、機動性が損なわれるということがわかり、この計画は中止となりました。
海外向けのF-5E/F発展型の需要を感じたノースロップ社は自社資金において検討を開始します。フライ・バイ・ワイヤ(飛行制御システム)の導入、主翼付け根延長部分の増加、レーダー強化などを施したF-5Gという発展型を開発します。
その後、1970年代後半にアメリカは軍事輸出制限緩和を行い、共産陣営に対抗しうる新型輸出用戦闘機の開発を決定します。これに沿って、ジェネラル・ダイナミクス社のF-16(ダウングレード版)とノースロップ社のF-20が開発されました。
F-20はF-5E/Fの後継であるF-5Gをさらに発展させ、視野拡大型HUD(Head Up Display)、両手をスロットルとスティックにおいたままレーダーの操作やミサイルの発射を行えるHOTAS(HeadOn Throttle and Stick)の搭載など大幅に性能を向上していました。
性能的にはほぼF-16と同等だったF-20でしたが、アメリカ空軍始め各国での採用実績を持つF-16はあまりに強敵でした。当初、F-16はF-20よりも約2倍程高価でしたが、これも採用国が増えるに連れて量産効果で価格が下がってきます。結局F-20は採用されることなく終わりました。
運用者 | - |
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主要なバリエーション | - |
生産数 | 3 |
スペック型式 | - |
全 幅 | 8.13m |
全 長 | 14.17m |
全 高 | 4.22m |
翼面積 | 18.6㎡ |
自 重 | 5,090kg |
総重量/最大離陸重量 | 6,830kg |
発動機 | F404-GE-100(4,990kg)×1 |
最大速度 | 2,450km/h+ |
実用上昇限度 | 16,800m |
戦闘行動半径 | 1,020km |
航続距離 | 2,759km |
乗 員 | 1名 |
初飛行 | 1982年8月30日 |
就 役 | - |
退 役 | - |
兵 装 | 20mm機関砲×2 AIM-7 Sparrow AIM-9 Sidewinder AGM-65 Maverick |