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マクドネルF-110スペクター

McDonnell F-110 Spector
マクドネルF-110スペクターMcDonnell F-110 Spector

F-4ファントムⅡの空軍型

アメリカ空・海軍双方に大量採用された初めての例

※文頭写真:アメリカ海軍のF-4ファントムⅡはその優秀さ故に、メンツを超えてアメリカ空軍にも採用され、F-110スペクターとなりました。PHOTO USAF

マクドネルF-110スペクターは、アメリカのマクドネル社が開発したアメリカ空軍の戦闘機です。
F-110はF-4ファントムⅡの別名。F-4ファントムⅡは船の上(航空母艦)という制約からジェット戦闘機開発に苦しんできたアメリカ海軍が、苦難の末に手にした傑作艦上戦闘機です。初飛行は1958年(昭和33年)5月27日、1960年(昭和35年)から就役し1996年(平成8年)まで活躍しています。

1960年代のF110スペクター。PHOTO USAF
1960年代のF110スペクター。PHOTO USAF

1960年代のF-110スペクター。PHOTO USAF
1960年代のF-110スペクター。PHOTO USAF

アメリカの空軍と海軍は、ご多分に漏れずメンツをかけて何かにつけて競い合ってきました。その空軍が、花形の戦闘機採用において海軍の開発した艦上戦闘機を大量に採用するなどということは、前代未聞でした。それほどにF-4ファントムⅡは高性能であったわけですが、理由はそれだけではありません。ロバート・マクナマラという国防長官の存在が大きな要因を占めています。

ロバート・マクナマラはハーバード出身でアメリカ陸軍航空軍の統計管理局で活躍し、戦後はフォード一族以外では初めてフォードの社長となり、1960年にジョン・F・ケネディが大統領選に勝利すると国防長官として白羽の矢が立ちます。

システム分析や統計学を駆使するマクナマラは、それまで空軍・海軍それぞれが独自に行っていた戦闘機開発を統合を企図し、その手始めとして開発中であったハイコストのF-106デルタダートの代わりに、海軍が開発していたF-4ファントムⅡを採用させようとします。

1961年(昭和36年)、空軍が開発していたF-106F-4の飛行試験が行われます。速度、上昇限度、航続距離、レーダー性能、爆撃能力、整備性など多くの面でF-4F-106を上回りますが、最新鋭のハイテク防空システム、半自動式防空管制組織(SAGE=Semi-Automatic Ground Environment)の装置が搭載できないということで、F-106の生産は続行されます。

1966年(昭和41年)5月のサイゴン、ベトナム戦争中のRF-4C(偵察機型)。PHOTO USAF
1966年(昭和41年)5月のサイゴン、ベトナム戦争中のRF-4C(偵察機型)。PHOTO USAF

SAGEはソ連の爆撃機(原爆搭載)を発見、迎撃するためのコンピュータシステムです。F-106はSAGEとデータリンクしており、SAGEからの命令や敵機の情報を直接、自動操縦装置が受け取ることができます。

しかし、アメリカ空軍がF-106に続く次期戦闘機として開発していたF-111アードバーグの開発が遅れており、その穴埋めとしてF-4が採用されることとなり、名称を空軍名F-110スペクターに変更しました。その後1962年(昭和37年)にアメリカ三軍の呼称統一が施行され、F-110スペクターから再びF-4CファントムⅡに変更されました。

空軍型F-4シリーズの決定版ともいえるF-4E型は1967年(昭和42年)6月30日に初飛行、各国へと供与され1,389機が生産されました。マクドネル社は、艦載機として開発したF-4ファントムⅡが空軍機として採用されたことで、より生産数を伸ばし西側戦闘機としては史上最多の5,000機以上が生産されました。

最新鋭ステルス戦闘機F-22(左)と飛ぶF-4ファントムⅡ。PHOTO USAF
最新鋭ステルス戦闘機F-22(左)と飛ぶF-4ファントムⅡ。PHOTO USAF

F-4Eは1966年(昭和41年)、日本の第2次F-X(主力戦闘機)選定によりF-86Fの後継として選ばれました。日本の航空自衛隊向けF-4EはF-4EJとして154機が調達され、そのうちのほとんどがライセンス生産されました。そして1980年(昭和55年)にF-15Jが採用されるまで日本防空の主軸を担いました。F-15Jに主役の座を譲ってからも現役にとどまり、平成28年(2016年)のいまも活躍し続けています。

航空自衛隊のF-4EJ改。写真:航空自衛隊
航空自衛隊のF-4EJ改。写真:航空自衛隊

運用者アメリカ空軍
McDonnell F-4 PhantomⅡの項参照
主要なバリエーションF-4C 海軍のF-4Bを空軍用に改修。空軍F-4最初の量産機
EF-4C 敵防空網制圧機(ワイルド・ヴィーゼル機)
RF-4C 写真偵察機
F-4D C型の改良型
EF-4D D型を改装した敵防空網制圧機(ワイルド・ヴィーゼル機)
F-4E 空軍型F-4の決定版。1,389機製造
RF-4E 偵察機
F-4G 敵防空網制圧機(ワイルド・ヴィーゼル機)
生産数5,195
スペック型式F-4E
全 幅11.71m
全 長19.20m
全 高5.02m
翼面積49.2㎡
自 重13,757kg
総重量/最大離陸重量27,970kg
発動機J79-GE-17A(5,356kg/AB 8,119kg)×2
最大速度2,370km/h
実用上昇限度18,975m
戦闘行動半径1,200km
航続距離2,600km
乗 員2名
初飛行1958年5月27日/1963年5月(F-110)
就 役1963年11月
退 役1996年4月
兵 装

ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(C)

Lockheed Martin F-35 Lightning Ⅱ(C)
ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(C)Lockheed Martin F-35 Lightning Ⅱ(C)

最新鋭ステルス戦闘機(艦上戦闘機型)

初の艦上ステルス機

※文頭写真:Lockeed Martin
※F-35の基本性能等については、ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(A)記事をご覧ください。

ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡはアメリカが開発した最新の戦闘機です。一つの基本設計でアメリカ空・海・海兵隊の戦闘機を開発しようという、統合打撃戦闘機(JSF=Joint Strike fighter)計画からうまれました。

基本設計から生み出される形は3種類あり、通常の飛行場において運用するA型、垂直に離着陸できるB型(短距離離陸垂直離着陸)、航空母艦において運用するC型(艦上戦闘機)の3種類があります。

C型は航空母艦において運用する艦載機型です。F-35は英国や日本、イタリア、オランダなどアメリカと同盟関係にある国々が導入しますが、艦載機型のC型は米海軍と海兵隊のみが導入します。

アメリカ海軍の主力戦闘機としては久しぶりの単発機。エンジンの信頼性が向上してきたのでしょう。PHOTO Lockeed Martin
アメリカ海軍の主力戦闘機としては久しぶりの単発機。エンジンの信頼性が向上してきたのでしょう。PHOTO Lockeed Martin

陸上の飛行場から離発着するA型と違い、C型は狭い空母の甲板に離発着するため低速時の安定性が求められることから、主翼、垂直・水平尾翼がそれぞれ大型化しています。また、離着陸時の衝撃に耐えるため、機体構造や降着装置の強化が行われ、主翼も折りたためるようになっています。戦闘機は主翼に燃料を搭載しているため、主翼を大型化したC型は、燃料搭載量が増え航続距離が延びています。

F-35Cの試験機。離着艦時の揚力を得るため主翼が大きくなっているのが最も特徴的です。PHOTO Lockeed Martin
F-35Cの試験機。離着艦時の揚力を得るため主翼が大きくなっているのが最も特徴的です。PHOTO Lockeed Martin

空母を中心とし他の追随を許さない断トツの洋上戦力を持つアメリカ海軍にまたひとつ、ステルス戦闘機という武器が加わります。PHOTO Lockeed Martin
空母を中心とし他の追随を許さない断トツの洋上戦力を持つアメリカ海軍にまたひとつ、ステルス戦闘機という武器が加わります。PHOTO Lockeed Martin

ステルス性維持のため兵装は胴体内に格納します。そのためすっきりとした胴体下面。ただ、主翼下にハードポイントをつけるテストも行われています。それほどステルス性が問われない任務に対するものでしょう。PHOTO Lockeed Martin
ステルス性維持のため兵装は胴体内に格納します。そのためすっきりとした胴体下面。ただ、主翼下にハードポイントをつけるテストも行われています。それほどステルス性が問われない任務に対するものでしょう。PHOTO Lockeed Martin

F-35は昔のように脚の間に太い操縦桿があり、加える力によって運動が加減されるのではなく、電気信号を伝達するステッィクにより操縦します。大雑把にいえばゲームのジョイスティックと同じ様なものです。さらに、戦闘機乗りにとっても難しい空母への着艦を、ある程度自動で行われるオートスラスト機能(自動推力制御装置)が装備されています。

試験中のF-35C(艦載機型)。PHOTO Lockeed Martin
試験中のF-35C(艦載機型)。PHOTO Lockeed Martin

多用途性と信頼性の高さから現在、アメリカ海軍空母の艦上を占拠することとなったF/A-18(前)とF-35(後)。PHOTO Lockeed Martin
多用途性と信頼性の高さから現在、アメリカ海軍空母の艦上を占拠することとなったF/A-18(前)とF-35(後)。PHOTO Lockeed Martin

米海軍としては、初めてのステルス艦上戦闘機となります。米海軍のニミッツ級原子力空母に最新鋭のステルス戦闘機が配備される、ということは日本にとっても大変良い抑止力となるでしょう。

F-35には最新のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が採用されています。バイザーには飛行情報や戦術データなどの情報が表示され、前を向いたまま全周囲をカバーできます。
F-35には最新のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が採用されています。バイザーには飛行情報や戦術データなどの情報が表示され、前を向いたまま全周囲をカバーできます。

運用者-
主要なバリエーションX-35A 試作機。通常離着陸型(CTOL)
X-35C 試作機。艦上離着陸型
X35B X35Aを改造した試作機。短距離離陸・垂直着陸型(STOVL)
生産数-
スペック型式-
全 幅13.11m
全 長15.70m
全 高4.6m
翼面積62.1㎡
自 重13,924kg
総重量/最大離陸重量31,800kg
発動機F135-400(C/12,746kg/AB 19,505kg)×1
最大速度2,220km/h(C)
実用上昇限度15,240m
戦闘行動半径1,111km
航続距離2,520km
乗 員
初飛行2010年6月8日(C)
就 役-
退 役-
兵 装

ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(B)

Lockheed Martin F-35 Lightning Ⅱ(B)
ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(B)Lockheed Martin F-35 Lightning Ⅱ(B)

最新鋭ステルス戦闘機(短距離離陸垂直離着陸型)

短距離離陸・垂直着陸型

※文頭写真:F-35 Lightning II program F-35 Lightning II program
※F-35の基本的な性能等についてはロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(A)の記事をご覧ください。

ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡはアメリカが開発した最新の戦闘機です。一つの基本設計でアメリカ空・海・海兵隊の戦闘機を開発しようという、統合打撃戦闘機(JSF=Joint Strike fighter)計画からうまれました。

基本設計から生み出される形は3種類あり、通常の飛行場において運用するA型、垂直に離着陸できるB型(短距離離陸垂直離着陸)、航空母艦において運用するC型(艦上戦闘機)の3種類があります。

アメリカ海兵隊に引き渡されてテスト中のF-35B。2014年3月。PHOTO Lockeed Martin
アメリカ海兵隊に引き渡されてテスト中のF-35B。2014年3月。PHOTO Lockeed Martin

STOVL(短距離離陸垂直離着陸)のB型は、垂直に離着陸することができます。これまで米海兵隊で運用されていたSTOVL戦闘機は米国マクドネル・ダグラス社(現 ボーイング社)が開発したAV-8BハリアーⅡ(1978年初飛行)でした。もともとは、英国ホーカー・シドレー社が開発したハリアーGR.1(1960年初飛行)であり、これを米国のマクドネル・ダグラス社が改良したのがAV-8BハリアーⅡです。

米海兵隊の強襲揚陸艦USSパターンにおいて垂直着陸を行う、AV-8ハリアー。PHOTO USNAVY
米海兵隊の強襲揚陸艦USSパターンにおいて垂直着陸を行う、AV-8ハリアー。PHOTO USNAVY

垂直離着陸機は必然、構造が複雑となり陸上戦闘機や艦上戦闘機に比べ戦闘能力にも劣っており、米軍としては、ハリアーの後継としてすでに海兵隊で使用されている艦載機のF/A-18ホーネットなどの戦闘攻撃機を考えていましたが、世界中に部隊を展開する米海兵隊は、必ずしも設備の整った飛行場ばかりを使うわけではありませんから、米海兵隊としては垂直離着陸機にこだわりがありハリアーⅡが開発されることになりました。そして、そのハリアーⅡの後継がF-35Bということになります。ちなみに、ハリアーⅡは日本も導入計画がありました。

F-35Bの試作機BF-02とBF-03。PHOTO Lockeed Martin
F-35Bの試作機BF-02とBF-03。PHOTO Lockeed Martin

アメリカ海軍の強襲揚陸艦USSワスプにおいて着艦テスト中のF-35B。空母だけでなくF-35BはSTOVL能力を活かし、空母でなくても運用できます。PHOTO Lockeed Martin
アメリカ海軍の強襲揚陸艦USSワスプにおいて着艦テスト中のF-35B。空母だけでなくF-35BはSTOVL能力を活かし、空母でなくても運用できます。PHOTO Lockeed Martin

垂直離着陸の際には、ジェットエンジンの排気をノズルを折り曲げることにより下方に向け、同時にクラッチを介して前方のリフトファンを動かします。これら垂直離着陸用の構造が他の性能を低下させることはハリアーⅡと変りなく、航続距離はA型(通常離着陸型)、C型(艦載機型)と比べ約70%となり、兵装搭載量も20%程少なくなっています。

2013年(平成25年)8月13日、アメリカ海軍の強襲揚陸艦USSワスプ艦上において短距離離陸のテストを行うイギリス軍のF-35B。PHOTO Lockeed Martin
2013年(平成25年)8月13日、アメリカ海軍の強襲揚陸艦USSワスプ艦上において短距離離陸のテストを行うイギリス軍のF-35B。PHOTO Lockeed Martin

ユーロファイター・タイフーン(手前2機)と飛ぶF-35B。PHOTO Lockeed Martin
ユーロファイター・タイフーン(手前2機)と飛ぶF-35B。PHOTO Lockeed Martin
F-35に搭載されている最新のAN/APG-81火器管制レーダー。レーダー反射断面積(RCS)が1平米程のステルス性に優れたラファールなどでも150km先から探知できます。同時に23個もの標的を探知できる能動型電子走査配列のレーダーです。
F-35に搭載されている最新のAN/APG-81火器管制レーダー。レーダー反射断面積(RCS)が1平米程のステルス性に優れたラファールなどでも150km先から探知できます。同時に23個もの標的を探知できる能動型電子走査配列のレーダーです。

米海兵隊、英国空海軍、イタリア海軍などがB型の導入を予定しており、平成25年(2013年)には米国において垂直離陸に成功し、平成27年(2015年)から運用が始まっています。

運用者-
主要なバリエーションX-35A 試作機。通常離着陸型(CTOL)
X-35C 試作機。艦上離着陸型
X35B X35Aを改造した試作機。短距離離陸・垂直着陸型(STOVL)
生産数-
スペック型式-
全 幅10.67m
全 長15.60m
全 高4.6m
翼面積42.73㎡
自 重13,888kg
総重量/最大離陸重量27,300kg
発動機F135-600(B/12,746kg/AB 19,505kg)×1
最大速度1,960km/h(B)
実用上昇限度15,240m
戦闘行動半径833km
航続距離1,670km
乗 員
初飛行2008年7月11日(B)
就 役-
退 役-
兵 装

ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(A)

Lockheed Martin F-35 Lightning Ⅱ(A)
ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(A)Lockheed Martin F-35 Lightning Ⅱ(A)

最新鋭ステルス戦闘機(通常離着陸型)

いよいよ運用迫る

※文頭写真:USAF

ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡはアメリカが開発した最新の戦闘機です。一つの基本設計でアメリカ空・海・海兵隊の戦闘機を開発しようという、統合打撃戦闘機(JSF=Joint Strike fighter)計画からうまれました。

基本設計から生み出される形は3種類あり、通常の飛行場において運用するA型、垂直に離着陸できるB型(短距離離陸垂直離着陸)、航空母艦において運用するC型(艦上戦闘機)の3種類があります。

アメリカ空軍に引き渡され、カリフォルニア上空でテスト中のF-35A。PHOTO Lockeed Martin
アメリカ空軍に引き渡され、カリフォルニア上空でテスト中のF-35A。PHOTO Lockeed Martin

試作機AA-1(A型)のテスト飛行。PHOTO Lockeed Martin
試作機AA-1(A型)のテスト飛行。PHOTO Lockeed Martin

アメリカは1960年代にF-111という戦闘機で同じように基本設計を空・海軍で共用するという構想を進めましたが、艦上戦闘機の制約から海軍が不採用を決め、失敗に終わっています。

実に優秀な爆撃性能を有する戦闘攻撃機となったF-111。PHOTO USAF
実に優秀な爆撃性能を有する戦闘攻撃機となったF-111。PHOTO USAF

約30年を経て進化して復活した統合打撃戦闘機(JSF=Joint Strike fighter)計画は、どうやら成功しつつあります。電子機器の複雑化などにより戦闘機の開発は年々高度化、高額化しており、このJSF計画もアメリカを主とし、イギリス、イタリア、オランダ、ノルウェー、デンマーク、オーストリアなどが開発に参加する国際共同の形をとり、巨額の費用を賄っています。

1980年代に冷戦構造は弱まり始め、1991年には東の領主ソ連が崩壊します。最大にして唯一といってもいいライバルがいなくなったアメリカは、当然の如く軍事費削減が急ピッチで進みます。

いつ最新鋭機が出現するかもわからないソ連を凌駕する高性能な戦闘機を常に配備する必要がなくなり、高性能&高コストの兵器開発は次々に中止となっていきます。それでも戦闘機の老朽化は進み、1990年代には空軍、海軍ともに次期戦闘機の計画を立てる必要に迫られていました。

とはいえ高度な電子機器、ステルス技術、複雑化するソフト開発など現代の戦闘機開発は膨大な開発費が必要です。そこで1995年、空軍・海軍・海兵隊の戦闘機を共通の基本設計から造るという統合打撃戦闘機(JSF=Joint Strike fighter)計画が考えられました。

これには、ボーイング、ロッキード・マーチン、マクドネル・ダグラスの3社が設計案を提出し、ボーイングとロッキード・マーチンの案が選ばれ試作機が発注されました。とはいえマクドネル・ダグラスはこの後ボーイングに吸収されましたから、結果的に3社とも関わっていくことになります。

2000年にはボーイングのX-32、ロッキード・マーチンのX-35共に初飛行に成功し各種のテストが繰り返されていきます。2006年には1号機が完成し2010年頃から各軍に引き渡されテストフライトが行われており、A型は2016年、B型は2015年、C型は2018年の運用開始を目指しています。

通常離着陸型のX-32A。PHOTO Boeing
通常離着陸型のX-32A。PHOTO Boeing

F-35は空対空、空対地などの様々な任務をこなす多目的戦闘機(マルチロール)です。レーダーにほぼ映らないステルス機であり、アフターバーナーを使用せずに音速を超える超音速巡航(スーパークルーズ)能力を持ち、高度な電子機器を搭載、ディスプレイをみながら背後の敵を攻撃するなどということも容易にこなします。

F-35のコクピットは一般的に想像する計器だらけのコクピットとは全く違っています。ヘルメットにはターミネーターのように情報が表示され、正面にはipadのようなディスプレイが並び、操縦桿は電子式となっています。

中央に大きなパネル、左右にスティックが配されたF-35のコクピット。
中央に大きなパネル、左右にスティックが配されたF-35のコクピット。

アメリカが統合運用するリンク21という情報ネットワークに繋がり、情報はリアルタイムに共有されます。高度な電子機器と情報ネットワークを駆使し、一方的に敵を葬り去る能力は未来の戦闘機とも、空の忍者ともいいたい存在です。

F-35は空対空、空対地、双方をこれまでにない能力をもって遂行します。レシプロ戦闘機の時代から、戦闘機同士の戦いを制する鉄則は「先制発見、先制攻撃、即時逃走」であり、正々堂々と勝負などしてはいけないのです。肉眼で敵をみつけていた時代、エースパイロットといわれた人々は例外なく、良い目と優れた注意力を持っていました。

戦闘機が楽々と超音速で飛行する現在、敵を肉眼で捉えるということはありません。かわりに目となるのはレーダーとネットワークです。F-35を筆頭にアメリカ(及び西側)の戦闘機はネットワーク力に優れており、たとえ飛行性能が劣っていようともネットワークを駆使して先に敵の位置を掴めれば圧倒的優位に立つことができます。

F-35の敵戦闘機との戦いを想定してみます。
あるF-35が敵機を捉えたとします。敵機を捉えたF-35はネットワークに情報を送信したら即座に退避します。その情報はリンク21ネットワークに接続するすべての味方戦闘機が共有します。敵機を発見したF-35は敵機のレーダーに感知された可能性がごくわずかでもありますから、すぐに退避するわけです。

その中から最もリスクの少ない戦闘機がミサイルの射程圏内まで接近。最新のAIM-120アムラーム空対空ミサイルであれば、一昔前のように母機である戦闘機が途中まで敵機を補足してあげる必要はなく、自立誘導ですから射程距離である70km〜100kmに入ったところでミサイルを発射し、即座に退避します。

恐らく敵機はF-35の存在に気がついていないでしょうから、いきなり撃墜されて終わりということになります。

対地攻撃においては、信じられないように精密なピンポイント空爆が可能です。太平洋戦争末期にアメリカが日本にしたような、民間人でもおかまいなしにすべてを焦土と化すような絨毯爆撃は、現在では起こる可能性は少なく、一人もしくは一つの建物を狙い打つような暗殺空爆が起こりやすいシチュエーションです。

グリーンベレーやネイビーシールズ、特殊作戦群(USSOCOM)といったアメリカ軍の特殊部隊や、アメリカ中央情報局(CIA)などの情報機関が「この建物に標的がいる」と確定すれば、F-35は敵レーダーをかいくぐって「どの窓」という精度で爆撃が可能です。これだけの正確性がありますから、あえて火薬を積まずに狙うこともあります。

また、ステルス性と精密な爆撃精度、そして空中戦にも強いというF-35は、敵防空網が充分に機能している戦争初期段階での攻撃にはうってつけであり、ステルス戦闘機を持たないアメリカ海軍にとっては特に大変重要な役割を担うことになりそうです。

2013年(平成25年)5月14日、空中給油ミッション中のF-35。PHOTO USAF
2013年(平成25年)5月14日、空中給油ミッション中のF-35。PHOTO USAF

ステルス能力獲得のために形状制御されたフォルムは独特の美しさを感じさせます。PHOTO USAF
ステルス能力獲得のために形状制御されたフォルムは独特の美しさを感じさせます。PHOTO USAF

航空自衛隊 F-35A

◎F-35空自初号機、平成28年10月に納入と発表
航空自衛隊はF-35Aを航空自衛隊の次期主力戦闘機として採用しています。平成28年(2016年)7月22日、航空自衛隊の杉山良行 航空幕僚長は記者会見を行ない、10月に初号機が米国ロッキード・マーチン社より納入されると発表しました。
これにあわせ、11月から米国アリゾナ州にある米空軍基地において操縦訓練が実施され、平成29年度(2017年度)には青森県の空自三沢基地に配備される予定です。平成28年度(2016年度)は4機が納入され、その後、38機は国内組立により随時納入されることになっています。購入価格は1機約180億円です。

◎F-35配備可能となる。空自への納入も間近
米空軍は8月2日、F-35A(通常離着陸型)が初期運用能力を獲得し、配備可能になったと発表しました。これに伴い、自衛隊にも平成29年(2017年)3月末までに4機が引き渡される予定となっていて、最初の機体は平成28年9月にも引き渡される可能性があります。米海兵隊仕様のF-35Bは既に初期作戦能力を獲得しており、平成29年(2017年)に山口県の岩国基地に配備されることとなっています。(平成28年8月2日、時事通信他)

◎航空自衛隊F-35A、初号機の写真が公開される
平成28年(2016年)8月15日、航空自衛隊に全42機が納入されるF-35Aの写真が公開されました。公開されたのは平成24年度契約分4機のうちの初号機であり、米国ロッキード・マーティン社フォートワース工場において製造中のものです。初号機は、組み立て作業と塗装が完了し、地上試験等を実施中。機体側面にグレーの日の丸が描かれています。同年8月中にはさらに試験飛行が行われます。

平成28年(2016年)8月15日、初公開された航空自衛隊に納入予定のF-35A初号機。写真:航空自衛隊
平成28年(2016年)8月15日、初公開された航空自衛隊に納入予定のF-35A初号機。写真:航空自衛隊

平成28年(2016年)8月15日、初公開された航空自衛隊に納入予定のF-35A初号機。写真:航空自衛隊
平成28年(2016年)8月15日、初公開された航空自衛隊に納入予定のF-35A初号機。写真:航空自衛隊

◎航空自衛隊F-35A、初号機ロールアウト
航空自衛隊F-4EJ改の後継として平成23年(2011年)12月19日に採用が決定したF-35Aの初号機が完成し、平成28年(2016年)9月23日、製造元の米ロッキード・マーチン社フォートワース工場(テキサス州)において、日本の政府関係者を招いてロールアウト式典が行われました。ロールアウトとは、完成後に工場から出て公表されることです。航空自衛隊は平成28年(2016年)〜平成36年(2024年)にかけて42機を導入する計画となっています。うち4機は米国にて製造され、残りの38機は国内の三菱重工において組み立てが行われます。
米国にて4機が製造され、その機体を使って航空自衛隊のパイロットが米軍パイロットとともに訓練を行い、早ければ来年度にも三沢基地(青森県)に配備される予定となっています。

運用者-
主要なバリエーションX-35A 試作機。通常離着陸型(CTOL)
X-35C 試作機。艦上離着陸型
X35B X35Aを改造した試作機。短距離離陸・垂直着陸型(STOVL)
生産数-
スペック型式-
全 幅10.67m
全 長15.70m
全 高4.6m
翼面積42.73㎡
自 重12,426kg
総重量/最大離陸重量31,800kg
発動機F135-100(A/12,746kg/AB 19,505kg)×1
最大速度2,220km/h(A)
実用上昇限度15,240m
戦闘行動半径1,092km
航続距離2,220km
乗 員1名
初飛行2000年10月24日(検証機) 2006年12月15日(A)
就 役-
退 役-
兵 装

マクドネルF-4ファントムⅡ

McDonnell F-4 PhantomⅡ
マクドネルF-4ファントムⅡMcDonnell F-4 PhantomⅡ

真打、登場

艦上機にして最強の多用途戦闘機

※文頭写真:USNAVY

米海軍のマクドネルF-4ファントムⅡ(1958-)は、約5,200機が生産された最強の多用途戦闘機です。大きな機体に強力なエンジンを2発載せ、艦上戦闘機でありながら当時米空軍が保有していた高性能戦闘機群(センチュリーシリーズ)各機体の得意分野を、F-4一機で上回ってしまう程に優秀な戦闘機でした。

艦上戦闘機というのは航空母艦において運用されますから、広い飛行場・基地で運用される空軍の陸上戦闘機に比べて数多くの制約を課せられます。このことから、第2次世界大戦末期から始まったジェット戦闘機の開発において米海軍は後塵を拝していました。

米海軍は、1955年に初飛行した傑作機、チャンス・ボートF-8クルーセイダーにおいてようやく空軍機に劣らない戦闘機を艦上に配備することができました。その3年後1958年に本機F-4ファントムⅡが初飛行し、その高性能ぶりから今度は逆に米空軍が米海軍の開発したF-4を採用します。米海軍はさぞ晴れやかな気分だったことでしょう。

1952年(昭和27年)に創設されたアメリカ海軍、訓練飛行隊VF-101所属のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY
1952年(昭和27年)に創設されたアメリカ海軍、訓練飛行隊VF-101所属のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY

米海軍がF-8、F-4と立て続けに傑作艦上戦闘機をうみだしていたこの時期、米海軍の航空母艦が大きな進歩を遂げていました。1955年、第2次世界大戦中に建造された排水量約30,000トンのエセックス級航空母艦にかわり、米海軍待望の超大型航空母艦、フォレスタル級が就役します。F-8はエセックス級でも運用可能でしたが、F-4はエセックス級では運用できませんでした。

この角度もファントムⅡはいい。名前といい形といいたまらない人にはたまらない、F-4ファントムⅡです。PHOTO USNAVY
この角度もファントムⅡはいい。名前といい形といいたまらない人にはたまらない、F-4ファントムⅡです。PHOTO USNAVY

フォレスタル級は、乗員約4,300名、60,000トンもの基準排水量を持ち、斜め着艦用飛行甲板(アングルド・デッキ)を採用、72機の艦上戦闘機を収容することができました。さらに、1954年以降は戦後就役したミッドウェイ級もアングルド・デッキ化されます。

アメリカの旗艦とも呼ばれたアメリカ海軍空母、USSコンステレーション艦上のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY
アメリカの旗艦とも呼ばれたアメリカ海軍空母、USSコンステレーション艦上のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY

航空母艦と艦上戦闘機は共に進化するものです。登場した当時、見る者を驚かせたという大型艦上戦闘機F-4はこれら航空母艦の進化に歩を合わせるように誕生した傑作艦上戦闘機でした。

アメリカ海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルスのF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルスのF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY

防空能力においてはすでに運用されていた高性能機F-8クルーセイダーとF-4は同等でしたが、F-4は加えて対地攻撃にも秀でていました。F-8の離陸最大重量は13,000kgですが、F-4のそれは26,760kgもあります。それだけ多くの兵装を搭載することができるわけですから、艦上戦闘機において特に要求される多用途性が高まります。

アメリカのスミソニアン博物館に展示されるアメリカ海兵隊のF-PHOTO SMITHSONIAN NATIONAL AIR AND SPACE MUSEUM
アメリカのスミソニアン博物館に展示されるアメリカ海兵隊のF-PHOTO SMITHSONIAN NATIONAL AIR AND SPACE MUSEUM

速度記録、上昇記録など各種の世界記録を次々に更新したF-4の飛行性能は文句なく世界一であり、イギリス空軍が1964年に採用したのを始め、日本、スペイン、トルコ、エジプト、ギリシャなど各国に採用され、5,000機を超えるベストセラーとなりました。

アメリカ空軍のF-15と飛ぶ航空自衛隊のF-4EJ。1983年(昭和58年)夏の日米合同演習コープノース中の写真。PHOTO DoD
アメリカ空軍のF-15と飛ぶ航空自衛隊のF-4EJ。1983年(昭和58年)夏の日米合同演習コープノース中の写真。PHOTO DoD

世界を驚かせた高性能多用途艦上戦闘機、マクドネルF-4ファントムⅡは初飛行から半世紀以上を経たいまでも、数々の改修を受け世界の空を飛び回っています。

運用者アメリカ海軍
アメリカ空軍
アメリカ海兵隊
航空自衛隊
オーストラリア空軍
エジプト空軍
ドイツ空軍
イラン空軍
イスラエル空軍
スペイン空軍
トルコ空軍
イギリス空軍
韓国空軍
主要なバリエーションXF4H-1 試作機。2機製造
F4H-1F 追加の試作機。45機製造。後にF-4B
F4H-1 最初の量産型
F-4G アメリカ空軍の要求による敵防空網制圧機(SEAD/ワイルド・ヴィーゼル)。12機製造
YF-4G F-4Jの試作機
F-4J 海軍2次量産型。512機製造。ルックダウン能力などを加えた
F-4N F-4Bの改修機。227機改修
F-4S F-4Jの近代化改修型。構造強化
F-100A F-4Cの当初名
F-4C 空軍向け改修型。複操縦装置追加など
F-4D 空軍向けF-4Cの改修型。レーダー関連の性能向上など
EF-4D F-4Dを改修した防空網制圧機の試作型
F-4E F-4D改修型。エンジン換装、バルカン砲装備など
F-4G 空軍の敵防空網制圧機(SEAD)。F-4Eを改修
RF-4B 偵察機型。米海兵隊向けに46機が製造
RF-4C 偵察機型
RF-4E 偵察機型
F-4VG 可変翼改修型。計画のみ
生産数5,195
スペック型式-
全 幅11.7m
全 長17.78m
全 高4.95m
翼面積49.23㎡
自 重13,960kg
総重量/最大離陸重量26,760kg
発動機GE J79-GE-8B/8C/10×2(5,380kg/AB 8,120kg)
最大速度2,550km/h
実用上昇限度21,340m
戦闘行動半径960km
航続距離2,600km
乗 員2名
初飛行1958年5月27日
就 役1960年12月
退 役1992年1月
兵 装