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ロッキード・マーチンF-22ラプター

Lockheed Martin F-22 Raptor
ロッキード・マーチンF-22ラプターLockheed Martin F-22 Raptor

世界最強のステルス戦闘機

圧倒的な戦闘力から抑止力をも発揮

ロッキード・マーチンF-22ラプター(1990-)はアメリカのロッキード・マーチン社が開発したアメリカ空軍のステルス戦闘機です。2005年(平成17年)から運用が開始され、現代最強の戦闘機として突出した能力を有しています。

北朝鮮のきな臭さが危険な域に達した時、アメリカは原子力空母を派遣しました。洋上を移動する巨大な軍事力であるアメリカ海軍原子力空母は、そこにいるというだけで強烈な抑止力を発揮します。

F-22は戦闘機でありながら、規模は違えど空母と同じ種類の抑止力を発揮します。このような抑止力を持つ戦闘機はこれまで存在したことがありません。

F-22については2つのキャッチフレーズが与えられています。一つは「Air Dominance Fighter」(航空支配戦闘機)、もう一つは「First look,First shoot,First kill」(先に発見、先制攻撃、先に撃墜)です。

1970年代に登場し、現在まで一度も撃墜されたことのないアメリカのF-15には「Air Superiority Fihter」(航空優勢戦闘機)というキャッチフレーズが与えられていました。F-22ではさらに進化し、航空支配という言葉が使われています。

F-22ラプター。PHOTO Lockeed Martin
F-22ラプター。PHOTO Lockeed Martin

「First look,First shoot,First kill」(先に発見、先制攻撃、先に撃墜)はF-22の性能を端的に表わしています。

これは、戦闘機は誕生した時(1915年頃)から変わらない鉄則です。第1次世界大戦や第2次世界大戦など有視界で空中戦を行っていた時代でも、レーダーやネットワークを駆使した現代のハイテク戦闘でも基本は同じです。

敵より先に発見し、先に攻撃し、速やかにその場を立ち去る。要するに、不意打ちして即離脱するというのが空中戦の勝者となる道であり、正面から正々堂々と戦うなどというのは最後の手段です。

F-22の戦い方はこうです。

ステルスにより敵に発見されることなく、優れた自身のレーダーと僚機やイージス艦など味方勢力の情報が収集されたリンク21と呼ばれるネットワークの情報を駆使して、先に敵機を発見し、ミサイルの射程圏内まで接近します。

敵機のデータを入力し、70km以上の長射程を持ち、撃ちっぱなし(fire and forget)可能な空対空ミサイル(AIM-120 AMRAAM)を発射し、即座に離脱します。超音速巡航(スーパークルーズ)能力を持つF-22に追いつくことは困難です。というよりも、敵機は何もわからずいきなり撃墜されることになるでしょう。

もし、自分より敵機に近いところに僚機がいれば、目標のデータを送信してミサイルを発射してもらう、ということも可能です。

F-22ラプター。PHOTO Lockeed Martin
F-22ラプター。PHOTO Lockeed Martin

F-22の特長

① ステルス
② スーパークルーズ
③ アビオニクス(電子機器)とネットワーク
④ 高機動性/推力偏向装置

① ステルス

ステルスというのは、隠れるということです。超音速という高速で移動し、肉眼でみえる距離(有視界)よりもはるか遠くからミサイルを発射しあう現代の戦闘においては、レーダーなどのセンサ類に感知されにくくするということは、とてつもなく重要な技術です。F-22はほとんど映らないといわれます。

F-22ラプター三面図。PHOTO:USAF
F-22ラプター三面図。PHOTO:USAF

ステルス性を高めるには概ね以下のような項目に注意が必要です。「目視発見の回避」、「レーダー反射断面積(RCS=Radar Cross Section)の低減」、「飛行音の低減」、「自身が発する電波を探知されない」、「赤外線探知の回避」、F-22は、これらすべてにおいて世界最高の技術が投入されており、レーダー反射断面積(RCS)値に関しては0.001〜0.01平米といわれています。RCS値は通常の平米表記とは違うため一概に表現できませんが、ほとんど映らないと考えてよいでしょう。

F-22ラプターの後部。全周囲ステルスのF-22は後ろから見ても角度が揃えられています。PHOTO USAF
F-22ラプターの後部。全周囲ステルスのF-22は後ろから見ても角度が揃えられています。PHOTO USAF

ステルス性維持のため兵装は胴体に格納されます。PHOTO USAF
ステルス性維持のため兵装は胴体に格納されます。PHOTO USAF
胴体側面にも兵装を格納します。PHOTO USAF
胴体側面にも兵装を格納します。PHOTO USAF

② スーパークルーズ

戦闘機が誕生した時から、スピードは生命線です。迅速に目標に到達することができ、戦闘時もアドバンテージがあり、敵の大軍が接近していようと、スピードにおいて勝っていれば逃げられます。ミサイルを発射する時でも自らの速度をミサイルに与えることができます。

戦闘機の最高速度を表すとき、F-22以前のジェット戦闘機の多くはアフターバーナーという技術を使用しています。ジェットエンジンの排気に再度燃料を吹き付けて一時的に高出力を得るものです。

急加速を可能にするアフターバーナーですが、全開で使用すると15分程度で燃料を空にしてしまいますから、緊急措置でもあります。

スーパークルーズ(超音速巡航)というのは、このアフターバーナーを使わず、通常のエンジン使用のみで超音速を実現することです。F-22はプラット&ホイットニー社のF119-PW-100を2基搭載し、マッハ1.58という超音速巡航を可能にしています。

③ アビオニクス(電子機器)とネットワーク

F-22にはAN/APG-77レーダー、CNIシステム(データ・リンク)、電子戦システムなど多様なアビオニクス(電子機器)を搭載しています。プログラムも複雑化しており、F-15の20万行に比べてF-22は220万行にも及んでいるといわれます。最近の戦闘機開発はソフト面の比重が増加しており、プログラム開発の遅れによる開発計画の遅延がしばしば報告されます。

F-22ラプターのコクピット。PHOTO Lockeed Martin
F-22ラプターのコクピット。PHOTO Lockeed Martin

AN/APG-77レーダーはアメリカのノースロップ・グラマン社とレイセオン社が開発して高性能レーダーです。アンテナが可動することで探知範囲を飛躍的に向上させた、アクティブ電子走査アレイ(AESA=Active Electronically Scanned Array)方式のレーダーとなっており、走査角度は垂直・水平共に120度、走査距離は約250kmであり、後発のF-35に搭載されているAN/APG-81レーダーを除けば最高性能のレーダーです。

3重のデジタル飛行制御システム(フライ・バイ・ワイヤ)は、パイロットが無理な操作をしても自動的に体勢を維持し、パイロットの失神などの際には水平飛行を維持するといわれています。

BAEシステムズ社の電子戦システムAN/ALR-94は機体全体に30個以上のアンテナを持つ全周囲のミサイル探知能力、460km先からのレーダー電波を探知する能力をF-22に与えています。また、同社のフレア(赤外線誘導ミサイル用デコイ)AN/ALE-52を搭載しています。

F-22はアメリカ軍を中心にNATO諸国及び同盟国が統合運用するリンク16という統合戦術伝達システムから情報を受信することができます。味方の早期警戒管制機(AWACS)、イージス艦、地上のレーダー、地上小隊の端末、司令部などの情報が集約されています。

リンク16上に敵機の情報があれば、ステルス性を損失する自身のレーダー使用を行うことなく、目標に対してミサイル攻撃を行うことができます。

④ 高機動性/推力偏向装置

F-22のエンジンは高出力なだけでなく、推力偏向ノズルを備え、±20度の偏向能力を有しています。敵機がF-22に気がつく前に遠方から撃墜し、即座にスーパークルーズ能力を駆使してその場を離脱するという戦い方が得意なF-22ですが、従来のような遷音速(マッハ0.9〜1.1)における格闘戦でもF-15を上回る機動性を持っています。

平成19年(2007年)7月13日、初デモンストレーション。離陸直後、最大出力で急上昇するF-22ラプター。Photo:USAF
平成19年(2007年)7月13日、初デモンストレーション。離陸直後、最大出力で急上昇するF-22ラプター。Photo:USAF

推力偏向装置を備えた強力なエンジン。PHOTO USAF
推力偏向装置を備えた強力なエンジン。PHOTO USAF

高度や上昇力、速度、機動性、戦闘機の運動性能におけるあらゆる分野でF-22は現在最高の能力を有しているといえます。

運用者アメリカ空軍
主要なバリエーションYF-22 試作機。2機製造
F-22 量産型。187機製造
F-22B 訓練などに用いる複座型。開発中止
FB-22 戦闘爆撃機型。計画のみ
F-22N 米海軍向け艦載機。計画のみ
生産数195
スペック型式-
全 幅13.56m
全 長18.92m
全 高5.08m
翼面積78.04㎡
自 重19,700kg
総重量/最大離陸重量38,000kg
発動機F119-PW-100(AB 15,872kg)×2
最大速度2,575km(巡航速度1,825km)
実用上昇限度15,240m
戦闘行動半径1,300km
航続距離2,960km
乗 員1名
初飛行1990年9月29日(YF-22)
就 役2003年9月
退 役-
兵 装

ボーイングF/A-18スーパーホーネット

Boeing F/A-18 Super Hornet
ボーイングF/A-18スーパーホーネットBoeing F/A-18 Super Hornet

優れた多用途戦闘機

アメリカ海軍の艦上を占拠するスズメバチ

※文頭写真:アメリカ海軍空母カール・ビンソンから出撃するF/A-18スーパーホーネット。PHOTO USNAVY

ボーイング(マクドネル・ダグラス)F/A-18E/Fスーパーホーネットは、アメリカ海軍の艦上戦闘機です。1978年に初飛行し、1983年より部隊配備されたF/A-18A〜Dホーネットの発展型として1988年より開発されました。Eは単座型、Fは複座型です。

F/A-18Fスーパーホーネット。PHOTO Boeing
F/A-18Fスーパーホーネット。PHOTO Boeing

空対空、空対地、空中給油と多目的に活躍し、低い故障発生率、優れた整備の容易性をも兼ね備えた高性能機です。F-35配備前の現在、アメリカ海軍空母の艦上はF/A-18ホーネット/スーパーホーネットが占拠しているといった様相です。

F/A-18スパーホーネットの下面。高い多用途性を担保する優れた兵装搭載量を誇ります。PHOTO Boeing
F/A-18スパーホーネットの下面。高い多用途性を担保する優れた兵装搭載量を誇ります。PHOTO Boeing

開発の経緯などは「F/A-18A〜Dホーネットの項」をご覧ください。

1988年からマクドネル・ダグラス社はF/A-18ホーネットを大幅に改良したホーネット2000という機種を計画し営業活動を行います。

1992年、アメリカ海軍はホーネット2000をF/A-18E/Fスーパーホーネットとして採用、1995年には初飛行を行います。F/A-18ホーネットに比べて大きさ・重量・翼面積・燃料搭載量は25%〜30%増加し、エンジン推力は7,300kgから9,980kgに強化、飛行性能は向上し、より多くの兵装を搭載することが可能となりました。

F/A-18スーパーホーネットの電子戦機型、EA-18Gグロウラー。PHOTO Boeing
F/A-18スーパーホーネットの電子戦機型、EA-18Gグロウラー。PHOTO Boeing

F/A-18スーパーホーネットのコクピット。電子化が進んでいます。
F/A-18スーパーホーネットのコクピット。電子化が進んでいます。

F/A-18A〜DとE/Fを外見上すぐに判別できる点は、E/Fは機体が大きいこと、コクピット後部両側から張り出したエラのような部分が大きいこと、空気取入口(インテーク)が円形から角ばった形になっていることなどです。

アメリカ海軍空母エンターブライズの格納庫に収容されるホーネット。右がスーパーホーネット、左がホーネット。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母エンターブライズの格納庫に収容されるホーネット。右がスーパーホーネット、左がホーネット。PHOTO USNAVY

運用者アメリカ海軍
オーストラリア空軍
主要なバリエーションF/A-18E 単座量産型
F/A-18F 複座量産型
EA-18G 複座の電子戦機
生産数500
スペック型式-
全 幅13.68m
全 長18.5m
全 高4.87m
翼面積46.45㎡
自 重14,007kg
総重量/最大離陸重量29,932kg
発動機F414-GE-400(6,350kg/AB 10,000kg)×2
最大速度2,205km/h
実用上昇限度15,240m
戦闘行動半径910km
航続距離3,705km
乗 員1名
初飛行1995年11月29日
就 役1999年1月
退 役-
兵 装

ミツビシF-2

Mitsubishi F-2
ミツビシF-2Mitsubishi F-2

平成の零戦

突出した対艦攻撃能力と対空能力を併せ持つ

文頭写真:USAF

概要

三菱F-2(1995-)は国産戦闘機F-1の後継機として1982年(昭和57年)に開発が始まりました。ソ連健在の冷戦期に開発が始まったこともあり、押し寄せるソ連艦隊を撃破すべく高い対艦攻撃能力を有した戦闘機となっています。

アメリカ空軍の戦闘機として開発され、世界各国が使用するベストセラー機となったF-16ファイティング・ファルコンを母体として開発されました。素材から始まり全ての項目を再設計、飛行を制御するコンピュータプログラムは完全な日本オリジナルとなっています。

1995年(平成7年)に初飛行、2000年(平成12年)に配備開始、2011年(平成23年)に総数94機にて調達終了となっています。2017年(平成29年)より調達開始が予定されている次期主力戦闘機F-35は、F-4EJ改及び初期型のF-15Jと入れ替わる予定ですから、F-2は引き続き、続々と能力改修が施され、ますます多用途化されながら運用されることになります。

日米合同演習Cope Northに参加する築城(福岡)基地の第6飛行隊。PHOTO USAF
日米合同演習Cope Northに参加する築城(福岡)基地の第6飛行隊。PHOTO USAF

イラク上空を飛ぶF-16。PHOTO USAF
イラク上空を飛ぶF-16。PHOTO USAF

F-2の特徴は、世界最強といってもいい対艦攻撃能力と空対空戦闘能力を両立させていることです。この組み合わせは世界的に珍しく、海に囲まれた国土に由来する研究開発の成果を示しています。

F-2と同等の対艦攻撃能力を持つ戦闘機はいまのところロシアのSu-34しか見当たりません。中型の対艦ミサイルを4発搭載できるのはもはや戦闘機ではなく、もっと大型の哨戒機のレベルです。Su-34は対地・対艦攻撃に優れており、対空・対艦に優れたF-2とは全体の性格が異なっています。

空対艦能力

搭載される対艦ミサイルは、技術研究本部と三菱重工が開発した国産ミサイル、80式空対艦誘導弾(ASM-1)及び93式空対艦誘導弾(ASM-2)です。これらを最大4発、主翼下に搭載することができます。これらに加えて防衛技術開発本部が2016年度(平成28年度)に開発完了を目指す、新型空対艦誘導弾XASM-3の開発が進んでいます。

国産ASM-2空対艦ミサイルをより高性能に進化させたXASM-3(開発中)。写真:技術研究本部HPより
国産ASM-2空対艦ミサイルをより高性能に進化させたXASM-3(開発中)。写真:技術研究本部HPより

XASM-3は防空能力の向上が図られている敵艦船に対して、F-2の持つ驚異的な対艦攻撃能力を維持する目的で開発されました。マッハ3超の高速で飛行し、射程距離は150km以上という中型対艦ミサイルとしては最高の性能を持っています。

アクティブ/パッシブ両方式のレーダー・ホーミングを搭載した複合シーカー方式となっており、赤外線誘導方式のASM-2と併用される予定となっています。なお、対艦ミサイルを4発満載した状態でも空対空ミサイルを4発搭載することができます。

北海道に侵攻してくるソ連艦隊を洋上において撃破する目的で開発されたF-2の対艦攻撃能力はソ連の崩壊により行き場を失う形になったことは否めません。中国が洋上戦力の増強にひた走ってはいますが、4機編隊で最大16発もの最新鋭対艦ミサイルを発射できるF-2の出番はまだまだ先といったところでしょう。とはいえ、いずれくる中国の空母配備に備え、研究開発は継続しなくてはいけません。

日米合同演習Cope Northに参加する築城(福岡)基地の第6飛行隊。PHOTO USAF
日米合同演習Cope Northに参加する築城(福岡)基地の第6飛行隊。PHOTO USAF

空対空能力

F-2が裝備できる空対空ミサイルは、アメリカの短距離空対空ミサイル「AIM-9Lサイドワインダー」、国産の短距離空対空ミサイル「90式空対空誘導弾(AAM-3)」、アメリカの中距離空対空ミサイル「AIM-7スパロー」、そしてF-2の空対空戦闘能力を飛躍的に向上させた国産の中距離空対空ミサイル「99式空対空誘導弾B(AAM-4B)」の概ね4種類です。

特に2012年度より調達されている「99式空対空誘導弾B(AAM-4B)」は、射程100kmを有し、撃ちっぱなし(ファイヤアンドフォゲット)が可能なミサイルです。同種であるアメリカ製のAIM-120BやAIM-120Cと比べてもより高性能を誇っています。

さらには、量産機として世界で初めて戦闘機に搭載されたアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー、三菱電機製J/APG-1火器管制レーダーはさらに強化され、発展型のJ/APG-2へと換装されています。「99式空対空誘導弾B(AAM-4B)」とあわせて、母体となったF-16やロシアのSu-27SMに対して分が悪かったF-2の空対空戦闘能力をそれらと同等かそれ以上のレベルに押し上げています。

ネットワーク能力の付与も検討されており、自衛隊デジタル通信システム(JDCS(F))とのデーターリンク裝備が進められています。2015年度(平成27年度)予算において2機の改修が計上されており、随時残りの機体にも改修が施されると思われます。

近年の戦闘機はミサイルやデジタル能力の進化によって、空対空戦闘はほぼ視界外戦闘となっており、ネットワーク能力の重要性は増す一方ですから、改修が進めばF-2の戦闘能力は確実に強化されます。

空対地能力

多用途戦闘機(マルチロール)化を目指すF-2にとって最も弱いのが空対地攻撃能力です。これは、専守防衛というスローガンとも関わりのあることでしょう。現在は通常爆弾の他、JDAMという通常爆弾に取り付けるGPS誘導キットが主な兵装です。直系15m程度に自律誘導で着弾するため、母機F-2は投下後すぐに離脱できるため有利です。

しかし、対艦ミサイルを4発+対空ミサイルを4発を同時に搭載できるF-2の兵器投射能力を活かすためには、さらに高性能な空対地ミサイルの搭載が期待されます。

開発の経緯

航空自衛隊の新戦闘機開発に際しての要求は以下のようなものでした。
1 空対艦ミサイルを4発装備した状態で戦闘行動半径450海里(833km)。
2 短距離空対空ミサイルと中距離空対空ミサイルをそれぞれ2〜4発装備。
3 全天候運用能力。
4 高度な電子戦能力の搭載。

これを踏まえて、国産戦闘機F-1の耐用年数を迎える1997年(平成9年)までに、2代目の純国産戦闘機として開発される予定でしたが、アメリカの横槍が入りアメリカ製F-16を母体とした日米共同開発となりました。

アメリカは、F-16を母体として日米6:4の割合で開発することを了承させ、培われた飛行機を制御する運動能力向上機(CCV=Control Configured Vehicle)や火器管制のコンピュータ・システムを稼働させるソースコードは日本に一切開示せず、日本からは自分たちが欲しかった炭素繊維強化複合材一体成型技術やAESAレーダー技術などの日本の技術を無条件に得られるという条件を日本にのませました。この点はかなり嫌気がさします。アメリカらしいといえばらしい暴力的なやり方です。

共同開発においてアメリカがつきつけた条件は以下のようでした。
1 F-16のソース・コードの供与を制約する。
2 生産段階でのアメリカの仕事分担率は最大限に確保を目指す。
3 日本からの技術を必ず提供するとの保証を設ける。

時代錯誤の不平等条約などといわれましたが、当時は日米貿易摩擦が激化しており、交渉にあたった政治家や担当官僚、現場の技術者まで大いに苦労した結果、何とか得られた結論であろうことは想像に難くありません。

日米合同演習Cope Northに参加する築城(福岡)基地の第6飛行隊。PHOTO USAF
日米合同演習Cope Northに参加する築城(福岡)基地の第6飛行隊。PHOTO USAF

全て再設計した日本の意欲作

「ただのF-16改良型」、「欠陥機」などという批判が飛び交ったのは悲しいことです。T-2高等練習機、F-1と戦闘機開発技術を必死に守り育ててきた日本が、高度経済成長で培った各種技術力を結集して、細部に渡るまで再設計された機体であり、日米関係上仕方なく母体をF-16としただけです。形を残して話を進め、中身は全面的に技術を傾注したといってもいいでしょう。

「欠陥機」という批判は、試験機における主翼の亀裂と、レーダーの初期不調のために起こったようです。しかし、試験機で機体に亀裂が入る程度のことはよくあることです、特にF-2の主翼がアメリカが欲しがった炭素繊維強化複合材一体成型技術により製造されており、入念な試験が行われました。

試験というのは限界を知るために行うのであり、ある程度壊してみなければ限界はわかりません。亀裂程度で欠陥云々というのは意味不明です。戦闘機開発においては機体そのものが失われることが多いですが、F-2は機体そのものは失っていません。

レーダーの初期不良は確かにあったようです。しかしながら、戦闘機開発における最新式レーダーの初期不良はある程度問題ありません。結局配備から15年経った現在でも改善されないというのであれば欠陥ですが、不良は早期に改善され、現在ではさらに高性能なJ/APG-2レーダーへの換装が行われています。

現代の戦闘機というのはプログラムのアップデートや各種更新改修によって完成し、また進化していき、長期間運用されるものです。家電と同じように、買ったその日から完璧に動いて当たり前と考えるのは浅はかすぎます。

F-2は火器管制レーダーとして世界で初めてアクティブ式電子走査アレイレーダー(AESAレーダー)を搭載しています。F-22やF-35といったF-2より後に開発されたアメリカの戦闘機にはこのAESAレーダーが搭載されており、F-2の技術を少なからず活用したことが想像できます。

このレーダーは三菱電機が開発したJ/APG-1であり、首振りではなく、位相変換方式という原理によってレーダー面を動かさずに電波ビーム方向を制御するため、それまでのレーダーとは比べ物にならない程広範囲を一瞬にして索敵できます。また、地上、対空、対艦などいくつもの対象に対して同時に索敵し、かつ攻撃することができます。

F-2の最も特長的な部分は上記の2つ、炭素繊維強化複合材一体成型技術による主翼、AESAレーダーですが、F-16からの再設計箇所は全体に及んでいます。

炭素繊維強化複合材を多く使用し(18%)、強度アップと軽量化に苦心しています。主翼は新技術によって製造されるだけでなく面積も25%拡大し、対艦攻撃時に界面すれすれを飛行するシースキミング時などに重要な低速での安定性を向上させる他、全般的に機動性を高め、主翼下に裝備する兵装の搭載量を増やします。

各種電子機器などのスペースを確保するため胴体そのものも延長され、コクピットの下あたりにあるエアインテーク(空気取入口)は再設計によりF-16よりも効果的な空気流入が図られています。

エンジンはジェネラル・エレクトリック製F110-GE-129ターボファンエンジンが採用され、ライセンス生産によりIHI(旧社名 石川島播磨重工業株式会社)が製造しています。
エンジンは開発当初、国産開発が不可能とされライセンス生産が予定されていましたが、これに関してもアメリカ議会でライセンス提供拒否の議案が提出され、僅差でライセンス生産可能になったという経緯があります。

次期国産戦闘機i-3 fighterへの期待

日米関係に振り回されつつも、意地を見せたF-2。しかし、調達機数が94機にとどまり、ライセンス料の支払いも乗っかり、1機あたり約120億円という世界一高価な戦闘機となってしまいました。
世界第6位の海洋面積を持つ日本の命綱は、制空権と制海権です。制空権なくして制海権もないわけですから、空を守る戦闘機の開発技術は維持していきたいものです。戦闘機を造るための技術を維持するためには定期的に新型機を開発しなくてはいけません。これは式年遷宮と同じです。
次世代の国産戦闘機としては防衛省がステルス戦闘機i-3 Fighter構想を発表しています。世界情勢をみると、最新鋭機の開発はアメリカのF-35やヨーロッパのユーロファイターのように単一国家での開発ではなく、国際共同の形式が主流ですが、欧米がそうだからといって日本は日本です。

どのような開発形態となるかはわかりませんが、F-1、F-2とつないだ日の丸戦闘機の系譜はぜひ、なるべく純国産で引き継いで欲しいものです。

運用者航空自衛隊
主要なバリエーション
生産数94
スペック型式-
全 幅10.80m
全 長15.52m
全 高4.96m
翼面積34.82㎡
自 重9,527kg
総重量/最大離陸重量22,100kg
発動機F110-IHI-129×1(7,711kgf/AB 13,154kgf)
最大速度2,448km/h
実用上昇限度-
戦闘行動半径833km+
航続距離4,000km+
乗 員1名
初飛行1991年10月7日
就 役2000年
退 役-
兵 装

ノースロップYF-23

Northrop YF-23
ノースロップYF-23Northrop YF-23

F-22と採用を争ったステルス戦闘機

選には漏れたものの高性能を発揮

※文頭写真:USAF

ノースロップYF-23(1990)は、アメリカのノースロップ社が開発したアメリカ空軍のステルス戦闘機です。

一度も撃墜されたことのないF-15という無敵の制空戦闘機を持つアメリカでしたが、1977年にはソ連のSu-27/30フランカーが出現し、F-15に匹敵する能力を有していました。アメリカはF-15の後継戦闘機を開発すべく、1980年頃から先進戦術戦闘機(ATF)計画をスタートします。

これにそって開発されたのがF-22なのですが、その選定の過程でロッキード・マーティン社のF-22と競ったのがノースロップ社のYF-23です。

YF-23。PHOTO USAF
YF-23。PHOTO USAF

F-22よりもどことなく未来を感じさせるYF-23。PHOTO USAF
F-22よりもどことなく未来を感じさせるYF-23。PHOTO USAF

1990年(平成2年)に初飛行し、F-22とともに選定試験に供されました。ステルス能力はF-22を上回り、スーパークルーズ(超音速巡航)などでもF-22に劣らぬ性能を発揮していたとされ、外見はF-22に比べ先進的なスタイルとなっています。

無敵の戦闘機として君臨するF-22ラプター。PHOTO USAF
無敵の戦闘機として君臨するF-22ラプター。PHOTO USAF

充分な能力を有していたYF-23でしたが、1991年(平成3年)4月22日、アメリカ空軍がF-22を採用したため試作機が2機造られた段階で終了しました。どうしてF-22だったのか、はっきり知りたいところですが選定の詳細は公表されていません。

YF-23の正面。PHOTO USAF
YF-23の正面。PHOTO USAF

YF-23の後面。推力偏向装置は搭載されていません。PHOTO USAF
YF-23の後面。推力偏向装置は搭載されていません。PHOTO USAF
工場でのYF-23。PHOTO USAF
工場でのYF-23。PHOTO USAF
運用者-
主要なバリエーション
生産数2
スペック型式-
全 幅13.30m
全 長20.60m
全 高4.30m
翼面積88㎡
自 重13,100kg
総重量/最大離陸重量23,322kg
発動機YF119-PW-100(AB 15,876kg)×2
最大速度2,335km/h+
実用上昇限度19,800m
戦闘行動半径800km
航続距離4,500km+
乗 員1名
初飛行1990年8月27日
就 役-
退 役-
兵 装