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ボーイングF/A-18ホーネット

Boeing F/A-18 Hornet
ボーイングF/A-18ホーネットBoeing F/A-18 Hornet

どこか地味な傑作機

高い多目的性を有し、運用しやすい

※文頭写真:アメリカ海軍原子力空母ニミッツに着艦する、海兵隊のF/A-18Aホーネット。PHOTO USNAVY

ボーイング(マクドネル・ダグラス)F/A-18ホーネットは、アメリカ海軍の艦上戦闘機です。1978年に初飛行し、1983年より部隊配備されています。F/A-18A〜Dをホーネット、大きく改修された発展型のF/A-18E/Fをスーパーホーネットと呼びます。空対空、対地攻撃双方の任務をこなす戦闘攻撃機であり多用途性、費用対効果の高さなどから約1,500機が生産され、F-35配備前の現在、アメリカ海軍空母艦上のほとんどを占めています。

アメリカ海軍空母ロナルド・レーガン艦上で離艦準備をするF/A-18ホーネット。2011年(平成23年)2月27日。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母ロナルド・レーガン艦上で離艦準備をするF/A-18ホーネット。2011年(平成23年)2月27日。PHOTO USNAVY

本機は現在も運用されベストセラーとなったアメリカ空軍のF-16採用にあたって提案された2案のうちの一つです。アメリカ空軍は大型のF-15が高価となり維持費もかさむことから、軽量で比較的安価な空戦戦闘機とあわせて運用するハイローミックスという運用構想を推進すべく開発を進め、ジェネラル・ダイナミクスYF-16とノースロップYF-17のうちからYF-16を選び、F-16ファイティングファルコンとして採用しました。

この時、F-16と争ったノースロップYF-17は飛行性能や先端技術の導入、コスト面で劣っていたためアメリカ空軍には採用されませんでしたが、ちょうどF-4ファントムⅡやA-7コルセアの代替となる戦闘攻撃機を求めていたアメリカ海軍に対し、議会から先述の空軍コンペの2機種のうちから選ぶよう決定が下されたのでした。

YF-16(後のF-16)と米空軍のトライアルを受けたYF-17(後のF/A-18)。写真:USAF
YF-16(後のF-16)と米空軍のトライアルを受けたYF-17(後のF/A-18)。写真:USAF

そこで、海軍は、優れた低速性能、双発エンジン、余裕のある機体サイズなどを評価してYF-17を選びます。マクドネル・ダグラスはYF-17を海軍の仕様にあわせて大型化し、エンジンも改修、電子機器も更新するなど高性能化し、艦上機としての装備を追加してF/A-18ホーネットとして提案し1976年に制式に契約を交わします。

2010年(平成22年)環太平洋合同演習(RIMPAC)におけるF/A-18ホーネット。2010年7月20日。PHOTO USAF
2010年(平成22年)環太平洋合同演習(RIMPAC)におけるF/A-18ホーネット。2010年7月20日。PHOTO USAF

F/A-18は特に攻撃機A-6Eイントルーダーを代替するものとして企図されましたが、冷戦終結後に起こった軍事予算削減の流れがローコストで多用途に運用できるF/A-18にとって追い風となりました。中でも高額の取得・維持費用がかかるF-14は真っ先に削減の対象となります。

エンジン強化型のF-14B。主翼を68度の最後退翼位置にして飛行中。1993年(平成5年)。PHOTO USNAVY
エンジン強化型のF-14B。主翼を68度の最後退翼位置にして飛行中。1993年(平成5年)。PHOTO USNAVY

アメリカ海軍としては予算があれば、最強の艦隊防空(FAD)戦闘機F-14を充分な数揃えたかったと思います。F/A-18も優れた性能とコストパフォーマンスを誇る戦闘機ですが、空対空の制空戦闘や艦隊防空(FAD)においてはF-14に劣っていたからです。

フルアフターバーナーで離艦するVFA34飛行隊ブルーバスターズのF/A-18Cホーネット。2011年(平成23年)3月18日。PHOTO USNAVY
フルアフターバーナーで離艦するVFA34飛行隊ブルーバスターズのF/A-18Cホーネット。2011年(平成23年)3月18日。PHOTO USNAVY

アメリカ海軍空母カール・ビンソン艦上のF/A-18(右)。左は発展型のF/A-18スーパーホーネット。2011(平成23年)1月15日。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母カール・ビンソン艦上のF/A-18(右)。左は発展型のF/A-18スーパーホーネット。2011(平成23年)1月15日。PHOTO USNAVY

当時アメリカ海軍は艦上戦闘機として戦闘攻撃機F-8クルーセイダー(1955-1987)、戦闘攻撃機F-4ファントムⅡ(1958-1992)、攻撃機A-6Eイントルーダー(1963-1997)、要撃戦闘機F-14トムキャット(1970-2006)などを配備していました。

1987年にF-8、1992年にF-4、1997年にA-6Eが退役し、これらが担っていた任務はF/A-18が代替することとなり、徐々にF-14部隊もF/A-18へと代替されていきました。2006年にF-14が退役してからは、アメリカ海軍航空母艦の艦上はF/A-18に占拠されているといった様相です。

全天候型となったF-8D(F-8U-2N)。PHOTO USNAVY
全天候型となったF-8D(F-8U-2N)。PHOTO USNAVY

F-4ファントムⅡの魅力的な様子が感じられる角度からの写真。アメリカ海軍予備役飛行隊のひとつ、ミラマーに本拠地を置くVF-301飛行隊所属機。PHOTO USNAVY
F-4ファントムⅡの魅力的な様子が感じられる角度からの写真。アメリカ海軍予備役飛行隊のひとつ、ミラマーに本拠地を置くVF-301飛行隊所属機。PHOTO USNAVY

なぜF/A-18はこれほどのシェアを獲得したのでしょうか。F/A-18は1978年から試作機によってテストが開始されましたが、旋回性能、離陸重量(兵器搭載量)、戦闘行動半径、航続力、加速力など多くの項目で海軍の要求値を下回るという受難のスタートでした。

アメリカ海軍空母カール・ビンソン艦上のF/A-18(右)。左は発展型のF/A-18スーパーホーネット。2011(平成23年)1月15日。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母カール・ビンソン艦上のF/A-18(右)。左は発展型のF/A-18スーパーホーネット。2011(平成23年)1月15日。PHOTO USNAVY

マクドネル・ダグラス社とアメリカ海軍はこれらの問題を粘り強く解決し、当初アメリカ海軍が要求した通りの高性能な戦闘攻撃機となっていきます。F/A-18の前任攻撃機、A-6EやA-7Eに比べて格段に高性能となっており、爆弾やミサイル、増槽を積んだ状態でも敵戦闘機と空中戦が戦えるほどの多用途性を有していました。また、整備性がとてもよく、1飛行時間あたりの整備に要する時間(マンアワー)はF-14F-4の約半分、故障発発生間隔は132分時間とされており、F-14AやA-7の35〜40分程度と比べても突出して優秀です。

F/A-18はアメリカ海軍の曲技飛行隊ブルーエンジェルスの使用機ともなっています。PHOTO USNAVY
F/A-18はアメリカ海軍の曲技飛行隊ブルーエンジェルスの使用機ともなっています。PHOTO USNAVY

整備性が高く故障率が低いということは、稼働率が高くなり同じ機数ならばより多くの任務をこなせるということになります。飛行場で運用する陸上戦闘機はもちろん、空母という限られたスペースの中で運用する艦上戦闘機にとってはより重要な項目です。

アメリカ海軍空母エイブラハム・リンカーンの格納庫において、F/A-18のコクピットに防塵メンテナンスを施すメカニック。2010年(平成22年)10月13日。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母エイブラハム・リンカーンの格納庫において、F/A-18のコクピットに防塵メンテナンスを施すメカニック。2010年(平成22年)10月13日。PHOTO USNAVY

アメリカ海軍空母カール・ビンソンの格納庫においてF104-GE-400エンジンの整備をうけるF/A-18ホーネット。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母カール・ビンソンの格納庫においてF104-GE-400エンジンの整備をうけるF/A-18ホーネット。PHOTO USNAVY

有体にいって、F/A-18は一般的には戦闘機として地味な印象があるものの使いやすい戦闘機として傑作でした。さらに1988年からマクドネル・ダグラス社はF/A-18ホーネットを大幅に改良したホーネット2000という機種を計画し営業活動を行います。

F/A-18はアメリカ海軍の曲技飛行隊ブルーエンジェルスの使用機ともなっています。PHOTO USNAVY
F/A-18はアメリカ海軍の曲技飛行隊ブルーエンジェルスの使用機ともなっています。PHOTO USNAVY

こちらはF/A-18E/Fスーパーホーネットの項に続きますのでそちらをご覧ください。

運用者アメリカ海軍
アメリカ海兵隊
オーストラリア空軍
カナダ空軍
フィンランド空軍
クウェート空軍
マレーシア空軍
スイス空軍
スペイン空軍
主要なバリエーションF/A-18A 単座型最初の量産型
F/A-18B 複座型最初の量産型
F/A-18A+/B+ アビオニクス(電子機器)換装型
F/A-18C/D A/Bの改良型
F/A-18C/D Night Attack
F/A-18E/F C/Dの新規改良型。スーパーホーネットの項を参照
生産数1,480
スペック型式-
全 幅11.43m
全 長17.07m
全 高4.66m
翼面積37.16㎡
自 重10,460kg
総重量/最大離陸重量19,960kg
発動機F404-GE-402(4,420kg/AB 7,330kg)
最大速度2,205km/h
実用上昇限度15,240m
戦闘行動半径800km
航続距離3,700km
乗 員1名
初飛行1978年11月18日
就 役1980年11月
退 役-
兵 装

マクドネルF-4ファントムⅡ

McDonnell F-4 PhantomⅡ
マクドネルF-4ファントムⅡMcDonnell F-4 PhantomⅡ

真打、登場

艦上機にして最強の多用途戦闘機

※文頭写真:USNAVY

米海軍のマクドネルF-4ファントムⅡ(1958-)は、約5,200機が生産された最強の多用途戦闘機です。大きな機体に強力なエンジンを2発載せ、艦上戦闘機でありながら当時米空軍が保有していた高性能戦闘機群(センチュリーシリーズ)各機体の得意分野を、F-4一機で上回ってしまう程に優秀な戦闘機でした。

艦上戦闘機というのは航空母艦において運用されますから、広い飛行場・基地で運用される空軍の陸上戦闘機に比べて数多くの制約を課せられます。このことから、第2次世界大戦末期から始まったジェット戦闘機の開発において米海軍は後塵を拝していました。

米海軍は、1955年に初飛行した傑作機、チャンス・ボートF-8クルーセイダーにおいてようやく空軍機に劣らない戦闘機を艦上に配備することができました。その3年後1958年に本機F-4ファントムⅡが初飛行し、その高性能ぶりから今度は逆に米空軍が米海軍の開発したF-4を採用します。米海軍はさぞ晴れやかな気分だったことでしょう。

1952年(昭和27年)に創設されたアメリカ海軍、訓練飛行隊VF-101所属のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY
1952年(昭和27年)に創設されたアメリカ海軍、訓練飛行隊VF-101所属のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY

米海軍がF-8、F-4と立て続けに傑作艦上戦闘機をうみだしていたこの時期、米海軍の航空母艦が大きな進歩を遂げていました。1955年、第2次世界大戦中に建造された排水量約30,000トンのエセックス級航空母艦にかわり、米海軍待望の超大型航空母艦、フォレスタル級が就役します。F-8はエセックス級でも運用可能でしたが、F-4はエセックス級では運用できませんでした。

この角度もファントムⅡはいい。名前といい形といいたまらない人にはたまらない、F-4ファントムⅡです。PHOTO USNAVY
この角度もファントムⅡはいい。名前といい形といいたまらない人にはたまらない、F-4ファントムⅡです。PHOTO USNAVY

フォレスタル級は、乗員約4,300名、60,000トンもの基準排水量を持ち、斜め着艦用飛行甲板(アングルド・デッキ)を採用、72機の艦上戦闘機を収容することができました。さらに、1954年以降は戦後就役したミッドウェイ級もアングルド・デッキ化されます。

アメリカの旗艦とも呼ばれたアメリカ海軍空母、USSコンステレーション艦上のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY
アメリカの旗艦とも呼ばれたアメリカ海軍空母、USSコンステレーション艦上のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY

航空母艦と艦上戦闘機は共に進化するものです。登場した当時、見る者を驚かせたという大型艦上戦闘機F-4はこれら航空母艦の進化に歩を合わせるように誕生した傑作艦上戦闘機でした。

アメリカ海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルスのF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルスのF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY

防空能力においてはすでに運用されていた高性能機F-8クルーセイダーとF-4は同等でしたが、F-4は加えて対地攻撃にも秀でていました。F-8の離陸最大重量は13,000kgですが、F-4のそれは26,760kgもあります。それだけ多くの兵装を搭載することができるわけですから、艦上戦闘機において特に要求される多用途性が高まります。

アメリカのスミソニアン博物館に展示されるアメリカ海兵隊のF-PHOTO SMITHSONIAN NATIONAL AIR AND SPACE MUSEUM
アメリカのスミソニアン博物館に展示されるアメリカ海兵隊のF-PHOTO SMITHSONIAN NATIONAL AIR AND SPACE MUSEUM

速度記録、上昇記録など各種の世界記録を次々に更新したF-4の飛行性能は文句なく世界一であり、イギリス空軍が1964年に採用したのを始め、日本、スペイン、トルコ、エジプト、ギリシャなど各国に採用され、5,000機を超えるベストセラーとなりました。

アメリカ空軍のF-15と飛ぶ航空自衛隊のF-4EJ。1983年(昭和58年)夏の日米合同演習コープノース中の写真。PHOTO DoD
アメリカ空軍のF-15と飛ぶ航空自衛隊のF-4EJ。1983年(昭和58年)夏の日米合同演習コープノース中の写真。PHOTO DoD

世界を驚かせた高性能多用途艦上戦闘機、マクドネルF-4ファントムⅡは初飛行から半世紀以上を経たいまでも、数々の改修を受け世界の空を飛び回っています。

運用者アメリカ海軍
アメリカ空軍
アメリカ海兵隊
航空自衛隊
オーストラリア空軍
エジプト空軍
ドイツ空軍
イラン空軍
イスラエル空軍
スペイン空軍
トルコ空軍
イギリス空軍
韓国空軍
主要なバリエーションXF4H-1 試作機。2機製造
F4H-1F 追加の試作機。45機製造。後にF-4B
F4H-1 最初の量産型
F-4G アメリカ空軍の要求による敵防空網制圧機(SEAD/ワイルド・ヴィーゼル)。12機製造
YF-4G F-4Jの試作機
F-4J 海軍2次量産型。512機製造。ルックダウン能力などを加えた
F-4N F-4Bの改修機。227機改修
F-4S F-4Jの近代化改修型。構造強化
F-100A F-4Cの当初名
F-4C 空軍向け改修型。複操縦装置追加など
F-4D 空軍向けF-4Cの改修型。レーダー関連の性能向上など
EF-4D F-4Dを改修した防空網制圧機の試作型
F-4E F-4D改修型。エンジン換装、バルカン砲装備など
F-4G 空軍の敵防空網制圧機(SEAD)。F-4Eを改修
RF-4B 偵察機型。米海兵隊向けに46機が製造
RF-4C 偵察機型
RF-4E 偵察機型
F-4VG 可変翼改修型。計画のみ
生産数5,195
スペック型式-
全 幅11.7m
全 長17.78m
全 高4.95m
翼面積49.23㎡
自 重13,960kg
総重量/最大離陸重量26,760kg
発動機GE J79-GE-8B/8C/10×2(5,380kg/AB 8,120kg)
最大速度2,550km/h
実用上昇限度21,340m
戦闘行動半径960km
航続距離2,600km
乗 員2名
初飛行1958年5月27日
就 役1960年12月
退 役1992年1月
兵 装

グラマンF11Fタイガー

Grumman F11F Tigar
グラマンF11FタイガーGrumman F11F Tigar

操縦性と機動性に優れた超音速機

ブルーエンジェルス使用機

※文頭写真:VF-21Mach BustersのF11F-1。1959年7月1日撮影。PHOTO USNAVY

グラマンF11Fタイガーは、1957年〜1969年まで12年間に渡り米海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルスの使用機となった飛行性能の高い米海軍の艦上戦闘機です。

小柄で軽量な機体に軽快な運動性能というコンセプトは数十年後に、大型で高価な戦闘機+小型で比較的安価な戦闘機という組み合わせ「ハイローミックス」という形で推進され、現代でもF-15F-16F-22F-35という形でみることができますが、1950年代後半当時の状況は違っていました。

1957年(昭和32 年)、アメリカ海軍空母USSレンジャー艦上のF11F-1タイガー。軽快な運動性能を持つ超音速艦上戦闘機でした。PHOTO USNAVY
1957年(昭和32 年)、アメリカ海軍空母USSレンジャー艦上のF11F-1タイガー。軽快な運動性能を持つ超音速艦上戦闘機でした。PHOTO USNAVY

制空を最新のジェット機、対地攻撃をメインとする攻撃機をレシプロ機が担ってきた第2時大戦後の運用から、徐々に双方をジェット機が担うようになり、特に艦上戦闘機においては多目的化が進んでいました。

アメリカ海軍空母USSイントレピッドを母艦とするF11F-1タイガー(VF-33アストロノーツ所属機)。1960年(昭和35年)。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母USSイントレピッドを母艦とするF11F-1タイガー(VF-33アストロノーツ所属機)。1960年(昭和35年)。PHOTO USNAVY

F11Fと同時期に開発され、当初から本命視されていたヴォート社のF-8クルーセイダーはその期待を上回る飛行性能と多用途性を持つ世界初の超音速艦上戦闘機となり、狭い艦上で運用する艦上戦闘機にして米空軍の保持する陸上戦闘機をも凌駕する性能を有していました。

全天候型となったF-8D(F-8U-2N)。PHOTO USNAVY
全天候型となったF-8D(F-8U-2N)。PHOTO USNAVY

このような状況のため、軽快な操縦性能と超音速の優れた飛行性能を持ったF11Fでしたが、F-8の後塵を拝することとなってしまいました。そもそもF11F試作機発注の翌月にはヴォート社のF-8試作機も発注されていますから、そもそも本命F-8、おさえとしてF11Fという思惑だったのでしょう。

しかし、米海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルスに採用され、昭和32年(1957年)より12年間に渡り使用されていることは、F11Fの高い飛行性能を証明しているといえます。

F11F-1と米海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルス。昭和33年(1958年)の撮影です。写真:USNAVY
F11F-1と米海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルス。昭和33年(1958年)の撮影です。写真:USNAVY

運用者アメリカ海軍
主要なバリエーションF9F-9 開発名
F11F-1 量産型。200機製造
F11F-P 写真偵察機。計画のみ
F11F-1F 改修型。エンジン換装など。2機製造
生産数200
スペック型式-
全 幅9.54m
全 長14.3m
全 高4.04m
翼面積23.2㎡
自 重6,498kg
総重量/最大離陸重量10,920kg
発動機J65-W-18(4,763kg)
最大速度1,210km/h
実用上昇限度12,770m
戦闘行動半径850km
航続距離2,053km
乗 員1名
初飛行1954年7月30日
就 役1957年3月
退 役1961年4月
兵 装

グラマンF9Fクーガー

Grumman F9F Cougar
グラマンF9FクーガーGrumman F9F Cougar

F9Fパンサーの後退翼型

後退翼艦上戦闘機の成功作

※文頭写真:前が後退翼のF9F-6クーガー、奥が直線翼のF9F-5パンサー。1952年(昭和27年)。PHOTO USNAVY

グラマンF9Fクーガーは、1947年に初飛行したF9Fパンサーの発展型。大きな変更点は主翼の後退翼化です。レシプロ時代からの直線翼よりも、後退翼が高速性能に優れることは明らかにもかかわらず艦上戦闘機は、後退翼化に手間取っていました。狭い空母上で運用する艦上戦闘機は広い飛行場から離着陸する空軍の戦闘機とは異なり、多くの制約が課せられるからです。

手前がF9Fクーガー、奥はアメリカ空軍のF-86セイバー。PHOTO USNAVY
手前がF9Fクーガー、奥はアメリカ空軍のF-86セイバー。PHOTO USNAVY

主翼に後退角がついた後退翼は、高速飛行性能を劇的に向上させる技術でしたが、当時、旧式の直線翼に比べ低速性能が劣っていました。艦上戦闘機は離発着時に高い低速飛行性能が必要とされるため、高速性能と低速性能の両立が難題となっていたわけです。

朝鮮戦争最中の1950年11月、旧ソ連の傑作ジェット戦闘機MiG-15が突如出現し、それまでアメリカを始めとする連合軍ががっちり確保していた半島の制空権を脅かすようになっていました。米空軍には同じ後退翼の高性能機F-86セイバーがありましたが、米海軍はMiG-15に対抗しうる戦闘機を保有しておらず、その危機感は深刻なものでした。

ミグショックの翌月、1950年12月にはグラマン社に対してパンサーの後退翼型開発が発注されました。F9Fパンサーの型式の一つF9F-5のうちの3機がXF9F-6クーガーとして開発されることとなり、わずか10か月後の1951年9月20日、初飛行に成功しています。

後退翼機の低速性能を向上させる各種の改良は枚挙にいとまなく、主翼拡大、大型フラップ、油圧式前縁スラット、フラッペロン(flap/フラップ+aileron/補助翼)、内翼への境界層板の取り付け、翼端増槽取り外しに伴う胴体延長(燃料搭載量増加)などが行われました。

これらの努力の結果、F9Fクーガーは直線翼のF9Fパンサーと同等の低速性能を獲得し、最高速度はパンサーの932km/hから1,150km/hへと飛躍的に向上しました。1955年から57年まで米海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルズ使用機であったことも飛行性能の高さの表れといえるでしょう。また、艦上戦闘機の名門グラマンらしい堅牢で運用性の高い機体でもありました。

ブルーエンジェルスのF9F-8クーガー。1955年(昭和30年)から1957年(昭和32年)まで使用されました。PHOTO USNAVY
ブルーエンジェルスのF9F-8クーガー。1955年(昭和30年)から1957年(昭和32年)まで使用されました。PHOTO USNAVY

米海軍は1952年11月、超特急で部隊配備を開始しました。ミグショックから異例のスピードで開発されたF9Fクーガーでしたが、朝鮮戦争休戦に1か月ほど間に合いませんでした。その後1960年まで実戦部隊で運用され、退役後は練習機などとして1970年代中頃まで活躍しました。

運用者アメリカ海軍
アメリカ海兵隊
主要なバリエーションXF9F-6 試作機
F9F-6 量産型
F9F-7 エンジン換装型 。168機製造
F9F-8 性能向上型。601機製造
F9F-8P 写真偵察機
F9F-8T 練習機
生産数1,392
スペック型式F9F-8
全 幅10.52m
全 長12.45m
全 高3.7m
翼面積31.3㎡
自 重5,381kg
総重量/最大離陸重量9,114kg
発動機J48-P-8(3,290kg)
最大速度1,150km/h
実用上昇限度12,800m
戦闘行動半径830km
航続距離1,600km
乗 員1名
初飛行1951年9月
就 役1952年11月
退 役1960年2月
兵 装