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ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(C)

Lockheed Martin F-35 Lightning Ⅱ(C)
ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(C)Lockheed Martin F-35 Lightning Ⅱ(C)

最新鋭ステルス戦闘機(艦上戦闘機型)

初の艦上ステルス機

※文頭写真:Lockeed Martin
※F-35の基本性能等については、ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡ(A)記事をご覧ください。

ロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡはアメリカが開発した最新の戦闘機です。一つの基本設計でアメリカ空・海・海兵隊の戦闘機を開発しようという、統合打撃戦闘機(JSF=Joint Strike fighter)計画からうまれました。

基本設計から生み出される形は3種類あり、通常の飛行場において運用するA型、垂直に離着陸できるB型(短距離離陸垂直離着陸)、航空母艦において運用するC型(艦上戦闘機)の3種類があります。

C型は航空母艦において運用する艦載機型です。F-35は英国や日本、イタリア、オランダなどアメリカと同盟関係にある国々が導入しますが、艦載機型のC型は米海軍と海兵隊のみが導入します。

アメリカ海軍の主力戦闘機としては久しぶりの単発機。エンジンの信頼性が向上してきたのでしょう。PHOTO Lockeed Martin
アメリカ海軍の主力戦闘機としては久しぶりの単発機。エンジンの信頼性が向上してきたのでしょう。PHOTO Lockeed Martin

陸上の飛行場から離発着するA型と違い、C型は狭い空母の甲板に離発着するため低速時の安定性が求められることから、主翼、垂直・水平尾翼がそれぞれ大型化しています。また、離着陸時の衝撃に耐えるため、機体構造や降着装置の強化が行われ、主翼も折りたためるようになっています。戦闘機は主翼に燃料を搭載しているため、主翼を大型化したC型は、燃料搭載量が増え航続距離が延びています。

F-35Cの試験機。離着艦時の揚力を得るため主翼が大きくなっているのが最も特徴的です。PHOTO Lockeed Martin
F-35Cの試験機。離着艦時の揚力を得るため主翼が大きくなっているのが最も特徴的です。PHOTO Lockeed Martin

空母を中心とし他の追随を許さない断トツの洋上戦力を持つアメリカ海軍にまたひとつ、ステルス戦闘機という武器が加わります。PHOTO Lockeed Martin
空母を中心とし他の追随を許さない断トツの洋上戦力を持つアメリカ海軍にまたひとつ、ステルス戦闘機という武器が加わります。PHOTO Lockeed Martin

ステルス性維持のため兵装は胴体内に格納します。そのためすっきりとした胴体下面。ただ、主翼下にハードポイントをつけるテストも行われています。それほどステルス性が問われない任務に対するものでしょう。PHOTO Lockeed Martin
ステルス性維持のため兵装は胴体内に格納します。そのためすっきりとした胴体下面。ただ、主翼下にハードポイントをつけるテストも行われています。それほどステルス性が問われない任務に対するものでしょう。PHOTO Lockeed Martin

F-35は昔のように脚の間に太い操縦桿があり、加える力によって運動が加減されるのではなく、電気信号を伝達するステッィクにより操縦します。大雑把にいえばゲームのジョイスティックと同じ様なものです。さらに、戦闘機乗りにとっても難しい空母への着艦を、ある程度自動で行われるオートスラスト機能(自動推力制御装置)が装備されています。

試験中のF-35C(艦載機型)。PHOTO Lockeed Martin
試験中のF-35C(艦載機型)。PHOTO Lockeed Martin

多用途性と信頼性の高さから現在、アメリカ海軍空母の艦上を占拠することとなったF/A-18(前)とF-35(後)。PHOTO Lockeed Martin
多用途性と信頼性の高さから現在、アメリカ海軍空母の艦上を占拠することとなったF/A-18(前)とF-35(後)。PHOTO Lockeed Martin

米海軍としては、初めてのステルス艦上戦闘機となります。米海軍のニミッツ級原子力空母に最新鋭のステルス戦闘機が配備される、ということは日本にとっても大変良い抑止力となるでしょう。

F-35には最新のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が採用されています。バイザーには飛行情報や戦術データなどの情報が表示され、前を向いたまま全周囲をカバーできます。
F-35には最新のヘッドマウントディスプレイ(HMD)が採用されています。バイザーには飛行情報や戦術データなどの情報が表示され、前を向いたまま全周囲をカバーできます。

運用者-
主要なバリエーションX-35A 試作機。通常離着陸型(CTOL)
X-35C 試作機。艦上離着陸型
X35B X35Aを改造した試作機。短距離離陸・垂直着陸型(STOVL)
生産数-
スペック型式-
全 幅13.11m
全 長15.70m
全 高4.6m
翼面積62.1㎡
自 重13,924kg
総重量/最大離陸重量31,800kg
発動機F135-400(C/12,746kg/AB 19,505kg)×1
最大速度2,220km/h(C)
実用上昇限度15,240m
戦闘行動半径1,111km
航続距離2,520km
乗 員
初飛行2010年6月8日(C)
就 役-
退 役-
兵 装

ボーイングF/A-18スーパーホーネット

Boeing F/A-18 Super Hornet
ボーイングF/A-18スーパーホーネットBoeing F/A-18 Super Hornet

優れた多用途戦闘機

アメリカ海軍の艦上を占拠するスズメバチ

※文頭写真:アメリカ海軍空母カール・ビンソンから出撃するF/A-18スーパーホーネット。PHOTO USNAVY

ボーイング(マクドネル・ダグラス)F/A-18E/Fスーパーホーネットは、アメリカ海軍の艦上戦闘機です。1978年に初飛行し、1983年より部隊配備されたF/A-18A〜Dホーネットの発展型として1988年より開発されました。Eは単座型、Fは複座型です。

F/A-18Fスーパーホーネット。PHOTO Boeing
F/A-18Fスーパーホーネット。PHOTO Boeing

空対空、空対地、空中給油と多目的に活躍し、低い故障発生率、優れた整備の容易性をも兼ね備えた高性能機です。F-35配備前の現在、アメリカ海軍空母の艦上はF/A-18ホーネット/スーパーホーネットが占拠しているといった様相です。

F/A-18スパーホーネットの下面。高い多用途性を担保する優れた兵装搭載量を誇ります。PHOTO Boeing
F/A-18スパーホーネットの下面。高い多用途性を担保する優れた兵装搭載量を誇ります。PHOTO Boeing

開発の経緯などは「F/A-18A〜Dホーネットの項」をご覧ください。

1988年からマクドネル・ダグラス社はF/A-18ホーネットを大幅に改良したホーネット2000という機種を計画し営業活動を行います。

1992年、アメリカ海軍はホーネット2000をF/A-18E/Fスーパーホーネットとして採用、1995年には初飛行を行います。F/A-18ホーネットに比べて大きさ・重量・翼面積・燃料搭載量は25%〜30%増加し、エンジン推力は7,300kgから9,980kgに強化、飛行性能は向上し、より多くの兵装を搭載することが可能となりました。

F/A-18スーパーホーネットの電子戦機型、EA-18Gグロウラー。PHOTO Boeing
F/A-18スーパーホーネットの電子戦機型、EA-18Gグロウラー。PHOTO Boeing

F/A-18スーパーホーネットのコクピット。電子化が進んでいます。
F/A-18スーパーホーネットのコクピット。電子化が進んでいます。

F/A-18A〜DとE/Fを外見上すぐに判別できる点は、E/Fは機体が大きいこと、コクピット後部両側から張り出したエラのような部分が大きいこと、空気取入口(インテーク)が円形から角ばった形になっていることなどです。

アメリカ海軍空母エンターブライズの格納庫に収容されるホーネット。右がスーパーホーネット、左がホーネット。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母エンターブライズの格納庫に収容されるホーネット。右がスーパーホーネット、左がホーネット。PHOTO USNAVY

運用者アメリカ海軍
オーストラリア空軍
主要なバリエーションF/A-18E 単座量産型
F/A-18F 複座量産型
EA-18G 複座の電子戦機
生産数500
スペック型式-
全 幅13.68m
全 長18.5m
全 高4.87m
翼面積46.45㎡
自 重14,007kg
総重量/最大離陸重量29,932kg
発動機F414-GE-400(6,350kg/AB 10,000kg)×2
最大速度2,205km/h
実用上昇限度15,240m
戦闘行動半径910km
航続距離3,705km
乗 員1名
初飛行1995年11月29日
就 役1999年1月
退 役-
兵 装

ボーイングF/A-18ホーネット

Boeing F/A-18 Hornet
ボーイングF/A-18ホーネットBoeing F/A-18 Hornet

どこか地味な傑作機

高い多目的性を有し、運用しやすい

※文頭写真:アメリカ海軍原子力空母ニミッツに着艦する、海兵隊のF/A-18Aホーネット。PHOTO USNAVY

ボーイング(マクドネル・ダグラス)F/A-18ホーネットは、アメリカ海軍の艦上戦闘機です。1978年に初飛行し、1983年より部隊配備されています。F/A-18A〜Dをホーネット、大きく改修された発展型のF/A-18E/Fをスーパーホーネットと呼びます。空対空、対地攻撃双方の任務をこなす戦闘攻撃機であり多用途性、費用対効果の高さなどから約1,500機が生産され、F-35配備前の現在、アメリカ海軍空母艦上のほとんどを占めています。

アメリカ海軍空母ロナルド・レーガン艦上で離艦準備をするF/A-18ホーネット。2011年(平成23年)2月27日。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母ロナルド・レーガン艦上で離艦準備をするF/A-18ホーネット。2011年(平成23年)2月27日。PHOTO USNAVY

本機は現在も運用されベストセラーとなったアメリカ空軍のF-16採用にあたって提案された2案のうちの一つです。アメリカ空軍は大型のF-15が高価となり維持費もかさむことから、軽量で比較的安価な空戦戦闘機とあわせて運用するハイローミックスという運用構想を推進すべく開発を進め、ジェネラル・ダイナミクスYF-16とノースロップYF-17のうちからYF-16を選び、F-16ファイティングファルコンとして採用しました。

この時、F-16と争ったノースロップYF-17は飛行性能や先端技術の導入、コスト面で劣っていたためアメリカ空軍には採用されませんでしたが、ちょうどF-4ファントムⅡやA-7コルセアの代替となる戦闘攻撃機を求めていたアメリカ海軍に対し、議会から先述の空軍コンペの2機種のうちから選ぶよう決定が下されたのでした。

YF-16(後のF-16)と米空軍のトライアルを受けたYF-17(後のF/A-18)。写真:USAF
YF-16(後のF-16)と米空軍のトライアルを受けたYF-17(後のF/A-18)。写真:USAF

そこで、海軍は、優れた低速性能、双発エンジン、余裕のある機体サイズなどを評価してYF-17を選びます。マクドネル・ダグラスはYF-17を海軍の仕様にあわせて大型化し、エンジンも改修、電子機器も更新するなど高性能化し、艦上機としての装備を追加してF/A-18ホーネットとして提案し1976年に制式に契約を交わします。

2010年(平成22年)環太平洋合同演習(RIMPAC)におけるF/A-18ホーネット。2010年7月20日。PHOTO USAF
2010年(平成22年)環太平洋合同演習(RIMPAC)におけるF/A-18ホーネット。2010年7月20日。PHOTO USAF

F/A-18は特に攻撃機A-6Eイントルーダーを代替するものとして企図されましたが、冷戦終結後に起こった軍事予算削減の流れがローコストで多用途に運用できるF/A-18にとって追い風となりました。中でも高額の取得・維持費用がかかるF-14は真っ先に削減の対象となります。

エンジン強化型のF-14B。主翼を68度の最後退翼位置にして飛行中。1993年(平成5年)。PHOTO USNAVY
エンジン強化型のF-14B。主翼を68度の最後退翼位置にして飛行中。1993年(平成5年)。PHOTO USNAVY

アメリカ海軍としては予算があれば、最強の艦隊防空(FAD)戦闘機F-14を充分な数揃えたかったと思います。F/A-18も優れた性能とコストパフォーマンスを誇る戦闘機ですが、空対空の制空戦闘や艦隊防空(FAD)においてはF-14に劣っていたからです。

フルアフターバーナーで離艦するVFA34飛行隊ブルーバスターズのF/A-18Cホーネット。2011年(平成23年)3月18日。PHOTO USNAVY
フルアフターバーナーで離艦するVFA34飛行隊ブルーバスターズのF/A-18Cホーネット。2011年(平成23年)3月18日。PHOTO USNAVY

アメリカ海軍空母カール・ビンソン艦上のF/A-18(右)。左は発展型のF/A-18スーパーホーネット。2011(平成23年)1月15日。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母カール・ビンソン艦上のF/A-18(右)。左は発展型のF/A-18スーパーホーネット。2011(平成23年)1月15日。PHOTO USNAVY

当時アメリカ海軍は艦上戦闘機として戦闘攻撃機F-8クルーセイダー(1955-1987)、戦闘攻撃機F-4ファントムⅡ(1958-1992)、攻撃機A-6Eイントルーダー(1963-1997)、要撃戦闘機F-14トムキャット(1970-2006)などを配備していました。

1987年にF-8、1992年にF-4、1997年にA-6Eが退役し、これらが担っていた任務はF/A-18が代替することとなり、徐々にF-14部隊もF/A-18へと代替されていきました。2006年にF-14が退役してからは、アメリカ海軍航空母艦の艦上はF/A-18に占拠されているといった様相です。

全天候型となったF-8D(F-8U-2N)。PHOTO USNAVY
全天候型となったF-8D(F-8U-2N)。PHOTO USNAVY

F-4ファントムⅡの魅力的な様子が感じられる角度からの写真。アメリカ海軍予備役飛行隊のひとつ、ミラマーに本拠地を置くVF-301飛行隊所属機。PHOTO USNAVY
F-4ファントムⅡの魅力的な様子が感じられる角度からの写真。アメリカ海軍予備役飛行隊のひとつ、ミラマーに本拠地を置くVF-301飛行隊所属機。PHOTO USNAVY

なぜF/A-18はこれほどのシェアを獲得したのでしょうか。F/A-18は1978年から試作機によってテストが開始されましたが、旋回性能、離陸重量(兵器搭載量)、戦闘行動半径、航続力、加速力など多くの項目で海軍の要求値を下回るという受難のスタートでした。

アメリカ海軍空母カール・ビンソン艦上のF/A-18(右)。左は発展型のF/A-18スーパーホーネット。2011(平成23年)1月15日。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母カール・ビンソン艦上のF/A-18(右)。左は発展型のF/A-18スーパーホーネット。2011(平成23年)1月15日。PHOTO USNAVY

マクドネル・ダグラス社とアメリカ海軍はこれらの問題を粘り強く解決し、当初アメリカ海軍が要求した通りの高性能な戦闘攻撃機となっていきます。F/A-18の前任攻撃機、A-6EやA-7Eに比べて格段に高性能となっており、爆弾やミサイル、増槽を積んだ状態でも敵戦闘機と空中戦が戦えるほどの多用途性を有していました。また、整備性がとてもよく、1飛行時間あたりの整備に要する時間(マンアワー)はF-14F-4の約半分、故障発発生間隔は132分時間とされており、F-14AやA-7の35〜40分程度と比べても突出して優秀です。

F/A-18はアメリカ海軍の曲技飛行隊ブルーエンジェルスの使用機ともなっています。PHOTO USNAVY
F/A-18はアメリカ海軍の曲技飛行隊ブルーエンジェルスの使用機ともなっています。PHOTO USNAVY

整備性が高く故障率が低いということは、稼働率が高くなり同じ機数ならばより多くの任務をこなせるということになります。飛行場で運用する陸上戦闘機はもちろん、空母という限られたスペースの中で運用する艦上戦闘機にとってはより重要な項目です。

アメリカ海軍空母エイブラハム・リンカーンの格納庫において、F/A-18のコクピットに防塵メンテナンスを施すメカニック。2010年(平成22年)10月13日。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母エイブラハム・リンカーンの格納庫において、F/A-18のコクピットに防塵メンテナンスを施すメカニック。2010年(平成22年)10月13日。PHOTO USNAVY

アメリカ海軍空母カール・ビンソンの格納庫においてF104-GE-400エンジンの整備をうけるF/A-18ホーネット。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母カール・ビンソンの格納庫においてF104-GE-400エンジンの整備をうけるF/A-18ホーネット。PHOTO USNAVY

有体にいって、F/A-18は一般的には戦闘機として地味な印象があるものの使いやすい戦闘機として傑作でした。さらに1988年からマクドネル・ダグラス社はF/A-18ホーネットを大幅に改良したホーネット2000という機種を計画し営業活動を行います。

F/A-18はアメリカ海軍の曲技飛行隊ブルーエンジェルスの使用機ともなっています。PHOTO USNAVY
F/A-18はアメリカ海軍の曲技飛行隊ブルーエンジェルスの使用機ともなっています。PHOTO USNAVY

こちらはF/A-18E/Fスーパーホーネットの項に続きますのでそちらをご覧ください。

運用者アメリカ海軍
アメリカ海兵隊
オーストラリア空軍
カナダ空軍
フィンランド空軍
クウェート空軍
マレーシア空軍
スイス空軍
スペイン空軍
主要なバリエーションF/A-18A 単座型最初の量産型
F/A-18B 複座型最初の量産型
F/A-18A+/B+ アビオニクス(電子機器)換装型
F/A-18C/D A/Bの改良型
F/A-18C/D Night Attack
F/A-18E/F C/Dの新規改良型。スーパーホーネットの項を参照
生産数1,480
スペック型式-
全 幅11.43m
全 長17.07m
全 高4.66m
翼面積37.16㎡
自 重10,460kg
総重量/最大離陸重量19,960kg
発動機F404-GE-402(4,420kg/AB 7,330kg)
最大速度2,205km/h
実用上昇限度15,240m
戦闘行動半径800km
航続距離3,700km
乗 員1名
初飛行1978年11月18日
就 役1980年11月
退 役-
兵 装

ボーイング JSF X-32

Boeing JSF X-32
ボーイング JSF X-32Boeing JSF X-32

JSF計画の一方

F-35に敗れたX-32

ボーイングX-32はアメリカ軍による統合打撃戦闘機(JSF:Joint Strike Fighter)計画の過程で開発された試作機の一つです。競作されたロッキード・マーチン社のF-35に敗れたため採用には至りませんでした。

統合打撃戦闘機とは、一種類の基本設計からいくつかの戦闘機を造り、基本設計を共有することで開発・生産を効率化しコストを削減させようとするものです。アメリカ空軍(F-16)、海軍・海兵隊のF/A-18及び同海兵隊とイギリス空・海軍のハリアーⅡなどが統合の対象となり、開発が進められロッキード・マーチンF-35ライトニングⅡとして結実、現在試験運用中です。

通常離着陸型のX-32A。ステルス性維持のため兵装は機内に格納されます。PHOTO Boeing
通常離着陸型のX-32A。ステルス性維持のため兵装は機内に格納されます。PHOTO Boeing

開発はアメリカを主体としてイギリスやイタリア、オランダ、ノルウェー、デンマーク、オーストラリア、トルコ、カナダなどが参加した国際共同形式となっています。F-35は日本も採用を決定していますが、開発には参加していません。

ただし、F-2開発時に米国が日本に強要した「日本の技術を無償で米国に供与すること」という条件により、最先端繊維素材による一体成型技術、AESAレーダー技術など大変重要な技術が要するに脅迫的に盗まれているわけです。そして、それらがF-35F-22に活かされていますから、大きな功労者といってもいいのではないでしょうか。これは、以前、別の仕事において、F-2関連の技術者に取材した際に確認しましたから間違いないと思われます。技術者は自分の技術が最先端戦闘機に使われていたことに誇りを持っていたようでした。それはそれで素晴らしいことですが、やはり、日本の技術が脅迫的に奪われたことに変わりないのではないでしょうか。

短距離離陸垂直離着陸型のX-32B。PHOTO Boeing
短距離離陸垂直離着陸型のX-32B。PHOTO Boeing

昨今の戦闘機開発は巨額の費用と数多くのエキスパート、そして長い時間が必要とされるため、このような形式がとられることがあります。ちなみに、本計画で制式採用されたF-35ライトニングⅡの場合、開発が始まってから2011年までに30兆円を超える費用がかかっているといわれています。

統合打撃戦闘機(JSF)計画は1995年に始まり、ボイーン社とロッキード・マーチン社に概念実証機の開発が発注されました。ボーイング社はX-32をロッキード・マーチン社はX-35を造り比較試験が行われました。X-32は通常離着陸型(CTOL)、短距離離陸垂直離着陸型(STOVL)の2種類が製造されました。

垂直離着陸試験中のX-32B。胴体中央下面に大きなエンジンノズルがみえています。写真ではみえませんが、前後にそれぞれ2つずつ傾き調整用の小さなエンジンノズルがついています。PHOTO Boeing
垂直離着陸試験中のX-32B。胴体中央下面に大きなエンジンノズルがみえています。写真ではみえませんが、前後にそれぞれ2つずつ傾き調整用の小さなエンジンノズルがついています。PHOTO Boeing

F/A-18スーパーホーネットと並ぶX-32。PHOTO Boeing
F/A-18スーパーホーネットと並ぶX-32。PHOTO Boeing

X-32の主な特長は、F-35と同じように一つの基本設計から通常離着陸型、艦載型、短距離離陸垂直離着陸型の3つの機体を造る統合性がまず第一。そしていまや通常のニュースでも使われるようになったステルス戦闘機であることです。ステルスとは、レーダーに探知され難くする技術です。

X-32B STOVL型のコクピット。PHOTO Boeing
X-32B STOVL型のコクピット。PHOTO Boeing

レーダーは電波を出しその反射によって探知していますが、ステルス機はこの反射を形状と表面加工などの技術によって小さくする技術です。この反射の大きさはRCSという言葉で表現され値が小さいほどレーダーには小さく映ります。

このRCS値はステルス機ではないF-15イーグルだと10㎡、X-32に買って採用されたF-35は0.01㎡といわれています。通常のレーダーにはほぼ映らないといっていいのではないでしょうか。
029_ Lockheed Martin F-35 Lightning Ⅱ(B)_3

X-32が採用されなかった理由はウェポンベイ(兵器搭載庫)が装備しずらいなどといわれていますが、詳細は定かではありません。「カッコ悪い」などという憶測もあります。

運用者-
主要なバリエーションX-32A 通常離着陸型
X-32B 短距離離陸垂直離着陸型
生産数-
スペック型式-
全 幅10.97m
全 長15.47m
全 高5.28m
翼面積54.8㎡
自 重-
総重量/最大離陸重量17,200g
発動機F135ターボファン(11,793kg/AB 15,876kg)×1
最大速度1,931km/h
実用上昇限度-
戦闘行動半径1,390km
航続距離-
乗 員1名
初飛行2000年9月18日
就 役-
退 役-
兵 装

グラマンF-14トムキャット

Grumman F-14 Tomcat
グラマンF-14トムキャットGrumman F-14 Tomcat

最強の艦隊防空戦闘機

映画トップガンの戦闘機

※文頭写真:USNAVY

グラマンF-14トムキャット(1970-2006)は、アメリカが開発し冷戦の激化する1970年代に登場した最強の艦隊防空戦闘機です。映画『TOPGUN』でみせた「かっこいい戦闘機」というイメージは強烈な影響を与えました。

第2次世界大戦が終わり、アメリカは西の盟主として覇権を獲得していました。特に空母を中心とする強力な洋上戦闘力は他国に類のないものでした。1955年には世界初の超大型航空母艦(スーパー・キャリアー)である排水量60,000トンのフォレスタル級が就役し、1961年には世界初の原子力空母エンタープライズ(75,700トン)が就役しており、たとえばエンタープライズでは一隻に約5,000名の乗組員が搭乗し、84機もの艦上機を運用できました。

戦闘と世界の覇権を争う一方の雄、東の盟主ソ連は1950年代から数年に一度のペースでモスクワ近郊において航空ショーを実施し、ここには西側を牽制するかのようにいくつもの新鋭戦闘機や爆撃機などが華々しく登場しました。アメリカの保有する強力な洋上戦力に対して長距離爆撃機や長距離空対艦ミサイルの開発を進めていることは明白でした。

これらの脅威に対して、アメリカ海軍は自らの生命線ともいえる空母艦隊を守る守護神たるFAD(Fleet Air defense=艦隊防空)戦闘機を艦上に配備する必要に迫られていました。

フルアフターバーナーで離艦しようとするF-14。エンジンや電子機器などを強化したF-14D。2001年(平成13年)7月28日。PHOTO USNAVY
フルアフターバーナーで離艦しようとするF-14。エンジンや電子機器などを強化したF-14D。2001年(平成13年)7月28日。PHOTO USNAVY

音速の壁を超えるF-14。PHOTO USNAVY
音速の壁を超えるF-14。PHOTO USNAVY

アメリカ海軍は1957年にF-8クルーセイダー、1961年にF-4ファイントムⅡという高性能艦上戦闘機を配備してはいましたが、ソ連も急速に新型戦闘機を開発しており、あらゆる艦隊防空を一手に担う新型艦上戦闘機の配備は喫緊の課題となっていました。

全天候型となったF-8D(F-8U-2N)。PHOTO USNAVY
全天候型となったF-8D(F-8U-2N)。PHOTO USNAVY

1952年(昭和27年)に創設されたアメリカ海軍、訓練飛行隊VF-101所属のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY
1952年(昭和27年)に創設されたアメリカ海軍、訓練飛行隊VF-101所属のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY

そんな状況の中、アメリカ海軍の進めていた新型機開発計画であるFAD(Fleet Air Defence )戦闘機計画が国防長官ロバート・マクナマラにより空軍のTFX(Tactical Fighter Experimental)に統合されてしまい、結局この計画によりうみだされたF-111Bは不採用となり、結果的に海軍の新型艦上戦闘機計画には遅れが生じていました。

アメリカ海軍空母CVA-43コーラル・シー艦上で試験中のF-111B。1968年7月。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母CVA-43コーラル・シー艦上で試験中のF-111B。1968年7月。PHOTO USNAVY

国防長官と空軍に押し付けられた統合機計画を都合よく回避できた海軍は早速、本来の艦隊防空戦闘機開発に着手します。1968年には各メーカーに対してアメリカ海軍は要求仕様を提示します。その内容は以下のようでした。

タンデム(直列)複座形式、TF30エンジン双発、AIM-54フェニックスまたはAIM-7スパロー6発、AIM-9サイドワインダー4発、20mmバルカン砲搭載、ミサイル搭載時の荷重制限がF-4ファントム2を上回ることなどが含まれていました。

1950年代のミサイル万能論による高性能なミサイルへの依存から昔ながらのドッグファイトを軽視し、F-4ファントムⅡなどは機関砲を装備から外してしまいました。

その結果、1960年に勃発したベトナム戦争において旧式のMiG-17やMiG-19やMiG-21などの高価な最新鋭ミサイルなどは装備せず軽快な飛行性能で勝負する北側の戦闘機に思わぬ苦戦を強いられることになりました。これらの北側戦闘機に対してアメリカの最新鋭戦闘機は2:1という撃墜:被撃墜比率となってしまいました。

大量の資金で開発した最新鋭の大型機を自信満々で参戦させ、2機撃墜するのに1機の損失を出していては話になりません。いくら最新鋭のミサイルを積んでいても当時のミサイル技術では最終的に敵の背後に回らずを得ず、低速での近距離格闘戦ではアメリカが軽視していた軽快な運動性能が問われることとなりました。

この反省から、F-14トムキャットの開発にあたっては当初から、ソ連の長距離爆撃機+長距離空対艦ミサイルへの対応と同時に、近距離の格闘戦をも制することのできる艦上戦闘機が企図されました。

高速、長距離ミサイル、低速、近距離格闘戦、艦上運用という難題をクリアすべく考えらたのが可変翼(VG翼)でした。開発メーカーは名門グラマン社に決まり、試作機が発注されました。試作機は1970年12月に完成し初飛行、1972年10月にはわずか2年足らずという驚くような速度で量産・部隊配備が始まりました。

F-14トムキャット最大の特長である可変翼(VG翼)は、これまでのものとは異なり、飛行データに基いて自動的に最適な後退角にセットされるものでした。これにより低速の戦闘や空母への着艦からマッハ2にもなる高速飛行や急旋回においても常に高い機動性を確保していました。

湾岸戦争中のオペレーションデザートストーム作戦において戦闘軽快警備するF-14A。戦時らしく、胴体下に中距離空対空ミサイルAIM-7スパローを4発、主翼付け根あたり(グラブ)に短距離空対空ミサイルAIM-9サイドワインダーを4発搭載しています。1991年(平成3年)2月26日。PHOTO DoD
湾岸戦争中のオペレーションデザートストーム作戦において戦闘軽快警備するF-14A。戦時らしく、胴体下に中距離空対空ミサイルAIM-7スパローを4発、主翼付け根あたり(グラブ)に短距離空対空ミサイルAIM-9サイドワインダーを4発搭載しています。1991年(平成3年)2月26日。PHOTO DoD

もう一つの大きな特長は当時世界最強であった射撃管制システム(FCS)です。F-14トムキャットに搭載されたヒューズ社のAN/APG-9レーダーは、探知距離200kmを誇り、同時に24もの目標を追尾でき、射程距離210km超の長距離空対空ミサイルAIM-54フェニックスを6発同時に個別誘導できるものでした。

こうした最新技術を詰め込んだ最強の艦隊防空戦闘機、F-14は東西冷戦の空を制し続けましたが、冷戦が終わり軍事費削減の流れが起こると、高価な維持費が問題となり、2006年最後の部隊から退役、艦上から姿を消しました。

横須賀を母港とするアメリカ海軍原子力空母ジョージ・ワシントン上空を飛ぶF-14B。1992年(平成4年)正月。PHOTO DoD
横須賀を母港とするアメリカ海軍原子力空母ジョージ・ワシントン上空を飛ぶF-14B。1992年(平成4年)正月。PHOTO DoD

アメリカ海軍空母エンタープライズ(CVN65)艦上のF-14。アフガニスタンにおける不朽の自由作戦に参加中です。艦上のF-14はVF-14及びVF-41飛行隊所属機ですが、どちらもこの作戦の後まもなくしてF/A-18ホーネットに改編されました。2001年(平成13年)11月9日。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母エンタープライズ(CVN65)艦上のF-14。アフガニスタンにおける不朽の自由作戦に参加中です。艦上のF-14はVF-14及びVF-41飛行隊所属機ですが、どちらもこの作戦の後まもなくしてF/A-18ホーネットに改編されました。2001年(平成13年)11月9日。PHOTO USNAVY
運用者アメリカ海軍
イラン空軍
主要なバリエーション-
生産数712
スペック型式-
全 幅10.15m(19.54m)
全 長19.1m
全 高9.88m
翼面積52.49㎡
自 重18,110kg
総重量/最大離陸重量33,720kg
発動機TF30-P-414A×2(5,600kg/AB9,480kg)
最大速度2,866km/h
実用上昇限度18,300m
戦闘行動半径1,167km
航続距離3,220km
乗 員2名
初飛行1970年12月21日
就 役1972年10月
退 役2006年9月
兵 装

ジェネラル・ダイナミクスF-111B

General Dynamics F-111B

F111の米海軍型

失敗した統合計画

※文頭写真:USNAVY

ジェネラル・ダイナミクスF-111アードバーク(1964-1998/2010)は、アメリカが開発・採用した世界初の実用可変翼戦闘機です。戦闘機とはいっても空中戦ではなく、爆撃をメインとする戦術爆撃戦闘機です。

当初、米海空軍の統合戦闘機として開発されF-111Aが空軍型、F-111Bが海軍型として進められました。最終的には重量超過などを理由に海軍が難色を示し、F-111B(海軍型)は計画のみに終わりました。

詳しくはF-111の項をご覧ください。

運用者-
主要なバリエーションF-111A 最初の量産型。158機製造
F-111B 米海軍型。計画のみ
F-111C オーストラリア空軍型
F-111D 電子機器(アビオニクス)、エンジンなど改修
F-111E エアインテイク改修型
F-111F 最終量産型。電子機器やエンジンを換装。1996年まで使用された。106機製造
F-111G 訓練機
F-111K イギリス空軍向け。キャンセル
EF-111A 電子戦機。F-111Aを改造
生産数7
スペック型式-
全 幅21.34m
全 長20.35m
全 高4.80m
翼面積-
自 重19,540kg
総重量/最大離陸重量30,450kg
発動機TF-30-P-1(5,220kg/AB 8,640kg)×2
最大速度3,062km/h
実用上昇限度18,288m
戦闘行動半径1,460km
航続距離4,700km
乗 員2名
初飛行1965年5月18日
就 役-
退 役-
兵 装

グラマンXF-10Fジャガー

Grumman XF-10F Jaguar
グラマンXF-10FジャガーGrumman XF-10F Jaguar

世界初の可変後退翼機

革新的な試みも失敗に終わる

グラマンXF10Fジャガー(1952-1953)は、米海軍が世界で初めて開発した可変後退翼を持つ艦上ジェット戦闘機です。

初期の艦上ジェット戦闘機開発は、航空母艦に離着艦するという大きな制約に立ち向かった歴史でもあります。ジェットエンジンを始め高速飛行に適した後退翼などの技術と、離着艦時に必要とされる低速性能の両立が困難であったためです。

1950年代後半に入ると、アングルド・デッキ(斜め着艦用飛行甲板)、スチーム・カタパルトなどの技術が開発され航空母艦が進歩します。これらの技術を既存空母に改修するとともに、フォレスタル級というスーパーキャリアー(超大型航空母艦)も就役し、艦上戦闘機開発の足かせは軽くなっていきます。本機はこの端境期に翻弄されます。

開発は、1946年からXF9Fとして開発されていた後退翼機案を進歩させ、1948年よりXF10F-1として始まりました。目玉は、高速性能と離着艦時に欠かせない低速性能の両立を目指した可変後退翼でした。可変後退翼とは、主翼が可変するということで、本機では13.5度、42.5度が選択できました。

開発中に朝鮮戦争が勃発し、1950年6月に米海軍が先行量産機を発注するなど開発が急がれていましたが、やはり実用化されたことのない可変後退翼の開発は難しく、いわくつきエンジンであったJ40も足を引っ張り、飛行試験はうまくいきません。

結局1953年には米海軍に契約をキャンセルされ、計画は終了しました。この計画は失敗に終わりましたが、艦上戦闘機の名門グラマン社は、転んでもただでは起きず!? 次に可変後退翼機を開発した際にはあの名機、グラマンF-14トムキャットを誕生させています。

運用者-
主要なバリエーション-
生産数-
スペック型式-
全 幅11.18m(15.42m)
全 長17.01m
全 高4.95m
翼面積43.38㎡
自 重9,265kg
総重量/最大離陸重量16,080kg
発動機J40-WE-6(3,084kg)
最大速度1,100km/h
実用上昇限度13,960m
戦闘行動半径1,150km
航続距離2,670km
乗 員1名
初飛行1952年5月1日
就 役-
退 役-
兵 装

マクドネルF-4ファントムⅡ

McDonnell F-4 PhantomⅡ
マクドネルF-4ファントムⅡMcDonnell F-4 PhantomⅡ

真打、登場

艦上機にして最強の多用途戦闘機

※文頭写真:USNAVY

米海軍のマクドネルF-4ファントムⅡ(1958-)は、約5,200機が生産された最強の多用途戦闘機です。大きな機体に強力なエンジンを2発載せ、艦上戦闘機でありながら当時米空軍が保有していた高性能戦闘機群(センチュリーシリーズ)各機体の得意分野を、F-4一機で上回ってしまう程に優秀な戦闘機でした。

艦上戦闘機というのは航空母艦において運用されますから、広い飛行場・基地で運用される空軍の陸上戦闘機に比べて数多くの制約を課せられます。このことから、第2次世界大戦末期から始まったジェット戦闘機の開発において米海軍は後塵を拝していました。

米海軍は、1955年に初飛行した傑作機、チャンス・ボートF-8クルーセイダーにおいてようやく空軍機に劣らない戦闘機を艦上に配備することができました。その3年後1958年に本機F-4ファントムⅡが初飛行し、その高性能ぶりから今度は逆に米空軍が米海軍の開発したF-4を採用します。米海軍はさぞ晴れやかな気分だったことでしょう。

1952年(昭和27年)に創設されたアメリカ海軍、訓練飛行隊VF-101所属のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY
1952年(昭和27年)に創設されたアメリカ海軍、訓練飛行隊VF-101所属のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY

米海軍がF-8、F-4と立て続けに傑作艦上戦闘機をうみだしていたこの時期、米海軍の航空母艦が大きな進歩を遂げていました。1955年、第2次世界大戦中に建造された排水量約30,000トンのエセックス級航空母艦にかわり、米海軍待望の超大型航空母艦、フォレスタル級が就役します。F-8はエセックス級でも運用可能でしたが、F-4はエセックス級では運用できませんでした。

この角度もファントムⅡはいい。名前といい形といいたまらない人にはたまらない、F-4ファントムⅡです。PHOTO USNAVY
この角度もファントムⅡはいい。名前といい形といいたまらない人にはたまらない、F-4ファントムⅡです。PHOTO USNAVY

フォレスタル級は、乗員約4,300名、60,000トンもの基準排水量を持ち、斜め着艦用飛行甲板(アングルド・デッキ)を採用、72機の艦上戦闘機を収容することができました。さらに、1954年以降は戦後就役したミッドウェイ級もアングルド・デッキ化されます。

アメリカの旗艦とも呼ばれたアメリカ海軍空母、USSコンステレーション艦上のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY
アメリカの旗艦とも呼ばれたアメリカ海軍空母、USSコンステレーション艦上のF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY

航空母艦と艦上戦闘機は共に進化するものです。登場した当時、見る者を驚かせたという大型艦上戦闘機F-4はこれら航空母艦の進化に歩を合わせるように誕生した傑作艦上戦闘機でした。

アメリカ海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルスのF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍曲技飛行隊ブルーエンジェルスのF-4ファントムⅡ。PHOTO USNAVY

防空能力においてはすでに運用されていた高性能機F-8クルーセイダーとF-4は同等でしたが、F-4は加えて対地攻撃にも秀でていました。F-8の離陸最大重量は13,000kgですが、F-4のそれは26,760kgもあります。それだけ多くの兵装を搭載することができるわけですから、艦上戦闘機において特に要求される多用途性が高まります。

アメリカのスミソニアン博物館に展示されるアメリカ海兵隊のF-PHOTO SMITHSONIAN NATIONAL AIR AND SPACE MUSEUM
アメリカのスミソニアン博物館に展示されるアメリカ海兵隊のF-PHOTO SMITHSONIAN NATIONAL AIR AND SPACE MUSEUM

速度記録、上昇記録など各種の世界記録を次々に更新したF-4の飛行性能は文句なく世界一であり、イギリス空軍が1964年に採用したのを始め、日本、スペイン、トルコ、エジプト、ギリシャなど各国に採用され、5,000機を超えるベストセラーとなりました。

アメリカ空軍のF-15と飛ぶ航空自衛隊のF-4EJ。1983年(昭和58年)夏の日米合同演習コープノース中の写真。PHOTO DoD
アメリカ空軍のF-15と飛ぶ航空自衛隊のF-4EJ。1983年(昭和58年)夏の日米合同演習コープノース中の写真。PHOTO DoD

世界を驚かせた高性能多用途艦上戦闘機、マクドネルF-4ファントムⅡは初飛行から半世紀以上を経たいまでも、数々の改修を受け世界の空を飛び回っています。

運用者アメリカ海軍
アメリカ空軍
アメリカ海兵隊
航空自衛隊
オーストラリア空軍
エジプト空軍
ドイツ空軍
イラン空軍
イスラエル空軍
スペイン空軍
トルコ空軍
イギリス空軍
韓国空軍
主要なバリエーションXF4H-1 試作機。2機製造
F4H-1F 追加の試作機。45機製造。後にF-4B
F4H-1 最初の量産型
F-4G アメリカ空軍の要求による敵防空網制圧機(SEAD/ワイルド・ヴィーゼル)。12機製造
YF-4G F-4Jの試作機
F-4J 海軍2次量産型。512機製造。ルックダウン能力などを加えた
F-4N F-4Bの改修機。227機改修
F-4S F-4Jの近代化改修型。構造強化
F-100A F-4Cの当初名
F-4C 空軍向け改修型。複操縦装置追加など
F-4D 空軍向けF-4Cの改修型。レーダー関連の性能向上など
EF-4D F-4Dを改修した防空網制圧機の試作型
F-4E F-4D改修型。エンジン換装、バルカン砲装備など
F-4G 空軍の敵防空網制圧機(SEAD)。F-4Eを改修
RF-4B 偵察機型。米海兵隊向けに46機が製造
RF-4C 偵察機型
RF-4E 偵察機型
F-4VG 可変翼改修型。計画のみ
生産数5,195
スペック型式-
全 幅11.7m
全 長17.78m
全 高4.95m
翼面積49.23㎡
自 重13,960kg
総重量/最大離陸重量26,760kg
発動機GE J79-GE-8B/8C/10×2(5,380kg/AB 8,120kg)
最大速度2,550km/h
実用上昇限度21,340m
戦闘行動半径960km
航続距離2,600km
乗 員2名
初飛行1958年5月27日
就 役1960年12月
退 役1992年1月
兵 装

ダグラスXF5Dスカイランサー

Douglas XF5D Skylancer
ダグラスXF5DスカイランサーDouglas XF5D Skylancer

F4Dの発展形

F-8が優秀すぎて採用されず

※文頭写真:USNAVY

米海軍初の実用超音速艦上戦闘機としてまずまずの成功を収めたダグラスF4Dスカイレイの発展型がダグラスXF5Dスカイランサーです。名称にXが残っているとおり、試作機のみで採用・配備されずにキャンセルされています。

F4Dは優秀な高速性能を有していたものの、全天候性に欠けていました。ダグラス社はF4Dに強力なレーダーとエリアルール(音速付近での飛行を安定させる設計手法。胴体をくびれさせる)をとりいれた発展型を米海軍に提案し、試作機と先行量産型19機の発注を得ました。

ダグラスF5Dスカイランサー。PHOTO USNAVY
ダグラスF5Dスカイランサー。PHOTO USNAVY

他にも尾翼の大型化、機体の大型化に伴う燃料搭載量の増大、AIM-7スパロー中距離空対空ミサイル運用能力の付与、電子機器の更新などにより、F5Dは飛行性能・戦闘能力ともに向上していました。

なかなかの高性能機ではありましたが、F-8クルーセイダーがあまりに高性能だったため、試作機2機と先行量産型2機が完成した時点で計画は中止となります。その後機体はNASAに送られ試験機となりました。

運用者-
主要なバリエーション-
生産数-
スペック型式-
全 幅10.2m
全 長16.4m
全 高4.5m
翼面積52㎡
自 重7,912kg
総重量/最大離陸重量12,733kg
発動機J57-P-8(4,627kg/AB 7258kg)
最大速度1,590km/h
実用上昇限度17,500m
戦闘行動半径2,148km
航続距離2,148km
乗 員1名
初飛行1956年4月21日
就 役-
退 役-
兵 装

チャンス・ボートF-8クルーセイダー

Chance Vought F-8 crusader
チャンス・ボートF-8クルーセイダーChance Vought F-8 crusader

初にして傑作

世界初の超音速艦上戦闘機

※文頭写真:全天候型となったF-8D(F-8U-2N)。PHOTO USNAVY

チャンス・ボートF-8クルーセイダーは米海軍の艦上戦闘機であり、世界ではじめての超音速艦上戦闘機です。狭く制約の多い艦上戦闘機でありながら、同時期の米空軍機を凌ぐ高性能機となり、高速性、運動性、信頼性、多用途性、整備性などどれをとっても傑作といっていいものでした。

F-8U-1T。1962年。PHOTO USNAVY
F-8U-1T。1962年。PHOTO USNAVY

空母という制約の多いプラットフォームでの運用を余儀なくされる海軍は、ジェット時代となっても空軍機に劣る性能の戦闘機を配備せざるを得ませんでしたが、F-8クルーセイダーにおいてやっと、空軍機と肩を並べる高性能機を艦上に配備できたのです。

アメリカ海軍空母サラトガ艦上のF-8A。F-8を最初に受領した第32戦闘飛行隊所属機。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍空母サラトガ艦上のF-8A。F-8を最初に受領した第32戦闘飛行隊所属機。PHOTO USNAVY

チャンス・ボート社が本機の前に開発したF7Uカットラス(1948年初飛行)は「根性なし(ガットレス)」という汚名を頂戴しました。しかしその7年後の1955年、本機を開発し、見事に雪辱したこととなります。

先進的過ぎたF7Uカットラス。PHOTO USNAVY
先進的過ぎたF7Uカットラス。PHOTO USNAVY

1957年から米海軍各部隊へと配備され、1965年までに生産された数は1,259機にも及びます。ベトナム戦争(1960-1975)では、MiG-17を中心とする敵機との空戦において8:1という、米空海軍全機種の中で最高のキルレシオ(撃墜対被撃墜比率)を達成しています。

トンキン湾上のアメリカ海軍窪タイコンデロガ艦上においてジニーロケット弾を装着されるF-8。PHOTO USNAVY
トンキン湾上のアメリカ海軍窪タイコンデロガ艦上においてジニーロケット弾を装着されるF-8。PHOTO USNAVY

1974年(昭和49年)5月25日、ソ連のツボレフTU-95ベアをインターセプトするF-8。PHOTO USNAVY
1974年(昭和49年)5月25日、ソ連のツボレフTU-95ベアをインターセプトするF-8。PHOTO USNAVY

米海軍では30年もの長きにわたって活躍し、1987年に退役。フランス海軍においては1999年まで使用されました。

本機はどうしてこれほどの高性能機となったのでしょうか。それにはいくつもの必然と大きな偶然があります。

F7Uカットラスの劣悪だった視界不良を反省したチャンス・ボート社は、必要以上といわれる程、良好な視界確保に気を配ります。まずコクピットを最前部に配置し、空気取入口を機首下部に配置します。

退役間近の1986年(昭和61年)11月1日、テキサス上空を飛行する偵察機型のRF-8G。PHOTO USNAVY
退役間近の1986年(昭和61年)11月1日、テキサス上空を飛行する偵察機型のRF-8G。PHOTO USNAVY

さらには、胴体上部に付けられた主翼を油圧による可動式とし、機首側を上に上げることで、着艦時の機首上げ角度を下げる工夫がなされています。これらの工夫により、離着艦という艦上戦闘機の最も危険な任務に対する高い能力を得、比較的旧式であったり小型である空母でも運用することができました。

兵器運用能力にも優れており、狭い艦上で運用され、多目的性能が求められていた艦上戦闘機としては使いやすかったといえます。

大きな偶然は、機首に突き出したコーンが偶然にもショックコーン(超音速において効率的に空気を取り入れる装置)の役割を果たし、元々大出力であったJ57-P-20A(8,164kg)エンジンの性能を最大限に引き出したのです。後にレーダー搭載のためにこのコーン部分が拡大されますが、更なるショックコーン能力増加となりました。

運用者アメリカ海軍
アメリカ海兵隊
フランス海軍
フィリピン空軍
主要なバリエーションXF8U-1 試作機
F-8A 最初の量産型。130機製造
F-8C エンジン換装など。187機製造
RF-8A 写真機搭載型
DF-8A 巡航ミサイルの空中誘導母機、20機製造
F-8D エンジン換装、射撃管制装置換装、空対空ミサイルAIM-9C対応。152機製造
F-8E レーダー換装など F-8E(FN) フランス海軍型。42機製造
F8U-3 エンジン換装ほか、胴体再設計の発展型。5機製造
RF-8G RF-8Aの改装型。73機
F-8H F-8Dを改装。89機 F-8J F-8E改装型。136機
F-8K F-8C改装型
F-8L F-8B改装型
V-1000 海外輸出型
F-8 SCW NASA試験機
F-8 DFBW NASA試験機
生産数1,259
スペック型式-
全 幅10.87m
全 長16.61m
全 高4.80m
翼面積34.8㎡
自 重7,956kg
総重量/最大離陸重量13,000kg
発動機J57-P-20A(8,164kg)×1
最大速度2,279km/h
実用上昇限度17,700m
戦闘行動半径730km
航続距離2,260km
乗 員1名
初飛行1955年3月25日
就 役1957年3月
退 役1987年3月
兵 装