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カール・ヴィンソン

カール・ヴィンソン

※文頭写真:2012年5月4日、太平洋を航行中のカール・ヴィンソン(CVN-70)。写真:米海軍

カール・ヴィンソン(CVN-70)は、アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦の第3番艦として昭和57年(1982年)に就役しました。ニミッツ級原子力空母は、世界で初めて量産された原子力空母の級であり、中でもそこに存在するだけで抑止力を発揮します。世界の形をつくっているといっても大げさではない桁外れの存在です。

発注は昭和49年(1974年)4月5日、昭和50年(1975年)10月11日に起工され、昭和55年(1980年)3月15日に進水、昭和57年(1982年)3月13日に就役、カリフォルニア州サンディエゴのコロナド海軍基地を母港としています。

建造はアメリカ、バージニア州のニューポート・ニューズ造船所で行われました。同造船所は、アメリカ国内最大の民間造船所であり、全長333mという大きさに加えて最新の技術を駆使したニミッツ級空母を建造可能な唯一の造船所です。

全体のサイズは満載排水量10万1,200t、全長333m、全幅76.8m、吃水12.5m、速力は30ノット+(時速56km以上)と他のニミッツ級空母と同等です。機関も同じくウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービンを4基搭載し、4軸推進により26万shp(194MW)を出力します。

アメリカは初の原子力空母となったエンタープライズ(CVN-65)を昭和32年(1957年)に発注、昭和36年(1961年)に就役し、平成24年(2012年)に退役して現在解体作業が行われています。

エンタープライズに次ぐ原子力空母となるニミッツ級のネームシップである第1番艦、ニミッツ(CVN-68)は昭和50年(1975年)に就役しました。その後平成21年(2009年)にジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が就役するまで34年間に渡り10隻が建造され、現在でもアメリカ海軍の主力として世界中に睨みをきかせています。

2013年2月15日、太平洋において精密着陸システム(PALS=Precision Approach Landing System)の検証を行うカール・ヴィンソン(CVN-70)。写真:米海軍
2013年2月15日、太平洋において精密着陸システム(PALS=Precision Approach Landing System)の検証を行うカール・ヴィンソン(CVN-70)。写真:米海軍
2013年2月15日、太平洋において精密着陸システム(PALS=Precision Approach Landing System)の検証を行うカール・ヴィンソン(CVN-70)。写真:米海軍
2013年2月15日、太平洋において精密着陸システム(PALS=Precision Approach Landing System)の検証を行うカール・ヴィンソン(CVN-70)。写真:米海軍

戦闘力

全長333m、全幅76.8m、満載排水量100,020t〜104,600t、乗員約5,000名という巨体が生み出す飛行甲板の面積は4.5エーカー(1.82ヘクタール)にもなります。ちなみに、戦艦大和は全長263m、全幅39m、満載排水量71,600tですから、その大きさがわかります。

空母の戦闘力は艦載される最大90機の航空機が担います。通常、戦闘機56機、ヘリコプター15機、概ね70機程度を搭載して運用されています。最新の戦闘機を50機以上搭載する攻撃力は、単純比較すれば、F-16を60機保有するノルウェー空軍に匹敵するものがあります。

2017年4月26日、フィリピン沖を通過するカール・ヴィンソン(CVN-70)と海上自衛隊のあたご型護衛艦「あしがら」(DDG-178)とむらさめ型護衛艦「さみだれ」(DD-106)。写真:米海軍
2017年4月26日、フィリピン沖を通過するカール・ヴィンソン(CVN-70)と海上自衛隊のあたご型護衛艦「あしがら」(DDG-178)とむらさめ型護衛艦「さみだれ」(DD-106)。写真:米海軍

さらに、ニミッツ級では燃料や武器・弾薬などの搭載量もそれまでの通常動力空母に比べて倍増しており、航空燃料約6,000t、航空機用の武器・弾薬約1,250tを搭載することができ、最大16日間という作戦行動を可能にしています。

カール・ヴィンソン(CVN-70)のフライトオペレーションルーム。2013年2月26日。写真:米海軍
カール・ヴィンソン(CVN-70)のフライトオペレーションルーム。2013年2月26日。写真:米海軍

艦載された戦闘機は、約94mの蒸気カタパルトにより、約2秒で時速265km程度まで加速されます。中国には一応空母が2隻あり、報道等にてスキージャンプのようなジャンプ台がついているのを見た方もいると思います。あれは、カタパルトの技術がないためのものです。

2013年2月25日、カール・ヴィンソン(CVN-70)から発艦する第122戦闘攻撃飛行隊のF/A-18F。写真:米海軍
2013年2月25日、カール・ヴィンソン(CVN-70)から発艦する第122戦闘攻撃飛行隊のF/A-18F。写真:米海軍

空母は1隻で行動することはなく、空母打撃群を率いて行動します。本ニミッツ級もしくはジェラルド・R・フォード級1隻、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦1隻、アーレイ・バーク級2隻、ロサンゼルス級もしくはバージニア級原子力潜水艦1隻という構成が基本です。1つの空母打撃群の総乗員は約7,000名にも及びます。米軍はこの空母打撃群を12個保持するとしています。

2017年3月28日、フィリピン沖を航行するカール・ヴィンソン(CVN-70)空母打撃群。写真:米海軍
2017年3月28日、フィリピン沖を航行するカール・ヴィンソン(CVN-70)空母打撃群。写真:米海軍

主なレーダー

対空レーダーは、AN/SPS-49A(V)1が搭載されています。AN/SPS-49はアメリカのレイセオン社が開発した2次元対空レーダーです。レイセオン社は世界第一位のミサイルメーカーとして知られています。

探知距離はレーダー反射断面積(RCS=Radar Cross Section)1平米の目標に対して460km、探知高度は46,000m、精度は56mです。1975年に配備されて以来、改良を重ねながら世界各国の軍艦に搭載されている実績ある対空レーダーです。

主要兵装

いかに強力な艦上戦闘機群を持っていても、ニミッツ級空母はロナルド・レーガン(CVN-76)の約5,400億円(45億ドルを1ドル120円で換算)やジョージ・H・W・ブッシュの約7,500億円(65億ドルを1ドル120円で換算)のように大変高額であり、存在自体が政治力を帯びていることもあり、撃沈されるということは現状ではあってはならないことです。

そのため、ニミッツ級空母が単独で行動することはなく、空母打撃群(CSG=Carrier Strike Group)という単位で行動し、艦上戦闘機を除いた兵装は控えめなものです。空母打撃群の構成については先述の通りです。

ニミッツ級の主な兵装はMk.29 ESSMランチャー×2、RIM-116×2、ファランクスCIWS×4(9〜10番艦を除く)となっています。

南カリフォルニアにおいて演習中のカール・ヴィンソン(CVN-70)から発射されるRIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイル。2016年11月2日。写真:米海軍
南カリフォルニアにおいて演習中のカール・ヴィンソン(CVN-70)から発射されるRIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイル。2016年11月2日。写真:米海軍

カール・ビンソン(CVN-70)の艦載機

アメリカ海軍の空母に艦載される航空機は、空母航空団(CVW=Carrier Air Wing)と名付けら編制されています。カール・ビンソン(CVN-70)に艦載されるのは第2空母航空団です。内訳は以下のとおり。

第2戦闘攻撃飛行隊(VFA-2)“バウンティ・ハンターズ”
使用機:F/A-18F

第137戦闘攻撃飛行隊(VFA-137)“ケストレルズ”
使用機:F/A-18E

第192戦闘攻撃飛行隊(VFA-192)“ゴールデン・ドラゴンズ”
使用機:F/A-18E

第34戦闘攻撃飛行隊(VFA-34)“ブルー・ブラスターズ”
使用機:F/A-18E

第136電子攻撃飛行隊(VAQ-136)“ガントレッツ”
使用機:EA-18G

第113早期警戒飛行隊(VAW-113)“ブラック・イーグルズ”
CARRIER AIRBONE EALRY WARNING SQUADRON 113 “BLACK EAGLES”
使用機:E2-C 2K

第4ヘリコプター海上作戦飛行隊(HSC-4)“ブラック・ナイツ”
使用機:MH-60S

第78ヘリコプター海洋攻撃飛行隊(HSM-78)“ブルー・ホークス”
使用機:MH-60R

カール・ヴィンソン(CVN-70)から発艦しようとする第34戦闘攻撃飛行隊のF/A-18Cホーネット。2017年4月10日。写真:米海軍
カール・ヴィンソン(CVN-70)から発艦しようとする第34戦闘攻撃飛行隊のF/A-18Cホーネット。2017年4月10日。写真:米海軍
運用者アメリカ海軍
主要なバリエーション
生産数
スペック型式
全 幅76.8m
全 長333m
全 高
翼面積
自 重
総重量/最大離陸重量
発動機ウェスティングハウスA4W原子炉×2、蒸気タービン×4(260,000shp)4軸
最大速度
実用上昇限度
戦闘行動半径
航続距離
乗 員約6,000名
初飛行
就 役1982年3月13日
退 役-
兵 装

かが(DDH-184)

かが(DDH-184)

かつての空母加賀がいずも型の2番艦として再び

海自4隻目のヘリ空母

※かが(DDH-184)の性能詳細については「いずも型」の記事をご覧ください。
※文頭写真は平成27年(2015年)8月27日、名命名進水式を迎えた「かが」(DDH-184)。写真:海上自衛隊

いずも型」護衛艦の2番艦。平成23年度より始まった23中期防(平成23年度中期防衛力整備計画)に基づき、平成24年度調達計画により、2013年(平成25年)10月7日に起工され、2015年(平成27年)8月27日に命名・進水しました。作戦能力獲得の後、2017年(平成29年)3月頃に就役の予定です。建造はジャパンマリンユナイテッド株式会社横浜事業所磯子工場、建造費用は1,155億円。

「かが」といえば、大日本帝国海軍の空母として、大東亜戦争前半において主力空母として活躍し、1942年(昭和17年)6月のミッドウェー海戦において沈没しました。1922年(大正11年)に決められたワシントン海軍軍縮条約により日本も戦艦保有が制限され、加賀型戦艦を改装した空母でした。

空母加賀は全長238.5m、全幅29.6m、基準排水量26,900t。海上自衛隊「いずも型」の2番艦「かが」(DDH-184)は、全長248m、全幅38m、基準排水量19,500tとなっています。1番艦の「いずも」(DDH-183)と同じく、航空機(ヘリ)運用、輸送・給油、司令部能力を備えた護衛艦隊の旗艦となる艦艇です。

多数のヘリを搭載することから、洋上における高い対潜水艦能力を持ち、現在のところ日米艦隊の唯一の大きな脅威ともいえる潜水艦対策に絶大な力を発揮します。乗員520名の他、450名の兵員等、重量約8.5tの73式大型トラック50台、護衛隊全体に給油できる燃料を搭載できます。

旗艦としての高い司令部能力は、洋上作戦の統合作戦能力を高めます。現代の最新艦船は大きなディスプレイを駆使した高度な情報処理システムを備えており、「いずも型」のかが(DDH-184)もまた、優れたハイテク艦となっています。

自衛隊はMOFシステム(Maritime Operation Force System)を運用しており、共通作戦状況図(COP)作成を重要目的としています。わかりやすくいうと、陸海空、日米双方の各部隊の配置や状況、敵勢力の位置や規模を集約したリアルタイム地図がいずも型かが(DDH-184)に裝備され、現代のネットワーク戦を有利に展開する司令部能力があるということです。

「かが」(DDH-184)自体の防衛能力は高性能20mm機関砲×2基、対艦ミサイル防御装置×2基、魚雷防御装置1式のみであり、同艦のみで行動すればすぐに沈められてしまいます。かがは護衛艦隊を構成して作戦行動を行い、能力を発揮します。

「かが」(DDH-184)。写真:海上自衛隊
「かが」(DDH-184)。写真:海上自衛隊

運用者海上自衛隊
主要なバリエーション
生産数
スペック型式
全 幅38m
全 長248m
全 高
翼面積
自 重
総重量/最大離陸重量
発動機COGAC方式/ゼネラル・エレクトリック(IHIライセンス生産)LM2500IEC型ガスタービンエンジン(28,000ps)×4
最大速度
実用上昇限度
戦闘行動半径
航続距離
乗 員470名(970名・便乗者含む)
初飛行
就 役2017年(予定)
退 役-
兵 装

いずも(DDH-183)

いずも(DDH-183)

日本の旗艦ともいえる存在

全長248mのヘリ空母「いずも型」の1番艦

※文頭写真:海上自衛隊
※いずも(DDH-183)の性能等については「いずも型」の記事をご覧ください。

「いずも」(DDH-183)は平成22年度(2010年度)裝備調達計画により2012年1月27に起工されました。造船はジャパンマリンユナイテッド株式会社横浜事業所磯子工場です。建造費用は1,139億円。民主党への政権交代に伴って、2009年末に予定されていた中期防衛計画策定が1年先送りされるという混乱にみまわれながらの計画実行となりました。

海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」(DDH-183)。写真:海上自衛隊
海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」(DDH-183)。写真:海上自衛隊

ちなみにこの時、F-35という自衛隊次期主力戦闘機の調達(7機)が民主党政権により削除され、話題となりました。海上自衛隊においては、「いずも」(DDH-183)にも搭載される掃海・輸送ヘリコプターMCH-101の調達(2機)のキャンセルや哨戒ヘリコプターSH-60Kの調達機数削減(5機から3機へ)など国防に支障をきたす事態となりました。

そんな危機を乗り越え、2012年1月の起工から1年半後経った2013年(平成25年)の夏、8月6日、ジャパンマリンユナイテッド株式会社横浜事業所磯子工場において「いずも」(DDH-183)の命名式及び進水式が行われました。全長248m、艦のほぼ上部前面を覆う全通甲板を備えた姿は「日本の空母」として国内外に大きく報道されました。

海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」(DDH-183)。写真:海上自衛隊
海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」(DDH-183)。写真:海上自衛隊

海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」(DDH-183)。写真:海上自衛隊
海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」(DDH-183)。写真:海上自衛隊

護衛艦には、天象、気象、山岳、河川、地方の名を付けることが通例となっています。命名については、海上自衛隊による説明を引用します。
「護衛艦は天象、気象、山岳、河川、地方の名を付与することが標準とされている。
「いずも」は、出雲国に由来し、山陰道に位置し、現在の島根県東部にあたる。別称は雲州。 古代史における政治・宗教の一大中心地をなしたところであり、国名の由来は雲が湧き上がる様子を表す語、あるいは稜威母(いずも)という、日本国母神「イザナミ」の尊厳への敬意を表す言葉からきた語など諸説がある。
旧海軍の艦名としては、明治33年竣工の装甲巡洋艦。日露戦争から太平洋戦争終戦まで海軍に在籍し、昭和22年に解体されるまで47年間にわたり国に貢献した功労艦であり、海上自衛隊のなかで最も大型の護衛艦として今後数十年にわたり国防の任にあたる艦名として相応しいことから候補名称として採用され、防衛大臣が決定した。」(海上自衛隊HPより)

進水式の後、作戦能力獲得のための訓練などを経て、2015年3月25日、神奈川県横須賀基地に配備され、第1護衛隊群第1護衛隊に配属されました。名実ともに、配備時点において日本の旗艦ともいえる存在となりました。

横須賀基地に停泊中の「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器
横須賀基地に停泊中の「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器

「いずも」(DDH−183)の配備に伴い、ヘリコプター搭載型である「ひゅうが型」護衛艦の1番艦「ひゅうが」(DDH-181)は舞鶴に配備され、横須賀を司令部とする第1護衛隊群第1護衛隊は2015年(平成27年)12月現在、以下の構成となりました。

第1護衛隊群第1護衛隊(司令部:横須賀)
「むらさめ」(DD-101) 4,550t、横須賀
「いかづち」(DD-107) 4,550t、横須賀
「はたかぜ」(DDG-171) 4,600t、横須賀
「いずも」(DDH-183) 19,500t、横須賀

第1護衛隊群には他に佐世保を司令部とする第5護衛隊があり、「こんごう」(DDG-173)、「あけぼの」(DD-108)、「ありあけ」(DD-109)、「あきづき」(DD-115)が所属しています。

横須賀基地に停泊中の「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器
横須賀基地に停泊中の「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器

ちなみに、DDH、DDGなどの表示は以下のような意味があります。
護衛艦(汎用護衛艦、対空/多目的護衛艦、対潜護衛艦など)=DD
ヘリコプター搭載護衛艦=DDH
ミサイル護衛艦=DDG

「いずも」就役を契機に考える

ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも型」の就役は、海上自衛隊が高性能艦を多数就役させてきた中でも、群を抜いて存在感がありました。

確かに世界の通例からいうとヘリ空母であり、それは大切なことなのですが、それとともに印象深い「いずも」という艦名から様々なことを考えさせられました。安倍政権が当たり前の主権国家に向かって歩みを始めた時期であることも影響していると思います。

出雲は国譲りの神話に登場する古代国家。譲った出雲の血統も、譲り受けた大和王権の天皇陛下も神話の時代から現在まで続いています。天皇家が王朝として万世一系に積み重ねた年月は2,600年超。恐らく人類史上、他に類を見ることはできません。

その長い長い歴史において、実は、日本が他国に戦争で負けたのは一度きり、第2次世界大戦のアメリカ戦のみです。敗戦から70年を経たいま、「いずも」(DDH-183)の就役を契機として、そろそろ前を向いて強靭な主権国家として再び歩んでいくべきだと改めて考えました。

話はそれますが、元寇の時、日本は台風(神風)のおかげで侵略軍を撤退したとよくいわれます。教科書でも重大な祖国の国難に日本の武士がどう戦ったか、詳しくは書いていなかったように思います。しかし、これはおかしな教育です。ある別媒体で原稿を書いた際、鎌倉幕府の公式記録『吾妻鏡』の関連記述を確認すると、日本の武士は主として自分たちの力で侵略軍を追い返していることがわかります。

なぜこんなことを書いたかというと、日本の空母型護衛艦には様々な思いがあったからです。2007年、海自初の空母型となった「ひゅうが」(DDH-181)が進水した時、恥ずかしながら「日本が空母を持つ」ということに何故か微妙な違和感を感じ、直後、我に返って恥じました。

ほんの少しの違和感ながら、戦後の歪んだ教育や報道が確実に自分の脳を蝕んでいることに悪寒がしたのです。これが契機となり、日本の歴史や安全保障を勉強し直し、努めて歪みを叩き出すようにしました。

横須賀基地に停泊中の「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器
横須賀基地に停泊中の「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器

6年を経た2013年、「いずも」(DDH-183)の進水・就役にあたり、今度は公正に、そして意義深く受け取ることができ、とても印象に残りました。

「いずも」(DDH-183)関連ニュース

◎米海兵隊「MV-22 オスプレイ」との発着艦訓練(平成28年7月22日)
「いずも」(DDH-183)は同日、九州西方海域(薩摩半島西方)において、突出した輸送能力を持つヘリコプター「MV-22 オスプレイ」(米海兵隊所属)との発着艦訓練を行ないました。「いずも」と「MV-22オスプレイ」の組み合わせは、輸送・上陸作戦能力を大幅に向上させますから、陸上自衛隊所属「オスプレイ」との共同訓練も進めてもらいたいものです。

運用者海上自衛隊
主要なバリエーション
生産数
スペック型式
全 幅38m
全 長248m
全 高
翼面積
自 重
総重量/最大離陸重量
発動機COGAC方式/ゼネラル・エレクトリック(IHIライセンス生産)LM2500IEC型ガスタービンエンジン(28,000ps)×4
最大速度
実用上昇限度
戦闘行動半径
航続距離
乗 員470名(970名・便乗者含む)
初飛行
就 役2015年3月25日
退 役-
兵 装

いずも型

いずも型

海自、戦後最大の艦艇級

全長248mのヘリコプター搭載型護衛艦

※文頭写真:海上自衛隊

「いずも型」は海上自衛隊の最新艦級にして戦後最大の護衛艦です。就役済の第1番艦「いずも」(DDH-183)と第2番艦「かが」(DDH-184)の2隻があります。全長248m、基準排水量19,500t、最大搭載航空機数14機、5か所のヘリコプター発着ポイントを有しています。造船はジャパン マリンユナイテッド株式会社。建造費用は約1隻1,140億円です。

これまでの護衛艦はイージスシステムにより制御されたミサイルや砲塔といった各種兵装を搭載していましたが、「いずも」は近接防衛ミサイルであるSee RAMを2基と20mm機関砲CIWS2基のみの兵装となっており、自身の防衛は専ら艦隊を組む他の艦に依存することとなります。これは、アメリカの原子力空母と似た運用です。

米海軍原子力空母ロナルド・レーガン(CVN-76、手前)と並走する「いずも」(DDH-183)。写真:海上自衛隊
米海軍原子力空母ロナルド・レーガン(CVN-76、手前)と並走する「いずも」(DDH-183)。写真:海上自衛隊
近接防御兵器システム「SeaRAM」。最大11発のミサイルを装填し、敵ミサイルを迎撃します。「いずも型」には2基搭載されています。写真:世界の兵器
近接防御兵器システム「SeaRAM」。最大11発のミサイルを装填し、敵ミサイルを迎撃します。「いずも型」には2基搭載されています。写真:世界の兵器
近接防御兵器システム「Phalanx CIWS」。「いずも型」には2基搭載されています。写真:世界の兵器
近接防御兵器システム「Phalanx CIWS」。「いずも型」には2基搭載されています。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)の艦橋。正面に四角っぽい簡易FCS-3レーダーがみえています。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)の艦橋。正面に四角っぽい簡易FCS-3レーダーがみえています。写真:世界の兵器

いずも(DDH-183)は海上自衛隊第1護衛隊群(神奈川県横須賀市)に所属し、かが(DDH-184)は2015年8月27に進水、2017年の就役を予定しています。

これまでの護衛艦とどう違うか? どのような場面で活躍するのか?

これまでの護衛艦との違いを挙げるとおおまかに4つあります。

〈1〉ヘリ空母型、全通甲板、戦後最大
〈2〉指揮管制・情報処理能力
〈3〉輸送・給油能力
〈4〉病院船能力

横須賀基地に停泊する「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器
横須賀基地に停泊する「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器
横須賀基地に停泊する「いずも」(DDH-183)と奥にみえる護衛艦隊。写真:世界の兵器
横須賀基地に停泊する「いずも」(DDH-183)と奥にみえる護衛艦隊。写真:世界の兵器
横須賀基地に停泊する「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器
横須賀基地に停泊する「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)の母港である横須賀基地。左手が海上自衛隊、右手が米海軍です。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)の母港である横須賀基地。左手が海上自衛隊、右手が米海軍です。写真:世界の兵器

〈1〉ヘリ空母型、全通甲板、戦後最大

外観上すぐにわかる大きな違いは全長248m、全幅38m、排水量19,500tという巨体と艦上を覆う全通甲板です。太平洋戦争時、大日本帝国海軍が造った戦艦大和・武蔵(全長261m)や、大東亜戦争初期に空母機動部隊の旗艦として活躍した空母「赤城」(全長260m)に迫る大きさです。最大速度は海自の他護衛艦にあわせ30ノットとなっており、他国の同類艦と比較し高速といえます。

横須賀基地に停泊する「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器
横須賀基地に停泊する「いずも」(DDH-183)。写真:世界の兵器

ヘリコプターを最大14機搭載し、5か所のヘリコプター発着ポイントを持っています。これだけ多くの航空機を運用できる艦船は戦後の日本においては初めてです。また、航空機を昇降するためのサイドエレベーターがこれも戦後初めて裝備され、整備作業の中断なくヘリの出し入れが可能になっています。

「いずも」(DDH-183)の甲板。実際に立ってみると全長245mの甲板は想像以上に大きいです。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)の甲板。実際に立ってみると全長245mの甲板は想像以上に大きいです。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)のエレベータ。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)のエレベータ。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)のエレベータ。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)のエレベータ。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)のデッキサイド式後部エレベータ。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)のデッキサイド式後部エレベータ。写真:世界の兵器

固定翼戦闘機の運用について言及されることがありますが、それについては後ほど述べます。

ヘリコプターというのは潜水艦の天敵といってもいい存在です。ヘリコプターは空中に停止(ホバリング)し、吊下式聴音器やソノブイ(吊下式ソナー内蔵の無線浮標)によりじっくり海中を探索、魚雷により攻撃します。潜水艦を見つけることができなければ、海上の艦船はあっけなく沈められてしまうため、ヘリコプターは大変有効な対潜水艦兵器であり、米海軍でも護衛艦にヘリ運用能力を付与することが増えています。

日米は世界の海軍力トップ2であり、日米同盟が発揮する海軍力は世界のどの国も全く太刀打ちできるものではありません。しかし、それだけの力の差があっても、潜水艦だけは唯一の脅威です。日本には、世界最先端の「そうりゅう型」潜水艦がありますが、潜水艦を潜水艦で攻撃する場合、速度の関係からどうしても展開力が落ちます。だから、ヘリは重要な存在なのです。

ヘリコプターは潜水艦に強いのですが、いかんせん航続距離が短いという難点があります。SH-60Jは580km、SH-60Kは800kmであり、ホバリング(空中停止)しながらディッピングソナーやソノブイという潜水艦探索装置を海中に吊り下げて使用するため、さらに航続距離は短くなりますから、洋上での運用には母艦が必須となってきます。

日米同盟を基本にした安全保障体制をとる日本には、米海軍がアメリカ本土以外に唯一原子力空母の母港としている横須賀基地があります。(もう一隻原子力空母を増やすという情報があります。)

有事の際には横須賀から原子力空母が出撃することになりますが、その際、潜水艦は通常戦力では唯一の大きな脅威となるため、対潜・掃海は海上自衛隊において重要な任務です。

いずも型に搭載されるヘリコプターは主に以下の機種です。

いずも型は最大で14機のヘリコプターを搭載できますが、通常は対潜哨戒ヘリSH-60J/Kを7機、掃海・輸送ヘリMCH-101を2機(最大では14機程度)というのが定数となります。いずれは作戦能力を獲得したCV-22オスプレイも艦上に加わる可能性があります。

〈SH-60J〉
海上自衛隊護衛艦の主任務となる敵潜水艦との戦闘においては、搭載するSH-60J/Kヘリコプターが大きな力を発揮します。

SH-60Jはアメリカのシコルスキー・エアクラフト社が開発しアメリカ海軍が採用したSH-60Bの対潜能力をより強化した日本仕様。三菱重工がライセンス生産しました。

主に対潜哨戒、敵ミサイルや航空機の探知などを行ない、捜索救難、輸送、機雷除去、通信中継など多用途に活躍します。高性能なレーダーやソナー、カメラ、逆探知装置、Mk46短魚雷を備えており、レーダーの画像は護衛艦でも同時に見ることができます。護衛艦の索敵能力を飛躍的に高めることができ、データリンクにより護衛艦のシステムと直結し、HS(ヘリコプターシステム)とも呼ばれます。

〈SH-60K〉
SH-60Kは、SH-60Jを基に防衛庁と三菱重工が独自に能力向上を行ったヘリコプターです。2001年に初飛行し、現在でも調達・配備が続いています。機体形状、エンジン、ローターなど主要部分の変更、戦術情報処理表示装置を備えるなど、ほぼ新型機といってもいい程の改良がなされました。

レーダーやソナーが強化され、SH-60JではMk46短魚雷と機銃のみだった武装は、97式短魚雷、AGM-114M ヘルファイアⅡ 対艦ミサイル、対潜爆弾などが加わり、より攻撃力が強化されています。コクピットもディスプレイが並ぶグラスコクピットとなり、より高度な情報処理を可能にしています。「いずも型」の高度な情報処理能力とあわせ、強力なネットワーク戦力を発揮します。

SH-60K。写真:海上自衛隊
SH-60K。写真:海上自衛隊
「いずも」(DDH-183)の主要搭載機であるSH-60K。最新のコクピットにはディスプレイが並んでいます。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)の主要搭載機であるSH-60K。最新のコクピットにはディスプレイが並んでいます。写真:世界の兵器

〈CV-22オスプレイ〉
いずも型は自衛隊が導入を予定している新型輸送機オスプレイも着艦可能となっています。
防衛省では2013年度予算案に輸送機であるオスプレイ調査費が計上され、2015年度には陸上自衛隊に17機が配備される予定です。

オスプレイは主翼にある2基の可動式プロペラにより、ヘリコプターとプロペラ機の能力を併せ持ち、ヘリコプターのような運用のしやすさ、プロペラ機の速度(時速約509km)と長い航続距離(約3,900km)を発揮します。この形状はティルトローターといわれます。輸送力は人員約25名です。自衛隊では災害救援や輸送、そして、離島防衛を念頭に配備が予定されています。

安全性が危惧されていますが、事故率は他の機体とくらべて特段に高いということはなく、事故の原因もこの画期的なティルトローター形式によるものではないようです。それより気になるのは陸自17機の予算額3,600億円です。これは高い。

〈MCH-101〉
ウェストランド社(英)とアグスタ社(伊)が共同開発した大型の汎用ヘリコプター、アグスタウェストランドAW-101を海上自衛隊が掃海・輸送ヘリコプターMCH-101として採用したもの。川崎重工業によりライセンス生産され、海上自衛隊へは2003年から2012年にかけて6機が納品されています。

AW101は元々アメリカ海軍が採用したシコルスキーS-61シーキングという対潜ヘリの後継として開発されたことから、大量の機材運搬能力、長大な航続距離を持ち、ローターと尾部に折りたたみ機構により艦載機運用を可能にしています。

〈2〉指揮管制・情報処理能力

「いずも型」は洋上の司令部となることができる高度な指揮管制能力を備え、離島防衛作戦や有事、大規模災害の際には内部の多目的区画に100名程度を収容する統合司令室を設置することができます。

現代の戦闘は、特に日米のように最新鋭の兵器が揃う軍事組織においては、兵器や基地をネットワーク化した高度なネットワーク戦が遂行されます。

いずも型の司令部には大きなディスプレイが並び、ネットワーク化された日米の情報が集約されます。航空自衛隊のF-2や次期主力戦闘機F-35などの新しい戦闘機や陸上自衛隊の最新戦車10式などにも、ディスプレイが備えられています。

自衛隊は陸海空ともに、統合作戦能力の強化に努めています。これは、特にハイテク兵器のネットワーク化が生み出す高い作戦遂行能力を中心とした強化です。日本独自のネットワークだけでなく、アメリカを中心とした自由諸国はアメリカが運用するリンク16というネットワークを活用しており、強力な情報体制を敷いています。

例えば、1機の早期警戒機が海上の敵戦闘機を発見した場合、ネットワークに繋がった陸海空すべての戦力に情報が共有され、司令部となった「いずも型」が、近くの味方兵器(例えば戦闘機)に攻撃命令を行ないます。

すると、戦闘機は共有された敵機の情報をインプットし、最新の撃ちっぱなしミサイルを発射。即座にその場を退避するという一方的な戦い方ができます。戦闘機が自身のレーダーを照射することなく攻撃するということは、敵機にレーダーを逆探知されることもありませんから、一方的に相手を撃破することができます。

〈3〉輸送・給油能力

「いずも型」はその巨体を活かした大きな輸送能力を持っており、乗員の他に500名の兵員や陸自の73式大型トラック50両を搭載可能。さらに護衛隊群(護衛艦隊)全体に補給できる程の燃料や水を搭載することができますから、洋上作戦の中核をなす母艦といえます。他国に侵略されている竹島や北方領土から侵略軍を追い出す、他国による犯罪行為である拉致の被害者を救出するといった個別的自衛権発動の際にも重要な役割を担うでしょうし、災害時には代えがたい大きな存在となるでしょう。

「いずも」(DDH-183)の艦内。写真:世界の兵器
「いずも」(DDH-183)の艦内。写真:世界の兵器

〈4〉病院船能力

「いずも型」は35床の入院設備を有する病院船としての機能を備えています。戦時の負傷者の治療はもとより、災害時にも力を発揮するでしょう。ただし、純粋に病院船としては活動できません。国際法上、病院船として活動するには、船体を白に塗装し、兵器は艦内秩序維持のための最小限のものにする、また夜間は電飾するなど様々な決まりがあるため、戦闘艦である「いずも型」では不可能です。

「いずも型」と似た他国の軍艦

〈米海軍/揚陸指揮艦ブルー・リッジ〉

「いずも型」は大雑把にアメリカの軍艦にあてはめると、横須賀を母港とする揚陸指揮艦ブルー・リッジ(LCC-19)の指揮能力と、ワスプ級強襲揚陸艦の輸送展開能力を総合して差し引きしたようなイメージです。

日本の横須賀を母港とするアメリカ最大、ということはもちろん世界最大の第7艦隊旗艦であるブルー・リッジ(LCC-19)は、最新のコンピュータや通信施設を積んだ最新鋭指揮艦です。洋上の司令部であるとともに、その名のとおり強襲揚陸する車両や人員を搭載することができます。

全長193.2m、全幅32.9m、全体の形状はいずも型に似ており、甲板は、揚陸指揮艦として最も重要な通信能力発揮のため、電波干渉を起きにくくする目的で平板になっています。1970年に就役し、ベトナム戦争にも参加した古い艦ですが、コンピュータや通信設備は最新のものに更新されています。神奈川県の横須賀を母港としており、周辺の道々や公園などからみることができます。

〈米海軍/アメリカ級強襲揚陸艦〉
この級は現在「アメリカ」(LHA-6)のみが就役し、今後12番艦まで建造される予定です。その名の通り、敵地に強襲揚陸する戦闘艦であり、約1,000名の乗組員の他に約1,700名の海兵隊員、垂直離着陸戦闘機、大型輸送ヘリ、攻撃ヘリ、エアクッション型揚陸艇(LCAC、3番艦以降)などを搭載し、敵地に乗り込むという攻撃的任務を遂行します。

正規空母のような航空機運用能力に加えて、エアクッション型揚陸艇(LCAC、3番艦以降)も運用するこの艦は、全長257.3m、全幅32.3m、満載排水量45,570tと大型になっています。3番艦以降は搭載運用兵器の増加によりさらに大型化する予定です。

〈スペイン海軍/ファン・カルロス1世〉
スペイン海軍の強襲揚陸艦。2013年に軽空母プリンシペ・デ・アストゥリアスが退役したため、同軍唯一の空母能力を有した艦となりました。全長は230.82m、満載排水量24,660t(軽空母運用)/27,082t(揚陸艦運用)、全幅32m、最大速度21ノット。ヘリコプター12機、垂直離陸戦闘機10機の他、上陸用舟艇を搭載でき、500名を超える要員の他に地上部隊を900名以上運ぶことができます。航空機運用をせずに輸送揚陸だけで運用した場合にはレオポルド2主力戦車を46両収容できます。また、集中治療室を備えるなど医療機能も充実しています。

〈韓国海軍/独島級揚陸艦〉
独島級揚陸艦「独島」は2007年に就役した韓国海軍最大の艦艇。他国の領土を勝手に艦名にするという不可思議で挑発的な行為が話題になりました。全長199m、全幅31m、基準排水量14,300t、最大速力23ノット(巡航18ノット)、全通甲板を有しています。大きさや形状、機能は「いずも型」よりも「ひゅうが型」に似ています。

就役当時はアジア最大との触れ込みで、輸送艦だがいずれ軽空母として運用できるなどと韓国人の自尊心を満たしていました。しかし、就役から8年経った現在でもまともに運用されたことはありません。

近接防御用の機関砲は自艦を撃ってしまう位置に誤配置され(冗談のようですが実話です)、国産を目指した搭載ヘリコプターが開発できず艦上は空っぽ。エンジンは出力不足でひゅうが型の3.5分の1の馬力しかありません。さらには、レーダーは虚偽標的(ゴースト)が表示されるという致命的な欠陥を改良しないまま就役しています。

2014年9月に行われた軍の記念イベントでは、現地に向けて航行中に発電機が発火して動力を失い、「漂流」するという軍艦としては聞いたことがない事態となりました。

これらは、報道により日本の一般市民である筆者が知りうる限りですから、実態はさらに多くの不具合を抱えていると想像されます。

詳しくは独島級揚陸艦の項をご覧ください。

固定翼戦闘機の搭載について

一部報道では、垂直離着陸型の戦闘機を運用できるというような内容がみられます。技術的には可能ですが、あまり現実的とはいえません。

現在日本が直面している主な問題は、領土・領海侵犯、拉致です。具体的にはロシアが不法占拠している北方領土、韓国が不法占拠している島根県の竹島、中国が海底から日本の資源を盗掘している東シナ海、北朝鮮による国家犯罪、日本国民拉致ということになります。さらには、国連が1970年に石油埋蔵を発表してから突如として中国が自国領土だと主張し始めた尖閣諸島が加わります。

いずれも、他国が日本の主権・領土を侵犯している、またはしようとしているものであって、日本が国家であればどのような手段を使ってでも完全に解決しなくてはいけません。侵略者を国土から撤退させ、拉致被害者は救出し、盗掘を止めさせるということです。

そのためには、まずは国家間の外交交渉ということになります。日本の非は皆無ですが、ただ返しなさいと正当性を主張するだけで侵略者や犯罪者が、はいどうぞと応じるわけがありません。日本の当たり前の主張に話し合いで応じられないのなら、拉致被害者の救出に自衛隊が出動するというように、実力行使を行うという当然の流れがなければ解決しません。それがあって初めて話し合いは成立し、問題は解決に向かいます。

自衛隊は上記のような領土・領海侵犯、拉致、盗掘を実力行使により解決する軍事力を備える必要があります。固定翼のいわゆる戦闘機を載せる空母を運用するのは、本土から離れた場所において作戦活動をするためであって、日本が抱える上記の侵犯・拉致は比較的近い場所で発生しています。

例えば、北朝鮮の平壌から新潟までは約1,160km、北海道の千歳から択捉島までは約550kmです。空自のF-2やF-15の航続距離は約3,500km程度です。これならば作戦内容により空中給油を活用した方が、正規空母を運用するよりもずっと効率的です。米軍のように他国において軍事力を発揮する必要があれば正規空母は絶大な威力を発揮しますが、日本の場合は、当面個別的自衛権の範囲ですから、事情が異なるのです。

したがって、島嶼防衛及び奪回、拉致被害者救出となると、制空権は日本各地の基地にある日米戦闘機が誇る世界最強の空軍力が担い、「いずも型」は航空機としてはヘリコプターを搭載し潜水艦の脅威を排除しつつ、車両や兵員を輸送し、護衛艦隊旗艦として高い司令部機能を持っていた方がよいということになります。

日本が戦闘機を運用する正規空母を活用してアジアの平和と民主主義を守るという責任を具体的に担う将来が訪れれば、その時は空母が必要でしょう。改修を実施して「いずも型」において垂直離着陸の戦闘機を運用することは技術的には充分可能ですが、いまのところ、5兆円弱という限られた予算を他のことに割いたほうがよいと思われます。

運用者海上自衛隊
主要なバリエーション
生産数
スペック型式
全 幅38m
全 長248m
全 高
翼面積
自 重
総重量/最大離陸重量
発動機COGAC方式/ゼネラル・エレクトリック(IHIライセンス生産)LM2500IEC型ガスタービンエンジン(28,000ps)×4
最大速度
実用上昇限度
戦闘行動半径
航続距離
乗 員470名(970名・便乗者含む)
初飛行
就 役2015年-
退 役
兵 装

ジョージ・ワシントン

George Washington(CVN-73)
ジョージ・ワシントンGeorge Washington(CVN-73)

アメリカ海軍原子力空母ニミッツ級の第6番艦

キティ・ホークの後継艦として横須賀に配備

ジョージ・ワシントン(CVN-73)は、アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦の第6番艦として1995年に就役しました。ニミッツ級原子力空母は、世界で初めて量産された原子力空母の級であり、世界最強アメリカ海軍の中でもそこに存在するだけで抑止力を発揮する、桁外れの存在です。

ジョージ・ワシントン(CVN-73)は、横須賀基地を事実上の母港としていたことで知られています。2008年、それまで配備されていた通常動力艦のキティ・ホーク(CVA-63)に替わり横須賀に配備され、日本に配備される初めての原子力空母となりました。

原子力空母の配備とあって国会を初め日本全体で物議を醸しました。当時、横須賀の米軍基地前では毎日のように原子力空母反対を主張する団体や横断幕をみかけました。国会でも2006年(平成18年)第180回国会における共産党志位議員による「原子力空母の横須賀母港をやめることに関する請願」の提出など議論がなされました。

結果的にはこれらの反対運動が功を奏すことはなく、直前に起こった艦内火災により延期されたものの、2008年に無事に横須賀に入港しました。

現在、アメリカ海軍空母はすべて原子力空母となっており、原子力空母を拒否するならば、アメリカ空母打撃群の配備が受けられない状況になります。安全保障は待ったなしですから、アメリカの空母に頼らないということであれば、同時的に代替する具体的対策、もしくは空母不要でも国益を損なわないという確固とした保証が必要でしょう。

ちなみに、2011年度(平成23年度)の航空自衛隊緊急発進(スクランブル)は約425回、その大くはロシアや中国の爆撃機や偵察目的の航空機です。稀に武装した戦闘機である場合もあるといいます。日本は世界でもかなりきな臭い北東アジアに位置しているのです。

なぜ日本(横須賀)はアメリカ国外で唯一の空母の母港なのか?

退役したキティ・ホーク(CVA-63)などを含めてアメリカの超大型空母(スーパー・キャリアー)のアメリカ国外唯一の母港は日本の横須賀です。グアムやフィリピンなどはアメリカ空母の母港となることを希望、もしくは誘致していますがアメリカは横須賀を譲りません。

横須賀がアメリカ海軍空母の母港となり、ミッドウェイ(CV-41)が入港したのは昭和48年、1973年のことです。それに先立つ1971年(昭和46年)に日本政府はアメリカからの空母母港の申し入れを受け入れています。

これは、船員の家族を海外に居住させるOFRP(Oversea Family Residency Program)計画に基いて行われており、これはマスコミが使う「事実上の母港」ではなくはっきりと「母港」といえるものです。

英語が苦手でアメリカ人とはまったく気質の異なる日本と比べれば、元々基地があって英語も通じ、気質や食べ物もあいそうなフィリピンの方がよさそうにみえます。実際横須賀米軍基地関係者もフィリピン系の米兵が多いといいます。

それでもアメリカが日本に母港としての受け入れを申し入れたのは、超大型空母と搭載される戦闘機、随伴する護衛艦などの空母打撃群すべてを整備・維持できる技術のある場所は、西太平洋、東南アジア地域においては日本しかないからです。

アメリカ海軍の超大型空母ニミッツ級10隻のうち、常時3分の2は整備や改修を受けていることからも空母の維持整備や改修の重要性がわかります。

また、日本にはアメリカ5軍すべての基地が揃っており、空母不在時でも空軍戦闘機を増やすなど柔軟な対応が可能です。

空母には艦載機の搭載兵器や修理能力、船員の生活に関する設備、有事の作戦司令部能力などあらゆるものが揃っており、空母を中核とした艦隊、空母打撃群はその作戦行動力において小国に匹敵します。

艦船、艦載機の維持管理だけでなく船員の家族の生活を含めて、超大型空母であるニミッツ級の母港となるということは、最新装備を持つ小国一国を維持する技術と国力が要求されるということであり、それが可能なのは西太平洋及び東南アジアには横須賀しかないということです。

また、第7艦隊旗艦であるブルー・リッジ級揚陸指揮艦ブルー・リッジ(LCC-19)の母港となっていることは戦略上大きな意味をなしていますが、こちらは同艦の項にて。

こうしたことから、1973年にはミッドウェイ(CV-41)が入港し、続いて1991年にはインディペンデンス(CV-62)、1998年にはキティ・ホーク(CVA-63)、2008年ジョージ・ワシントン(CVN-73)、そして2015年にはロナルド・レーガン(CVN-76)が配備されることとなっています。

横須賀に配備されている空母打撃群

空母の母港となるということは、空母を中心とした空母打撃群の母港となるということです。1隻5,400億円もする空母が単独で行動することはなく、護衛艦や補給艦を伴って行動し、この艦隊を空母打撃群と呼びます。

次の横須賀配備空母の陣容は不明なので、2015年春まで配備されていたジョージ・ワシントン(CVN-73)を中心とした第5空母打撃群を列挙します。

ニミッツ級航空母艦「ジョージ・ワシントン(CVN-73)」
タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「アンティータム(CG-54)」
タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦「シャイロー(CG-67)」
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「カーティス・ウィルバー( DDG-54)」
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ジョン・S・マケイン(DDG-56)」
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「フィッツジェラルド( DDG-62)」
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ステザム(DDG-63)」
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「ラッセン( DDG-82)
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「マクキャンベル(DDG-85)」
アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦「マスティン(DDG-89)」

他にも、第7艦隊潜水艦部隊 、ブルー・リッジ級揚陸指揮艦「ブルー・リッジ」( LCC-19)などが横須賀を母港としています。

ニミッツ級の6番艦として建造

発注は1988年6月30日、1991年3月13日に起工され、1993年11月11日に進水、1995年12月9日に就役。母港はアメリカ、ワシントン州ブレマートンです。

建造はアメリカ、バージニア州のニューポート・ニューズ造船所で行われました。同造船所は、アメリカ国内最大の民間造船所であり、全長333mという大きさに加えて最新の技術を駆使したニミッツ級空母を建造可能な唯一の造船所です。

全体のサイズは満載排水量103,300t、全長333m、全幅76.8m、吃水12.5m、速力30ノット+とこれまでのニミッツ級空母と同等です。機関も同じくウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービンを4基搭載し、4軸推進により26万shp(194MW)を出力します。建造費は45億ドル(約5,400億円/1ドル120円で換算)となっており、実験的要素もある第10番艦のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)の62億ドル(同約7,500億円)と比べると2,100億円程お安くなっています。

2010年頃、ジョージ・ワシントン(CVN-73)艦内を見学させてもらったことがあります。3,600名もの船員が乗る艦内は狭い道が張り巡らされ、艦内地図をみなければ自分がどこにいるのかまったくわかりません。甲板は運動場のように広く、格納庫内は体育館がいくつもあるかのようです。食堂は階級ごとにいくつかに分かれており、上官用の食堂はなかなかのレストランという雰囲気。甲板から艦内までどこも清掃が行き届いていました。

ニミッツ級空母

ジョージ・ワシントン(CVN-73)が6番艦となるアメリカ海軍のニミッツ級は世界最大となる軍艦の級であり、世界で初めて量産された原子力空母の級でもあります。

アメリカは原子力空母を1950年頃から計画しており、初の原子力空母となったエンタープライズ(CVN-65)は1957年に発注され、1961年に就役、2012年に退役して現在解体作業が行われています。

エンタープライズに次ぐ原子力空母となるニミッツ級のネームシップである第1番艦、ニミッツ(CVN-68)は1967年に発注され、1972年に進水、1975年に就役しました。その後2009年にジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が就役するまで34年間に渡り10隻が建造され、アメリカ海軍の主力として世界中に睨みをきかせています。ニミッツ級の耐用年数は45年〜50年といわれていますから、第10番艦のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が退役する2060年頃まで第一線で活躍することとなります。

ニミッツ級の各部

船殻(せんこく=機関などを除く、船の骨格と外部を形成する構造主体)の特徴としては、まず第一にその大きさでしょうか。全長333m、全幅76.8m、満載排水量100,020t〜103,300tという巨体です。飛行甲板の面積は4.5エーカー(1.82ヘクタール)にもなります。ちなみに、戦艦大和は全長263m、全幅39m、満載排水量71,600tですから、その大きさがわかります。

空母の力となる艦載機数は最大90機ですが、艦上戦闘機56機、ヘリコプター15機、概ね70機程度を搭載して運用されています。最新の戦闘機を50機以上搭載する攻撃力は、例えばF-16を60機保有するノルウェー空軍に匹敵するものがあります。

そして、ニミッツ級では、これら艦載機が使用する燃料や武器・弾薬などの搭載量はそれまでの通常動力空母に比べて倍増しており、航空燃料約6,000t、航空機用の武器・弾薬約1,250tを搭載することができます。この搭載量のおかげで最大16日間という作戦行動を可能にしています。

近代空母の代名詞的な飛行甲板であるアングルド・デッキ、電波環境を良くするため後方に配置されたレーダーだらけの艦橋、船首吃水下にある赤い突起(バルバス・バウ)などが印象的です。

アングルド・デッキとは中心線から左舷側に8度以上(本艦の場合は9度4分)開いた着艦用の滑走帯のことです。飛行甲板が昔の空母のように直線のみによって構成されるのではなく、直線の他に斜めに滑走路があります。

アングルド・デッキは空母を変えた画期的な発明です。直線式飛行甲板の場合、前方に飛行機が駐機していると着艦に失敗した場合に接触事故を起こす他、オペレーションを阻害してしまいます。これに対して、アングルド・デッキは斜めに開いた着艦専用甲板を設けることにより、発艦・着艦のオペレーションを劇的に向上させました。

バルバス・バウは、船首吃水下につけられた赤い大きな突起。水をかき分けて進む際に生じる波の抵抗を打ち消すためのものです。

動力機関は、ウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービン4基を4軸により配し、26万馬力を出力します。エンタープライズでは4基であった原子炉は、技術の進歩により半分の2基となり、より効率的な艦内設計を可能にしています。

蒸気タービンは最高出力付近において最も効率良くなるため、全タービンを稼働して出力を調整するのではなく、4軸によりできるだけ最も効率的な最高出力付近で運用できるようにしています。

A4W原子炉の出力は商用原子炉の数分の1〜十数分の1といわれています。あらゆる過酷な環境下において確実な作動を要求される軍用機器は、民間のものより低性能であることがよくあります。例えば戦闘機のコンピュータは、最新のコンピュータよりもはるかに旧式のものが使われています。原子炉は主機関の他、蒸気カタパルトにも高圧蒸気を供給しています。

蒸気カタパルトは、アングルド・デッキとあわせて空母を劇的に変えた発明。航空機を蒸気の力によって射出する装置です。カタパルトの長さは約94mあり、約2秒で時速265km程度まで加速させることができます。ジョージ・ワシントン(CVN-73)にはキティ・ホーク級のMk.13カタパルトの改良型であるMk.13-2が4基設置されています。

飛行機が着艦する際には飛行機の機体につけられたアレスティング・フックを艦のアレスティング・ワイヤーに引っ掛けて停止させます。ジョージ・ワシントン(CVN-73)にはMk.7-3と呼ばれるアレスティング・ワイヤーが採用されています。

主なレーダー

対空レーダーは、AN/SPS-49A(V)5が搭載されています。AN/SPS-49はアメリカのレイセオン社が開発した2次元対空レーダーです。レイセオン社は世界第一位のミサイルメーカーとして知られています。

探知距離はレーダー反射断面積(RCS=Radar Cross Section)1平米の目標に対して460km、探知高度は46,000m、精度は56mです。1975年に配備されて以来、改良を重ねながら世界各国の軍艦に搭載されている実績ある対空レーダーです。

射撃指揮レーダーはSPQ-9B。こちらも1970年代に就役した定評あるパルス・ドップラー・レーダーであり、水上目標と低高度の空中目標を対象とした捜索・追尾レーダー。探知距離は137km、探知高度は610mです。ロナルド・レーガン(CVN-76)に搭載されたB型はそれまでの2次元から3次元レーダーとなりました。3次元レーダーはビームを送受信することにより、方位と仰角を同時に走査することができます。

多くの艦上機を運用するニミッツ級は多数の航空管制レーダーを搭載しています。遠距離ではAN/URN-25戦術航法装置により誘導し、次いで92.6km〜55.56kmの探知距離を持つAN/APN-43航空管制捜索レーダーが航空機を補足します。さらに近づいてくるとAN/SPN-46といった空母進入用レーダーが使われます。

空母への着艦は制御された墜落といわれる程難しく、海軍の飛行機乗り達は昔からこの技量を誇りにしていました。着艦は低速に強いレシプロ機でも難しかったわけですが、1950年代、戦闘機の動力がレシプロからジェットに変わると、レシプロ戦闘機より低速に弱かったジェット機の着艦はより難しさを増しました。

その後、空母が大型化すると同時に、先述のアングルド・デッキの発明、ジェット戦闘機の進歩、そして空母を劇的に進化させた光学着艦装置により離着艦の運用はスムースとなっていきます。

光学着艦装置は、縦横にライトを並べ、着艦の最終段階にある操縦士が進入角度や方向を判断することができる装置です。ニミッツ級空母にはより改良された改良型フランネルレンズ光学着艦装置が搭載されています。

主要兵装

いかに強力な艦上戦闘機群を持っていても、ニミッツ級空母はジョン・C・ステニス(CVN-74)の約5,400億円(45億ドルを1ドル120円で換算)やジョージ・H・W・ブッシュの約7,500億円(65億ドルを1ドル120円で換算)のように大変高額であり、存在自体が抑止力という性質上、撃沈されるということはあってはならないことともいえるでしょう。

そのため、ニミッツ級空母が単独で行動することはなく、空母打撃群(CSG=Carrier Strike Group)という単位で行動し、艦上戦闘機を除いた兵装は控えめなものです。

構成は時代や状況により異なりますが、現在では原子力空母1隻、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦1隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦×2、ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦1隻、補給艦1隻、総乗員は約7,000人というのが標準的な空母打撃群となっています。

ニミッツ級の主な兵装はMk.29 ESSMランチャー×2、RIM-116×2、ファランクスCIWS×4(9〜10番艦を除く)となっています。

Mk.29 ESSMランチャー
Mk.29 ESSMランチャーはRIM162 ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)艦対空ミサイルを発射します。速度はマッハ2.5〜3、射程距離は30〜50km、空母に搭載された射撃指揮装置(イルミネーター)からのレーダー波による誘導と、ミサイル自身のセンサによって自律誘導する慣性航法装置を併用したセミ・アクティブ・レーダー・ホーミング
(SARH=Semi Active Radar Homing)を採用しています。

ミサイル自身の能力のみに頼らないこの方式は、ミサイル開発の負担が軽減される反面、1目標に対してレーダーが1つ必要となり、飽和攻撃に対する同時多目標迎撃に弱点があったものの、近年では時間分割情報処理によりこの問題を解決しています。

RIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイル
上記のRIM-162 ESSMが30〜50kmの対空迎撃を担当するのに対して、400m〜1.5kmという近距離を担当するのがRIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイルです。こちらは艦のレーダーを活用せず、自身のレーダーのみによって対艦ミサイルを迎撃します。4枚の後翼によってゆるやかに回転しながら飛翔することから名前がつきました。艦のレーダーに依存せず、タ弾数近接迎撃が可能な21連裝の発射システムを2基搭載しています。

ファランクスCIWS(Close In Weapon System)
1959年以来使われている傑作バルカン砲M61A1を自動制御するレイセオン・システムズ社製の艦艇用近接防御火器システムです。白いレドームに探知距離4〜5km程のレーダーや制御システムが組み込まれ、その下にM61A1が組み込まれています。最大射程は4,500m、有効射程は1,500m、発射速度は毎分3,000発です。

ミサイルシステムと違い、自動制御とはいえ基本がバルカン砲のファランクスCIWSは追加の設置がしやすく、各国の艦艇に広く普及しました。

ジョージ・ワシントン(CVN-73)の艦載機

アメリカ海軍の空母に艦載される航空機は、空母航空団(CVW=Carrier Air Wing)と名付けられ編制されています。ジョージ・ワシントン(CVN-73)に艦載されるのは第5空母航空団です。内訳は以下のとおり。

第27戦闘攻撃飛行隊(VFA-27)“ロイヤル・メイセス”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 27 “ROYAL MACES”
使用機:F/A-18Eスーパーホーネット

第102戦闘攻撃飛行隊(VFA-102)“ダイヤモンド・バックス”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 102 “DIAMOND BACKS”
使用機:F/A-18Fスーパーホーネット

第115戦闘攻撃飛行隊(VFA-115)“イーグルス”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 115 “EAGLES”
使用機:F/A-18Eスーパーホーネット

第195戦闘攻撃飛行隊(VFA-195)“ダムバスターズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 195 “DAMBUSTERS”
使用機:F/A-18Eスーパーホーネット

第141電子攻撃飛行隊(VAQ-141)“シャドー・ホークス”
ELECTRONIC ATTACK SQUADRON 141 “SHADOW HAWKS”
使用機:EA-18Gグラウラー

第115早期警戒飛行隊(VAW-115)“リバティ・ベルズ”
CARRIER AIRBONE EALRY WARNING SQUADRON 115 “LIBERTY BELLS”
使用機:E-2Cホークアイ

第12ヘリコプター海上作戦飛行隊(HSC-12)“ゴールデン・ファルコンズ”
HELICOPTER SEA COMBAT SQUADRON 12 “GOLDEN FALCONS”
使用機:MH-60Sナイトホーク

第77ヘリコプター海洋攻撃飛行隊(HSM-77)“セイバー・ホークス”
HELICOPTER MARITIME STRIKE SQUADRON 77 “SABER HAWKS”
使用機:MH-60Rシーホーク

第30艦隊後方支援飛行隊・第5分遣隊(VRC-30・Det5)“プロバイダーズ”
FLEET LOGISTICS SUPPORT SQUADRON 30 DETACHMENT5 “PROVIDERS”
使用機:C-2Aグレイハウンド

運用者アメリカ海軍
主要なバリエーション
生産数
スペック型式
全 幅76.8m
全 長333m
全 高
翼面積
自 重
総重量/最大離陸重量
発動機ウェスティングハウスA4W原子炉×2
蒸気タービン×4(260,000shp)
4軸
最大速度
実用上昇限度
戦闘行動半径
航続距離
乗 員
初飛行
就 役1992年7月4日
退 役-
兵 装

ハリー・S・トルーマン

Harry S. Truman(CVN-75)
ハリー・S・トルーマンHarry S. Truman(CVN-75)

アメリカ海軍原子力空母ニミッツ級の第8番艦

8隻目のニミッツ級原子力空母

※文頭写真:母港のノーフォークを出航するハリー・S・トルーマン(CVN-75)。2012年7月7日。PHOTO USNAVY

ハリー・S・トルーマン(CVN-75)は、アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦の第8番艦として1998年に就役しました。ニミッツ級原子力空母は、世界で初めて量産された原子力空母の級であり、世界最強アメリカ海軍の中でもそこに存在するだけで抑止力を発揮する、桁外れの存在です。

発注は昭和63年(1988年)6月30日、平成5年(1993年)11月29日に起工され、平成8年(1996年)9月7日に進水、平成10年(1998年)7月25日に就役。母港はアメリカ、バージニア州ノーフォークです。

建造はアメリカ、バージニア州のニューポート・ニューズ造船所で行われました。同造船所は、アメリカ国内最大の民間造船所であり、全長333mという大きさに加えて最新の技術を駆使したニミッツ級空母を建造可能な唯一の造船所です。

不朽の自由作戦に参加するためアラビア海を航行中のハリー・S・トルーマン(CVN-75)。2010年11月23日。PHOTO USNAVY
不朽の自由作戦に参加するためアラビア海を航行中のハリー・S・トルーマン(CVN-75)。2010年11月23日。PHOTO USNAVY

全体のサイズは満載排水量103,900t、全長333m、全幅76.8m、吃水12.5m、速力30ノット+とこれまでのニミッツ級空母と同等です。機関も同じくウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービンを4基搭載し、4軸推進により26万shp(194MW)を出力します。建造費は45億ドル(約5,400億円/1ドル120円で換算)となっており、実験的要素もある第10番艦のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)の62億ドル(同約7,500億円)と比べると2,100億円程お安くなっています。

平成12年(2000年)11月から2001年5月まで、湾岸戦争後イラク南部に設置された飛行区域を監視した、サザン・ウォッチ作戦に参加します。平成14年(2002年)12月にも同作戦に参加し、引き続いて2003年3月に始まったイラク戦争にも従軍します。

ギリシャ、ソウダ湾のハリー・S・トルーマン(CVN-75)。2010年12月3日。PHOTO USNAVY
ギリシャ、ソウダ湾のハリー・S・トルーマン(CVN-75)。2010年12月3日。PHOTO USNAVY

ニミッツ級空母

ハリー・S・トルーマン(CVN-75)が8番艦となるアメリカ海軍のニミッツ級は世界最大となる軍艦の級であり、世界で初めて量産された原子力空母の級でもあります。

アメリカは原子力空母を1950年頃から計画しており、初の原子力空母となったエンタープライズ(CVN-65)は昭和32年(1957年)に発注され、昭和36年(1961年)に就役、平成24年(2012年)に退役して現在解体作業が行われています。

エンタープライズに次ぐ原子力空母となるニミッツ級のネームシップである第1番艦、ニミッツ(CVN-68)は昭和42年(1967年)に発注され、昭和47年(1972年)に進水、昭和50年(1975年)に就役しました。その後平成21年(2009年)にジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が就役するまで34年間に渡り10隻が建造され、アメリカ海軍の主力として世界中に睨みをきかせています。ニミッツ級の耐用年数は45年〜50年といわれていますから、第10番艦のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が退役する2060年頃まで第一線で活躍することとなります。

ハリー・S・トルーマン(CVN-75)とエイブラハム・リンカーン(CVN-72)空母打撃群の一部が並んだ豪華な写真。左からミサイル巡洋艦ケープ・セント・ジョージ(CG-71)、空母ハリー・S・トルーマン(CVN-75)、補給艦ビッグホーン(T-AO-198)、ミサイル駆逐艦ロス(DDG-71)、空母エイブラハム・リンカーン(CVN-72)、ミサイル巡洋艦ノルマンディー(CG-60)。2010年11月23日。PHOTO USNAVY
ハリー・S・トルーマン(CVN-75)とエイブラハム・リンカーン(CVN-72)空母打撃群の一部が並んだ豪華な写真。左からミサイル巡洋艦ケープ・セント・ジョージ(CG-71)、空母ハリー・S・トルーマン(CVN-75)、補給艦ビッグホーン(T-AO-198)、ミサイル駆逐艦ロス(DDG-71)、空母エイブラハム・リンカーン(CVN-72)、ミサイル巡洋艦ノルマンディー(CG-60)。2010年11月23日。PHOTO USNAVY

ニミッツ級の各部

船殻(せんこく=機関などを除く、船の骨格と外部を形成する構造主体)の特徴としては、まず第一にその大きさでしょうか。全長333m、全幅76.8m、満載排水量100,020t〜104,600tという巨体です。飛行甲板の面積は4.5エーカー(1.82ヘクタール)にもなります。ちなみに、戦艦大和は全長263m、全幅39m、満載排水量71,600tですから、その大きさがわかります。

空母の力となる艦載機数は最大90機ですが、艦上戦闘機56機、ヘリコプター15機、概ね70機程度を搭載して運用されています。最新の戦闘機を50機以上搭載する攻撃力は、例えばF-16を60機保有するノルウェー空軍に匹敵するものがあります。

ハリー・S・トルーマン(CVN-75)から発艦する第312海兵隊戦闘攻撃飛行隊(VMFA-312)“チェッカーボーズ”のF/A-18Cホーネット。2013年7月24日。PHOTO USNAVY
ハリー・S・トルーマン(CVN-75)から発艦する第312海兵隊戦闘攻撃飛行隊(VMFA-312)“チェッカーボーズ”のF/A-18Cホーネット。2013年7月24日。PHOTO USNAVY

そして、ニミッツ級では、これら艦載機が使用する燃料や武器・弾薬などの搭載量はそれまでの通常動力空母に比べて倍増しており、航空燃料約6,000t、航空機用の武器・弾薬約1,250tを搭載することができます。この搭載量のおかげで最大16日間という作戦行動を可能にしています。

近代空母の代名詞的な飛行甲板であるアングルド・デッキ、電波環境を良くするため後方に配置されたレーダーだらけの艦橋、船首吃水下にある赤い突起(バルバス・バウ)などが印象的です。

ニミッツ級原子力空母「ジョン C.ステニスの内部。写真:USNAVY
ニミッツ級原子力空母「ジョン C.ステニスの内部。写真:USNAVY

アングルド・デッキとは中心線から左舷側に8度以上(本艦の場合は9度4分)開いた着艦用の滑走帯のことです。飛行甲板が昔の空母のように直線のみによって構成されるのではなく、直線の他に斜めに滑走路があります。

ギリシャ、ソウダ湾のハリー・S・トルーマン(CVN-75)。2010年12月3日。PHOTO USNAVY
ギリシャ、ソウダ湾のハリー・S・トルーマン(CVN-75)。2010年12月3日。PHOTO USNAVY

アングルド・デッキは空母を変えた画期的な発明です。直線式飛行甲板の場合、前方に飛行機が駐機していると着艦に失敗した場合に接触事故を起こす他、オペレーションを阻害してしまいます。これに対して、アングルド・デッキは斜めに開いた着艦専用甲板を設けることにより、発艦・着艦のオペレーションを劇的に向上させました。

ノーフォークの海軍造船所を出航する「ハリー S.トルーマン」(CVN-75)。写真USNAVY
ノーフォークの海軍造船所を出航する「ハリー S.トルーマン」(CVN-75)。写真USNAVY

バルバス・バウは、船首吃水下につけられた赤い大きな突起。水をかき分けて進む際に生じる波の抵抗を打ち消すためのものです。

動力機関は、ウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービン4基を4軸により配し、26万馬力を出力します。エンタープライズでは4基であった原子炉は、技術の進歩により半分の2基となり、より効率的な艦内設計を可能にしています。

蒸気タービンは最高出力付近において最も効率良くなるため、全タービンを稼働して出力を調整するのではなく、4軸によりできるだけ最も効率的な最高出力付近で運用できるようにしています。

A4W原子炉の出力は商用原子炉の数分の1〜十数分の1といわれています。あらゆる過酷な環境下において確実な作動を要求される軍用機器は、民間のものより低性能であることがよくあります。例えば戦闘機のコンピュータは、最新のコンピュータよりもはるかに旧式のものが使われています。原子炉は主機関の他、蒸気カタパルトにも高圧蒸気を供給しています。

蒸気カタパルトは、アングルド・デッキとあわせて空母を劇的に変えた発明。航空機を蒸気の力によって射出する装置です。カタパルトの長さは約94mあり、約2秒で時速265km程度まで加速させることができます。ロナルド・レーガン(CVN-76)にはキティ・ホーク級のMk.13カタパルトの改良型であるMk.13-2が4基設置されています。

ハリー・S・トルーマン(CVN-75)から発艦するF/A-18Eスーパーホーネット。2010年12月2日。PHOTO USNAVY
ハリー・S・トルーマン(CVN-75)から発艦するF/A-18Eスーパーホーネット。2010年12月2日。PHOTO USNAVY

飛行機が着艦する際には飛行機の機体につけられたアレスティング・フックを艦のアレスティング・ワイヤーに引っ掛けて停止させます。ハリー・S・トルーマン(CVN-75)にはMk.7-3と呼ばれるアレスティング・ワイヤーが採用されています。

ハリー・S・トルーマン(CVN-75)に着艦する第312海兵隊戦闘攻撃飛行隊(VMFA-312)“チェッカーボーズ”のF/A-18Cホーネット。機体後ろに出ている棒のようなものが、空母の着艦用ワイヤーに引っ掛けるためのアレスティング・フックです。2010年11月19日。PHOTO USNAVY
ハリー・S・トルーマン(CVN-75)に着艦する第312海兵隊戦闘攻撃飛行隊(VMFA-312)“チェッカーボーズ”のF/A-18Cホーネット。機体後ろに出ている棒のようなものが、空母の着艦用ワイヤーに引っ掛けるためのアレスティング・フックです。2010年11月19日。PHOTO USNAVY

アレスティングフックをアレスティングワイヤーに引っ掛けて着艦するF/A-18Eスーパーホーネット。第105戦闘攻撃飛行隊所属機。2012年7月18日。PHOTO USNAVY
アレスティングフックをアレスティングワイヤーに引っ掛けて着艦するF/A-18Eスーパーホーネット。第105戦闘攻撃飛行隊所属機。2012年7月18日。PHOTO USNAVY

主なレーダー

対空レーダーは、AN/SPS-49A(V)5が搭載されています。AN/SPS-49はアメリカのレイセオン社が開発した2次元対空レーダーです。レイセオン社は世界第一位のミサイルメーカーとして知られています。

探知距離はレーダー反射断面積(RCS=Radar Cross Section)1平米の目標に対して460km、探知高度は46,000m、精度は56mです。昭和50年(1975年)に配備されて以来、改良を重ねながら世界各国の軍艦に搭載されている実績ある対空レーダーです。

射撃指揮レーダーはSPQ-9B。こちらも1970年代に就役した定評あるパルス・ドップラー・レーダーであり、水上目標と低高度の空中目標を対象とした捜索・追尾レーダー。探知距離は137km、探知高度は610mです。ロナルド・レーガン(CVN-76)に搭載されたB型はそれまでの2次元から3次元レーダーとなりました。3次元レーダーはビームを送受信することにより、方位と仰角を同時に走査することができます。

多くの艦上機を運用するニミッツ級は多数の航空管制レーダーを搭載しています。遠距離ではAN/URN-25戦術航法装置により誘導し、次いで92.6km〜55.56kmの探知距離を持つAN/APN-43航空管制捜索レーダーが航空機を補足します。さらに近づいてくるとAN/SPN-46といった空母進入用レーダーが使われます。

空母への着艦は制御された墜落といわれる程難しく、海軍の飛行機乗り達は昔からこの技量を誇りにしていました。着艦は低速に強いレシプロ機でも難しかったわけですが、1950年代、戦闘機の動力がレシプロからジェットに変わると、レシプロ戦闘機より低速に弱かったジェット機の着艦はより難しさを増しました。

その後、空母が大型化すると同時に、先述のアングルド・デッキの発明、ジェット戦闘機の進歩、そして空母を劇的に進化させた光学着艦装置により離着艦の運用はスムースとなっていきます。

光学着艦装置は、縦横にライトを並べ、着艦の最終段階にある操縦士が進入角度や方向を判断することができる装置です。ニミッツ級空母にはより改良された改良型フランネルレンズ光学着艦装置が搭載されています。

主要兵装

いかに強力な艦上戦闘機群を持っていても、ニミッツ級空母はハリー・S・トルーマン(CVN-75)の約5,400億円(45億ドルを1ドル120円で換算)やジョージ・H・W・ブッシュの約7,500億円(65億ドルを1ドル120円で換算)のように大変高額であり、存在自体が抑止力という性質上、撃沈されるということはあってはならないことともいえるでしょう。

そのため、ニミッツ級空母が単独で行動することはなく、空母打撃群(CSG=Carrier Strike Group)という単位で行動し、艦上戦闘機を除いた兵装は控えめなものです。

構成は時代や状況により異なりますが、現在では原子力空母1隻、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦1隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦×2、ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦1隻、補給艦1隻、総乗員は約7,000人というのが標準的な空母打撃群となっています。

ニミッツ級の主な兵装はMk.29 ESSMランチャー×2、RIM-116×2、ファランクスCIWS×4(9〜10番艦を除く)となっています。

Mk.29 ESSMランチャー
Mk.29 ESSMランチャーはRIM162 ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)艦対空ミサイルを発射します。速度はマッハ2.5〜3、射程距離は30〜50km、空母に搭載された射撃指揮装置(イルミネーター)からのレーダー波による誘導と、ミサイル自身のセンサによって自律誘導する慣性航法装置を併用したセミ・アクティブ・レーダー・ホーミング
(SARH=Semi Active Radar Homing)を採用しています。

ミサイル自身の能力のみに頼らないこの方式は、ミサイル開発の負担が軽減される反面、1目標に対してレーダーが1つ必要となり、飽和攻撃に対する同時多目標迎撃に弱点があったものの、近年では時間分割情報処理によりこの問題を解決しています。

RIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイル
上記のRIM-162 ESSMが30〜50kmの対空迎撃を担当するのに対して、400m〜1.5kmという近距離を担当するのがRIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイルです。こちらは艦のレーダーを活用せず、自身のレーダーのみによって対艦ミサイルを迎撃します。4枚の後翼によってゆるやかに回転しながら飛翔することから名前がつきました。艦のレーダーに依存せず、タ弾数近接迎撃が可能な21連裝の発射システムを2基搭載しています。

ファランクスCIWS(Close In Weapon System)
1959年以来使われている傑作バルカン砲M61A1を自動制御するレイセオン・システムズ社製の艦艇用近接防御火器システムです。白いレドームに探知距離4〜5km程のレーダーや制御システムが組み込まれ、その下にM61A1が組み込まれています。最大射程は4,500m、有効射程は1,500m、発射速度は毎分3,000発です。

ミサイルシステムと違い、自動制御とはいえ基本がバルカン砲のファランクスCIWSは追加の設置がしやすく、各国の艦艇に広く普及しました。

ハリー・S・トルーマン(CVN-75)の艦載機

アメリカ海軍の空母に艦載される航空機は、空母航空団(CVW=Carrier Air Wing)と名付けら編制されています。ハリー・S・トルーマン(CVN-75)に艦載されるのは第3空母航空団です。内訳は以下のとおり。

ハリー・S・トルーマン(CVN-75)から発艦する第312海兵隊戦闘攻撃飛行隊(VMFA-312)“チェッカーボーズ”のF/A-18Cホーネット。2013年7月24日。PHOTO USNAVY
ハリー・S・トルーマン(CVN-75)から発艦する第312海兵隊戦闘攻撃飛行隊(VMFA-312)“チェッカーボーズ”のF/A-18Cホーネット。2013年7月24日。PHOTO USNAVY

ハリー・S・トルーマン(CVN-75)艦上のE-2Cホークアイ早期警戒機とMH-60Sシーホークヘリコプター。2013年10月19日。PHOTO USNAVY
ハリー・S・トルーマン(CVN-75)艦上のE-2Cホークアイ早期警戒機とMH-60Sシーホークヘリコプター。2013年10月19日。PHOTO USNAVY
戦闘機にミサイルや爆弾を取り付けるための機材、マルチエジェクターラックをメンテナンスする隊員。空母内では戦闘機の様々なメンテナンスや修理が行われます。2013年10月30日。PHOTO USNAVY
戦闘機にミサイルや爆弾を取り付けるための機材、マルチエジェクターラックをメンテナンスする隊員。空母内では戦闘機の様々なメンテナンスや修理が行われます。2013年10月30日。PHOTO USNAVY

第32戦闘攻撃飛行隊(VFA-32)“ファイティング・スウォーズメン”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 32 “FIGHTING SWORDSMEN”
使用機:F/A-18Fスーパーホーネット

第37戦闘攻撃飛行隊(VFA-37)“レイジング・ブルズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 37 “RAGIN BULLS”
使用機:F/A-18Cホーネット

第312海兵隊戦闘攻撃飛行隊(VMFA-312)“チェッカーボーズ”
MARINE FIGHTER ATTACK SQUADRON 312 “CHECKERBOARDS”
使用機:F/A-18Cホーネット

第105戦闘攻撃飛行隊(VFA-105)“ガンスリンガーズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 105 “GUNSLINGERS”
使用機:F/A-18Eスーパーホーネット

第130電子攻撃飛行隊(VAQ-130)“ザッパーズ”
ELECTRONIC ATTACK SQUADRON 130 “ZAPPERS”
使用機:EA-18Gグラウラー

第123早期警戒飛行隊(VAW-123)“スクリュートップス”
CARRIER AIRBONE EALRY WARNING SQUADRON 123 “SCREWTOPS”
使用機:E-2Cホークアイ

第126早期警戒飛行隊(VAW-126)“シーホークス”
CARRIER AIRBONE EALRY WARNING SQUADRON 126 “SEAHAWKS”
使用機:E-2Cホークアイ

第7ヘリコプター海上作戦飛行隊(HSC-7)“ダスティー・ドッグス”
HELICOPTER SEA COMBAT SQUADRON 7 “DUSTY DOGS”
使用機:MH-60Sナイトホーク

第74ヘリコプター海洋攻撃飛行隊(HSM-74)“スワンプ・フォクシーズ”
HELICOPTER MARITIME STRIKE SQUADRON 74 “SWAMP FOXES”
使用機:MH-60Rシーホーク

第40艦隊後方支援飛行隊(VRC-40)“ローハイズ”
FLEET LOGISTICS SUPPORT SQUADRON 40 “RAWHIDES”
使用機:C-2Aグレイハウンド

運用者アメリカ海軍
主要なバリエーション
生産数
スペック型式
全 幅76.8m
全 長333m
全 高
翼面積
自 重
総重量/最大離陸重量
発動機ウェスティングハウスA4W原子炉×2
蒸気タービン×4(260,000shp)
4軸
最大速度
実用上昇限度
戦闘行動半径
航続距離
乗 員
初飛行
就 役1998年7年25日
退 役-
兵 装

ジョン・C・ステニス

John C. Stennis(CVN-74)
ジョン・C・ステニスJohn C. Stennis(CVN-74)

アメリカ海軍原子力空母ニミッツ級の第7番艦

7隻目のニミッツ級原子力空母

ジョン・C・ステニス(CVN-74)は、アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦の第7番艦として1995年に就役しました。ニミッツ級原子力空母は、世界で初めて量産された原子力空母の級であり、世界最強アメリカ海軍の中でもそこに存在するだけで抑止力を発揮する、桁外れの存在です。

発注は1988年6月30日、1991年3月13日に起工され、1993年11月11日に進水、1995年12月9日に就役。母港はアメリカ、ワシントン州ブレマートンです。

建造はアメリカ、バージニア州のニューポート・ニューズ造船所で行われました。同造船所は、アメリカ国内最大の民間造船所であり、全長333mという大きさに加えて最新の技術を駆使したニミッツ級空母を建造可能な唯一の造船所です。

全体のサイズは満載排水量103,300t、全長333m、全幅76.8m、吃水12.5m、速力30ノット+とこれまでのニミッツ級空母と同等です。機関も同じくウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービンを4基搭載し、4軸推進により26万shp(194MW)を出力します。建造費は45億ドル(約5,400億円/1ドル120円で換算)となっており、実験的要素もある第10番艦のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)の62億ドル(同約7,500億円)と比べると2,100億円程お安くなっています。

1998年・2000年には湾岸戦争後イラク南部に設置された飛行区域を監視した、サザン・ウォッチ作戦に参加します。2002年12月にも同作戦に参加し、引き続いて2003年3月に始まったイラク戦争にも従軍します。

2001年9月11日、アメリカ同時多発テロ事件の発生後に発動された本土防衛「ノーブル・イーグル作戦」に参加します。2013年、北朝鮮が挑発行為を続けると、第7艦隊の管轄に移動し軍事的抑止力の一翼を担います。同年にはアフガニスタンにも派遣され、1,300回もの出撃回数(ソーティー/Sorty)を記録しています。

ニミッツ級空母

ジョン・C・ステニス(CVN-74)が7番艦となるアメリカ海軍のニミッツ級は世界最大となる軍艦の級であり、世界で初めて量産された原子力空母の級でもあります。

アメリカは原子力空母を1950年頃から計画しており、初の原子力空母となったエンタープライズ(CVN-65)は1957年に発注され、1961年に就役、2012年に退役して現在解体作業が行われています。

エンタープライズに次ぐ原子力空母となるニミッツ級のネームシップである第1番艦、ニミッツ(CVN-68)は1967年に発注され、1972年に進水、1975年に就役しました。その後2009年にジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が就役するまで34年間に渡り10隻が建造され、アメリカ海軍の主力として世界中に睨みをきかせています。ニミッツ級の耐用年数は45年〜50年といわれていますから、第10番艦のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が退役する2060年頃まで第一線で活躍することとなります。

ニミッツ級の各部

船殻(せんこく=機関などを除く、船の骨格と外部を形成する構造主体)の特徴としては、まず第一にその大きさでしょうか。全長333m、全幅76.8m、満載排水量100,020t〜103,300tという巨体です。飛行甲板の面積は4.5エーカー(1.82ヘクタール)にもなります。ちなみに、戦艦大和は全長263m、全幅39m、満載排水量71,600tですから、その大きさがわかります。

空母の力となる艦載機数は最大90機ですが、艦上戦闘機56機、ヘリコプター15機、概ね70機程度を搭載して運用されています。最新の戦闘機を50機以上搭載する攻撃力は、例えばF-16を60機保有するノルウェー空軍に匹敵するものがあります。

そして、ニミッツ級では、これら艦載機が使用する燃料や武器・弾薬などの搭載量はそれまでの通常動力空母に比べて倍増しており、航空燃料約6,000t、航空機用の武器・弾薬約1,250tを搭載することができます。この搭載量のおかげで最大16日間という作戦行動を可能にしています。

近代空母の代名詞的な飛行甲板であるアングルド・デッキ、電波環境を良くするため後方に配置されたレーダーだらけの艦橋、船首吃水下にある赤い突起(バルバス・バウ)などが印象的です。

アングルド・デッキとは中心線から左舷側に8度以上(本艦の場合は9度4分)開いた着艦用の滑走帯のことです。飛行甲板が昔の空母のように直線のみによって構成されるのではなく、直線の他に斜めに滑走路があります。

アングルド・デッキは空母を変えた画期的な発明です。直線式飛行甲板の場合、前方に飛行機が駐機していると着艦に失敗した場合に接触事故を起こす他、オペレーションを阻害してしまいます。これに対して、アングルド・デッキは斜めに開いた着艦専用甲板を設けることにより、発艦・着艦のオペレーションを劇的に向上させました。

バルバス・バウは、船首吃水下につけられた赤い大きな突起。水をかき分けて進む際に生じる波の抵抗を打ち消すためのものです。

動力機関は、ウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービン4基を4軸により配し、26万馬力を出力します。エンタープライズでは4基であった原子炉は、技術の進歩により半分の2基となり、より効率的な艦内設計を可能にしています。

蒸気タービンは最高出力付近において最も効率良くなるため、全タービンを稼働して出力を調整するのではなく、4軸によりできるだけ最も効率的な最高出力付近で運用できるようにしています。

A4W原子炉の出力は商用原子炉の数分の1〜十数分の1といわれています。あらゆる過酷な環境下において確実な作動を要求される軍用機器は、民間のものより低性能であることがよくあります。例えば戦闘機のコンピュータは、最新のコンピュータよりもはるかに旧式のものが使われています。原子炉は主機関の他、蒸気カタパルトにも高圧蒸気を供給しています。

蒸気カタパルトは、アングルド・デッキとあわせて空母を劇的に変えた発明。航空機を蒸気の力によって射出する装置です。カタパルトの長さは約94mあり、約2秒で時速265km程度まで加速させることができます。ジョン・C・ステニス(CVN-74)にはキティ・ホーク級のMk.13カタパルトの改良型であるMk.13-2が4基設置されています。

飛行機が着艦する際には飛行機の機体につけられたアレスティング・フックを艦のアレスティング・ワイヤーに引っ掛けて停止させます。ジョン・C・ステニス(CVN-74)にはMk.7-3と呼ばれるアレスティング・ワイヤーが採用されています。

主なレーダー

対空レーダーは、AN/SPS-49A(V)5が搭載されています。AN/SPS-49はアメリカのレイセオン社が開発した2次元対空レーダーです。レイセオン社は世界第一位のミサイルメーカーとして知られています。

探知距離はレーダー反射断面積(RCS=Radar Cross Section)1平米の目標に対して460km、探知高度は46,000m、精度は56mです。1975年に配備されて以来、改良を重ねながら世界各国の軍艦に搭載されている実績ある対空レーダーです。

射撃指揮レーダーはSPQ-9B。こちらも1970年代に就役した定評あるパルス・ドップラー・レーダーであり、水上目標と低高度の空中目標を対象とした捜索・追尾レーダー。探知距離は137km、探知高度は610mです。ジョン・C・ステニス(CVN-74)に搭載されたB型はそれまでの2次元から3次元レーダーとなりました。3次元レーダーはビームを送受信することにより、方位と仰角を同時に走査することができます。

多くの艦上機を運用するニミッツ級は多数の航空管制レーダーを搭載しています。遠距離ではAN/URN-25戦術航法装置により誘導し、次いで92.6km〜55.56kmの探知距離を持つAN/APN-43航空管制捜索レーダーが航空機を補足します。さらに近づいてくるとAN/SPN-46といった空母進入用レーダーが使われます。

空母への着艦は制御された墜落といわれる程難しく、海軍の飛行機乗り達は昔からこの技量を誇りにしていました。着艦は低速に強いレシプロ機でも難しかったわけですが、1950年代、戦闘機の動力がレシプロからジェットに変わると、レシプロ戦闘機より低速に弱かったジェット機の着艦はより難しさを増しました。

その後、空母が大型化すると同時に、先述のアングルド・デッキの発明、ジェット戦闘機の進歩、そして空母を劇的に進化させた光学着艦装置により離着艦の運用はスムースとなっていきます。

光学着艦装置は、縦横にライトを並べ、着艦の最終段階にある操縦士が進入角度や方向を判断することができる装置です。ニミッツ級空母にはより改良された改良型フランネルレンズ光学着艦装置が搭載されています。

主要兵装

いかに強力な艦上戦闘機群を持っていても、ニミッツ級空母はジョン・C・ステニス(CVN-74)の約5,400億円(45億ドルを1ドル120円で換算)やジョージ・H・W・ブッシュの約7,500億円(65億ドルを1ドル120円で換算)のように大変高額であり、存在自体が抑止力という性質上、撃沈されるということはあってはならないことともいえるでしょう。

そのため、ニミッツ級空母が単独で行動することはなく、空母打撃群(CSG=Carrier Strike Group)という単位で行動し、艦上戦闘機を除いた兵装は控えめなものです。

構成は時代や状況により異なりますが、現在では原子力空母1隻、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦1隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦×2、ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦1隻、補給艦1隻、総乗員は約7,000人というのが標準的な空母打撃群となっています。

ニミッツ級の主な兵装はMk.29 ESSMランチャー×2、RIM-116×2、ファランクスCIWS×4(9〜10番艦を除く)となっています。

Mk.29 ESSMランチャー
Mk.29 ESSMランチャーはRIM162 ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)艦対空ミサイルを発射します。速度はマッハ2.5〜3、射程距離は30〜50km、空母に搭載された射撃指揮装置(イルミネーター)からのレーダー波による誘導と、ミサイル自身のセンサによって自律誘導する慣性航法装置を併用したセミ・アクティブ・レーダー・ホーミング
(SARH=Semi Active Radar Homing)を採用しています。

ミサイル自身の能力のみに頼らないこの方式は、ミサイル開発の負担が軽減される反面、1目標に対してレーダーが1つ必要となり、飽和攻撃に対する同時多目標迎撃に弱点があったものの、近年では時間分割情報処理によりこの問題を解決しています。

RIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイル
上記のRIM-162 ESSMが30〜50kmの対空迎撃を担当するのに対して、400m〜1.5kmという近距離を担当するのがRIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイルです。こちらは艦のレーダーを活用せず、自身のレーダーのみによって対艦ミサイルを迎撃します。4枚の後翼によってゆるやかに回転しながら飛翔することから名前がつきました。艦のレーダーに依存せず、タ弾数近接迎撃が可能な21連裝の発射システムを2基搭載しています。

ファランクスCIWS(Close In Weapon System)
1959年以来使われている傑作バルカン砲M61A1を自動制御するレイセオン・システムズ社製の艦艇用近接防御火器システムです。白いレドームに探知距離4〜5km程のレーダーや制御システムが組み込まれ、その下にM61A1が組み込まれています。最大射程は4,500m、有効射程は1,500m、発射速度は毎分3,000発です。

ミサイルシステムと違い、自動制御とはいえ基本がバルカン砲のファランクスCIWSは追加の設置がしやすく、各国の艦艇に広く普及しました。

ジョン・C・ステニス(CVN-74)の艦載機

アメリカ海軍の空母に艦載される航空機は、空母航空団(CVW=Carrier Air Wing)と名付けら編制されています。ジョン・C・ステニス(CVN-74)に艦載されるのは第9空母航空団です。内訳は以下のとおり。

第41戦闘攻撃飛行隊(VFA-41)“ブラック・エイセズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 41 “BLACK ACES”
使用機:F/A-18Fスーパーホーネット

第14戦闘攻撃飛行隊(VFA-14)“トップハッターズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 14 “TOPHATTERS”
使用機:F/A-18Eスーパーホーネット

第97戦闘攻撃飛行隊(VFA-97)“ウォーホークス”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 97 “WARHAWKS”
使用機:F/A-18Eスーパーホーネット

第192戦闘攻撃飛行隊(VFA-192)“ゴールデン・ドラゴンズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 192 “GOLDEN DRAGONS”
使用機:F/A-18Eスーパーホーネット

第133電子攻撃飛行隊(VAQ-133)“ウィザーズ”
ELECTRONIC ATTACK SQUADRON 133 “WIZARDS”
使用機:EA-18Gグラウラー

第112早期警戒飛行隊(VAW-112)“ゴールデン・ホークス”
CARRIER AIRBONE EALRY WARNING SQUADRON 112 “GORLDEN HAWKS”
使用機:E-2Cホークアイ

第8ヘリコプター海上作戦飛行隊(HSC-8)“エイト・ボーラーズ”
HELICOPTER SEA COMBAT SQUADRON 8 “EIGHT BALLERS”
使用機:MH-60Sナイトホーク

第71ヘリコプター海洋攻撃飛行隊(HSM-71)“ラプターズ”
HELICOPTER MARITIME STRIKE SQUADRON 71 “RAPTORS”
使用機:MH-60Rシーホーク

第30艦隊後方支援飛行隊・第4分遣隊(VRC-30・Det4)“プロバイダーズ”
FLEET LOGISTICS SUPPORT SQUADRON 30 DETACHMENT4 “PROVIDERS”
使用機:C-2Aグレイハウンド

運用者アメリカ海軍
主要なバリエーション
生産数
スペック型式
全 幅76.8m
全 長333m
全 高
翼面積
自 重
総重量/最大離陸重量
発動機ウェスティングハウスA4W原子炉×2
蒸気タービン×4(260,000shp)
4軸
最大速度
実用上昇限度
戦闘行動半径
航続距離
乗 員
初飛行
就 役1995年12月9日
退 役-
兵 装

ロナルド・レーガン

Ronald Reagan(CVN-76)
ロナルド・レーガンRonald Reagan(CVN-76)

アメリカ海軍原子力空母ニミッツ級の第9番艦

9隻目のニミッツ級原子力空母

※文頭写真:ハワイの真珠湾においてロナルド・レーガン(CVN-76)艦上からアリゾナ記念館に敬礼する船員たち。2005年1月22日。PHOTO USNAVY

ロナルド・レーガン(CVN-76)は、アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦の第9番艦として2003年に就役しました。ニミッツ級原子力空母は、世界で初めて量産された原子力空母の級であり、世界最強アメリカ海軍の中でもそこに存在するだけで抑止力を発揮する、桁外れの存在です。

平成27年(2015年)5月に平成20年(2008年)以来の任務を終えて横須賀を出航したジョージ・ワシントン(CVN-73)に替わり2015年(平成27年)10月1日、横須賀に配備されました。キティ・ホーク(CVA-63)に替わってジョージ・ワシントン(CVN-73)が入港する際には、横須賀の海軍基地関係者はその準備に追われていましたが、今回は同級艦だけに落ち着いたものです。

発注は平成6年(1994年)12月8日、平成10年(1998年)2月12日に起工され、平成13年(2001年)3月4日に進水、平成15年(2003年)7月12日にアメリカ、カリフォルニア州コロナドの海軍基地において就役しています。

建造はアメリカ、バージニア州のニューポート・ニューズ造船所で行われました。同造船所は、アメリカ国内最大の民間造船所であり、全長333mという大きさに加えて最新の技術を駆使したニミッツ級空母を建造可能な唯一の造船所です。

全体のサイズは満載排水量10万1,400t、全長333m、全幅76.8m、吃水12.5m、速力30ノット+とこれまでのニミッツ級空母と同等です。機関も同じくウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービンを4基搭載し、4軸推進により26万shp(194MW)を出力します。建造費は45億ドル(約5,400億円/1ドル120円で換算)となっており、実験的要素もある次のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)の62億ドル(同約7,500億円)と比べると2,100億円程お安くなっています。

22か国が参加する環太平洋合同演習(RIMPAC)2014に参加するロナルド・レーガン(CVN-76)。2014年7月24日。PHOTO USNAVY
22か国が参加する環太平洋合同演習(RIMPAC)2014に参加するロナルド・レーガン(CVN-76)。2014年7月24日。PHOTO USNAVY

ロナルド・レーガン空母打撃群は、平成23年(2011年)3月11日、日本の観測史上最大のマグニチュード9.0を記録した東日本大震災において発生後の救援活動「トモダチ作戦」の主力として活躍しました。

アメリカ軍による東日本大震災の復興支援活動「トモダチ作戦」に感謝して表敬訪問する北澤俊美防衛大臣。2011年4月4日。PHOTO USNAVY
アメリカ軍による東日本大震災の復興支援活動「トモダチ作戦」に感謝して表敬訪問する北澤俊美防衛大臣。2011年4月4日。PHOTO USNAVY

ニミッツ級空母

ロナルド・レーガン(CVN-76)が9番艦となるアメリカ海軍のニミッツ級は世界最大となる軍艦の級であり、世界で初めて量産された原子力空母の級でもあります。

アメリカは原子力空母を1950年頃から計画しており、初の原子力空母となったエンタープライズ(CVN-65)は昭和32年(1957年)に発注され、昭和36年(1961年)に就役、平成24年(2012年)に退役して現在解体作業が行われています。

2006年6月28日、ハワイの真珠湾に入るロナルド・レーガン(CVN-76)。PHOTO USNAVY
2006年6月28日、ハワイの真珠湾に入るロナルド・レーガン(CVN-76)。PHOTO USNAVY

エンタープライズに次ぐ原子力空母となるニミッツ級のネームシップである第1番艦、ニミッツ(CVN-68)は昭和42年(1967年)に発注され、1972年に進水、昭和50年(1975年)に就役しました。その後平成21年(2009年)にジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が就役するまで34年間に渡り10隻が建造され、アメリカ海軍の主力として世界中に睨みをきかせています。ニミッツ級の耐用年数は45年〜50年といわれていますから、第10番艦のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が退役する2060年頃まで第一線で活躍することとなります。

ロナルド・レーガン(CVN-76)とミサイル駆逐艦マッキャンベル(DDG-85)。PHOTO USNAVY
ロナルド・レーガン(CVN-76)とミサイル駆逐艦マッキャンベル(DDG-85)。PHOTO USNAVY

ニミッツ級の各部

船殻(せんこく=機関などを除く、船の骨格と外部を形成する構造主体)の特徴としては、まず第一にその大きさでしょうか。全長333m、全幅76.8m、満載排水量100,020t〜104,600tという巨体です。飛行甲板の面積は4.5エーカー(1.82ヘクタール)にもなります。ちなみに、戦艦大和は全長263m、全幅39m、満載排水量71,600tですから、その大きさがわかります。

空母の力となる艦載機数は最大90機ですが、艦上戦闘機56機、ヘリコプター15機、概ね70機程度を搭載して運用されています。最新の戦闘機を50機以上搭載する攻撃力は、例えばF-16を60機保有するノルウェー空軍に匹敵するものがあります。

太平洋グアム周辺において行われたアメリカ海軍の大規模演習、バリアント・シールド(勇敢な盾)に参加するエイブラハム・リンカーン(CVN-72)、キティ・ホーク(CVN-63)、ロナルド・レーガン(CVN-76)とそれぞれの空母打撃群。上空にはアメリカ空軍のステルス爆撃機、B-2スピリットが飛んでいます。2006年6月18日。PHOTO USNAVY
太平洋グアム周辺において行われたアメリカ海軍の大規模演習、バリアント・シールド(勇敢な盾)に参加するエイブラハム・リンカーン(CVN-72)、キティ・ホーク(CVN-63)、ロナルド・レーガン(CVN-76)とそれぞれの空母打撃群。上空にはアメリカ空軍のステルス爆撃機、B-2スピリットが飛んでいます。2006年6月18日。PHOTO USNAVY

そして、ニミッツ級では、これら艦載機が使用する燃料や武器・弾薬などの搭載量はそれまでの通常動力空母に比べて倍増しており、航空燃料約6,000t、航空機用の武器・弾薬約1,250tを搭載することができます。この搭載量のおかげで最大16日間という作戦行動を可能にしています。

近代空母の代名詞的な飛行甲板であるアングルド・デッキ、電波環境を良くするため後方に配置されたレーダーだらけの艦橋、船首吃水下にある赤い突起(バルバス・バウ)などが印象的です。

アングルド・デッキとは中心線から左舷側に8度以上(本艦の場合は9度4分)開いた着艦用の滑走帯のことです。飛行甲板が昔の空母のように直線のみによって構成されるのではなく、直線の他に斜めに滑走路があります。

アングルド・デッキは空母を変えた画期的な発明です。直線式飛行甲板の場合、前方に飛行機が駐機していると着艦に失敗した場合に接触事故を起こす他、オペレーションを阻害してしまいます。これに対して、アングルド・デッキは斜めに開いた着艦専用甲板を設けることにより、発艦・着艦のオペレーションを劇的に向上させました。

バルバス・バウは、船首吃水下につけられた赤い大きな突起。水をかき分けて進む際に生じる波の抵抗を打ち消すためのものです。

動力機関は、ウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービン4基を4軸により配し、26万馬力を出力します。エンタープライズでは4基であった原子炉は、技術の進歩により半分の2基となり、より効率的な艦内設計を可能にしています。

蒸気タービンは最高出力付近において最も効率良くなるため、全タービンを稼働して出力を調整するのではなく、4軸によりできるだけ最も効率的な最高出力付近で運用できるようにしています。

A4W原子炉の出力は商用原子炉の数分の1〜十数分の1といわれています。あらゆる過酷な環境下において確実な作動を要求される軍用機器は、民間のものより低性能であることがよくあります。例えば戦闘機のコンピュータは、最新のコンピュータよりもはるかに旧式のものが使われています。原子炉は主機関の他、蒸気カタパルトにも高圧蒸気を供給しています。

蒸気カタパルトは、アングルド・デッキとあわせて空母を劇的に変えた発明。航空機を蒸気の力によって射出する装置です。カタパルトの長さは約94mあり、約2秒で時速265km程度まで加速させることができます。ロナルド・レーガン(CVN-76)にはキティ・ホーク級のMk.13カタパルトの改良型であるMk.13-2が4基設置されています。

飛行機が着艦する際には飛行機の機体につけられたアレスティング・フックを艦のアレスティング・ワイヤーに引っ掛けて停止させます。ロナルド・レーガンにはMk.7-3と呼ばれるアレスティング・ワイヤーが採用されています。

主なレーダー

対空レーダーは、AN/SPS-49A(V)1が搭載されています。AN/SPS-49はアメリカのレイセオン社が開発した2次元対空レーダーです。レイセオン社は世界第一位のミサイルメーカーとして知られています。

探知距離はレーダー反射断面積(RCS=Radar Cross Section)1平米の目標に対して460km、探知高度は46,000m、精度は56mです。1975年に配備されて以来、改良を重ねながら世界各国の軍艦に搭載されている実績ある対空レーダーです。

ロナルド・レーガン(CVN-76)に搭載されているA(V)1型は1990年代に登場した改良型。目標毎の速度測定、クラッター抑制性能が向上するなどしています。クラッターとは、レーダースリーン上の乱れ(擾乱)のことです。

次世代のジェラルド・R・フォード級ではイージス艦に搭載されている多機能レーダーの最新型であるAN/APY-3が搭載される予定です。

射撃指揮レーダーはSPQ-9B。こちらも1970年代に就役した定評あるパルス・ドップラー・レーダーであり、水上目標と低高度の空中目標を対象とした捜索・追尾レーダー。探知距離は137km、探知高度は610mです。ロナルド・レーガン(CVN-76)に搭載されたB型はそれまでの2次元から3次元レーダーとなりました。3次元レーダーはビームを送受信することにより、方位と仰角を同時に走査することができます。

多くの艦上機を運用するニミッツ級は多数の航空管制レーダーを搭載しています。遠距離ではAN/URN-25戦術航法装置により誘導し、次いで92.6km〜55.56kmの探知距離を持つAN/APN-43航空管制捜索レーダーが航空機を補足します。さらに近づいてくるとAN/SPN-42やAN/SPN-46といった空母進入用レーダーが使われます。

空母への着艦は制御された墜落といわれる程難しく、海軍の飛行機乗り達は昔からこの技量を誇りにしていました。着艦は低速に強いレシプロ機でも難しかったわけですが、1950年代、戦闘機の動力がレシプロからジェットに変わると、レシプロ戦闘機より低速に弱かったジェット機の着艦はより難しさを増しました。

その後、空母が大型化すると同時に、先述のアングルド・デッキの発明、ジェット戦闘機の進歩、そして空母を劇的に進化させた光学着艦装置により離着艦の運用はスムースとなっていきます。

光学着艦装置は、縦横にライトを並べ、着艦の最終段階にある操縦士が進入角度や方向を判断することができる装置です。ニミッツ級空母にはより改良された改良型フランネルレンズ光学着艦装置が搭載されています。

主要兵装

いかに強力な艦上戦闘機群を持っていても、ニミッツ級空母はロナルド・レーガン(CVN-76)の約5,400億円(45億ドルを1ドル120円で換算)やジョージ・H・W・ブッシュの約7,500億円(65億ドルを1ドル120円で換算)のように大変高額であり、存在自体が政治力をも帯びており、撃沈されるということは現状ではあってはならないことです。

そのため、ニミッツ級空母が単独で行動することはなく、空母打撃群(CSG=Carrier Strike Group)という単位で行動し、艦上戦闘機を除いた兵装は控えめなものです。

構成は時代や状況により異なりますが、現在では原子力空母1隻、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦1隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦×2、ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦1隻、補給艦1隻、総乗員は約7,000人というのが標準的な空母打撃群となっています。

ニミッツ級の主な兵装はMk.29 ESSMランチャー×2、RIM-116×2、ファランクスCIWS×4(9〜10番艦を除く)となっています。

Mk.29 ESSMランチャー
Mk.29 ESSMランチャーはRIM162 ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)艦対空ミサイルを発射します。速度はマッハ2.5〜3、射程距離は30〜50km、空母に搭載された射撃指揮装置(イルミネーター)からのレーダー波による誘導と、ミサイル自身のセンサによって自律誘導する慣性航法装置を併用したセミ・アクティブ・レーダー・ホーミング
(SARH=Semi Active Radar Homing)を採用しています。

ミサイル自身の能力のみに頼らないこの方式は、ミサイル開発の負担が軽減される反面、1目標に対してレーダーが1つ必要となり、飽和攻撃に対する同時多目標迎撃に弱点があったものの、近年では時間分割情報処理によりこの問題を解決しています。

RIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイル
上記のRIM-162 ESSMが30〜50kmの対空迎撃を担当するのに対して、400m〜1.5kmという近距離を担当するのがRIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイルです。こちらは艦のレーダーを活用せず、自身のレーダーのみによって対艦ミサイルを迎撃します。4枚の後翼によってゆるやかに回転しながら飛翔することから名前がつきました。艦のレーダーに依存せず、タ弾数近接迎撃が可能な21連裝の発射システムを2基搭載しています。

ロナルド・レーガン(CVN-76)の艦載機

アメリカ海軍の空母に艦載される航空機は、空母航空団(CVW=Carrier Air Wing)と名付けら編制されています。ロナルド・レーガン(CVN-76)に艦載されるのは第2空母航空団です。内訳は以下のとおり。

ロナルド・レーガン(CVN-76)の昇降機に載せられるアメリカ海兵隊第323戦闘攻撃飛行隊(VMFA-323)のF/A-18Cホーネット。かつて空母の昇降機は艦の中ほどにありましたが、このように外側にすることにより、より大型の戦闘機を運用できるようになりました。2011年3月2日。PHOTO USNAVY
ロナルド・レーガン(CVN-76)の昇降機に載せられるアメリカ海兵隊第323戦闘攻撃飛行隊(VMFA-323)のF/A-18Cホーネット。かつて空母の昇降機は艦の中ほどにありましたが、このように外側にすることにより、より大型の戦闘機を運用できるようになりました。2011年3月2日。PHOTO USNAVY

ロナルド・レーガン(CVN-76)艦上で発艦準備中のF/A-18E。PHOTO USNAVY
ロナルド・レーガン(CVN-76)艦上で発艦準備中のF/A-18E。PHOTO USNAVY

第2戦闘攻撃飛行隊(VFA-2)“バウンティ・ハンターズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 2 “BOUNTY HUNTERS”
使用機:F/A-18F ブロック2

第137戦闘攻撃飛行隊(VFA-137)“ケストレルズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 137 “KESTLELS”
使用機:F/A-18E

第86戦闘攻撃飛行隊(VFA-86)“サイドワインダーズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 86 “SIDEWINDERS”
使用機:F/A-18E ブロック2

第34戦闘攻撃飛行隊(VFA-34)“ブルー・ブラスターズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 34 “BLUE BLASTERS”
使用機:F/A-18C

第136電子攻撃飛行隊(VAQ-136)“ガントレッツ”
ELECTRONIC ATTACK SQUADRON 136 “GUNTLETS”
使用機:EA-18G

第113早期警戒飛行隊(VAW-113)“ブラック・イーグルズ”
CARRIER AIRBONE EALRY WARNING SQUADRON 113 “BLACK EAGLES”
使用機:E2-C 2K

第4ヘリコプター海上作戦飛行隊(HSC-4)“ブラック・ナイツ”
HELICOPTER SEA COMBAT SQUADRON 4 “BLACK KNIGHTS”
使用機:MH-60S

第78ヘリコプター海洋攻撃飛行隊(HSM-78)“ブルー・ホークス”
HELICOPTER MARITIME STRIKE SQUADRON 78 “BLUE HAWKS”
使用機:MH-60R

第30艦隊後方支援飛行隊・分遣隊(VRC-30 Det)“プロバイダーズ”
FLEET LOGISTICS SUPPORT SQUADRON 30 “PROVIDERS”
使用機:C-2A

運用者アメリカ海軍
主要なバリエーション
生産数
スペック型式
全 幅76.8m
全 長333m
全 高
翼面積
自 重
総重量/最大離陸重量
発動機ウェスティングハウスA4W原子炉×2
蒸気タービン×4(260,000shp)
4軸
最大速度
実用上昇限度
戦闘行動半径
航続距離
乗 員約6,000名
初飛行
就 役2003年7月12日
退 役-
兵 装

ジョージ・H・W・ブッシュ

George H.W.Bush(CVN-77)
ジョージ・H・W・ブッシュGeorge H.W.Bush(CVN-77)

世界最強、アメリカ海軍最新空母

ニミッツ級空母基本を踏襲しつつ、次世代を見据えた新機軸を導入

※文頭写真:アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦、第10番艦、ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)は、アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦の第10番艦。2009年に就役したアメリカ海軍最新の航空母艦です。次世代の空母としては2016年に就役を予定して建造中の次世代新型空母、ジェラルド・R・フォード級が控えています。

キティホークに代わって横須賀に配備されるといわれたこともありましたが、母港はアメリカ、バージニア州ノーフォークとなりました。

2011年1月29日、大西洋において訓練中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY
2011年1月29日、大西洋において訓練中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY

2013年7月10日、無人機XB-47がジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)への初着艦に成功したことは、近年進化を続ける無人機開発において記念碑的な出来事となりました。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)艦上において、タッチアンドゴーを行う、無人艦上戦闘機XB-47。無人機発の空母への離着艦となりました。2013年5月17日。最も高価かつ脆弱な部品である人間を載せない無人機は画期的な技術です。PHOTO USNAVY
ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)艦上において、タッチアンドゴーを行う、無人艦上戦闘機XB-47。無人機発の空母への離着艦となりました。2013年5月17日。最も高価かつ脆弱な部品である人間を載せない無人機は画期的な技術です。PHOTO USNAVY

発注は2001年1月26日、イラクの自由作戦が始まって半年後の2003年9月6日に起工され、2006年10月9日に進水、2009年1月10日にアメリカ、バージニア州ノーフォークの海軍基地において就役しています。

建造はアメリカ、バージニア州のニューポート・ニューズ造船所で行われました。同造船所は、アメリカ国内最大の民間造船所であり、全長333mという大きさに加えて最新の技術を駆使したニミッツ級空母を建造可能な唯一の造船所です。

全体のサイズは満載排水量10万2,000t、全長333m、全幅41m、吃水12.5m、速力30ノット+とこれまでのニミッツ級空母と同等です。機関も同じくウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービンを4基搭載し、4軸推進により26万shp(194MW)を出力します。建造費は62億ドル(約7,500億円/1ドル120円で換算)。

2006年3月、ニューポート・ニューズ造船所で建造中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。7か月後の10月9日に進水します。PHOTO USNAVY
2006年3月、ニューポート・ニューズ造船所で建造中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。7か月後の10月9日に進水します。PHOTO USNAVY

ノースロップ・グラマン社のニューポート・ニューズ造船所で建造中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。スーパーリフトが700トンもの艦橋を釣り上げています。PHOTO USNAVY
ノースロップ・グラマン社のニューポート・ニューズ造船所で建造中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。スーパーリフトが700トンもの艦橋を釣り上げています。PHOTO USNAVY

ニミッツ級空母

ロナルド・レーガン(CVN-76)が9番艦となるアメリカ海軍のニミッツ級は世界最大となる軍艦の級であり、世界で初めて量産された原子力空母の級でもあります。

アメリカは原子力空母を1950年頃から計画しており、初の原子力空母となったエンタープライズ(CVN-65)は1957年に発注され、1961年に就役、2012年に退役して現在解体作業が行われています。

飛行甲板において消防訓練中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY
飛行甲板において消防訓練中のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY

エンタープライズに次ぐ原子力空母となるニミッツ級のネームシップである第1番艦、ニミッツ(CVN-68)は1967年に発注され、1972年に進水、1975年に就役しました。その後2009年にジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が就役するまで34年間に渡り10隻が建造され、アメリカ海軍の主力として世界中に睨みをきかせています。ニミッツ級の耐用年数は45年〜50年といわれていますから、第10番艦のジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が退役する2060年頃まで第一線で活躍することとなります。

ニミッツ級の各部

船殻(せんこく=機関などを除く、船の骨格と外部を形成する構造主体)の特徴としては、まず第一にその大きさでしょうか。全長333m、全幅76.8m、満載排水量100,020t〜104,600tという巨体です。飛行甲板の面積は4.5エーカー(1.82ヘクタール)にもなります。ちなみに、戦艦大和は全長263m、全幅39m、満載排水量71,600tですから、その大きさがわかります。

空母の力となる艦載機数は最大90機ですが、艦上戦闘機56機、ヘリコプター15機、概ね70機程度を搭載して運用されています。最新の戦闘機を50機以上搭載する攻撃力は、例えばF-16を60機保有するノルウェー空軍に匹敵するものがあります。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)艦上の第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)、“トムキャッターズ”。使用機はF/A-18E。PHOTO USNAVY
ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)艦上の第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)、“トムキャッターズ”。使用機はF/A-18E。PHOTO USNAVY

そして、ニミッツ級では、これら艦載機が使用する燃料や武器・弾薬などの搭載量はそれまでの通常動力空母に比べて倍増しており、航空燃料約6,000t、航空機用の武器・弾薬約1,250tを搭載することができます。この搭載量のおかげで最大16日間という作戦行動を可能にしています。

85機〜90機が搭載される航空機のオペレーションにおいても、離着艦・回収装置の自動化が図られ、より少ない人数によってオペレーションできるよう効率化が進められています。計画中には現在のスチームカタパルトに変えて、リニアモーターを使用したより新しい形式の電磁式カタパルトが採用されるといわれていましたが、結局現在主流のスチームカタパルトとなりました。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)において離艦しようとする第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)、“トムキャッターズ”。PHOTO USNAVY
ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)において離艦しようとする第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)、“トムキャッターズ”。PHOTO USNAVY

蒸気カタパルトの蒸気測定値を監視する船員。PHOTO USNAVY
蒸気カタパルトの蒸気測定値を監視する船員。PHOTO USNAVY

近代空母の代名詞的な飛行甲板であるアングルド・デッキ、電波環境を良くするため後方に配置されたレーダーだらけの艦橋、船首吃水下にある赤い突起(バルバス・バウ)などが印象的です。

アングルド・デッキとは中心線から左舷側に8度以上(本艦の場合は9度4分)開いた着艦用の滑走帯のことです。飛行甲板が昔の空母のように直線のみによって構成されるのではなく、直線の他に斜めに滑走路があります。

アングルド・デッキは空母を変えた画期的な発明です。直線式飛行甲板の場合、前方に飛行機が駐機していると着艦に失敗した場合に接触事故を起こす他、オペレーションを阻害してしまいます。これに対して、アングルド・デッキは斜めに開いた着艦専用甲板を設けることにより、発艦・着艦のオペレーションを劇的に向上させました。

バルバス・バウは、船首吃水下につけられた赤い大きな突起。水をかき分けて進む際に生じる波の抵抗を打ち消すためのものです。

動力機関は、ウェスチングハウスA4W原子炉を2基、蒸気タービン4基を4軸により配し、26万馬力を出力します。エンタープライズでは4基であった原子炉は、技術の進歩により半分の2基となり、より効率的な艦内設計を可能にしています。

蒸気タービンは最高出力付近において最も効率良くなるため、全タービンを稼働して出力を調整するのではなく、4軸によりできるだけ最も効率的な最高出力付近で運用できるようにしています。

A4W原子炉の出力は商用原子炉の数分の1〜十数分の1といわれています。あらゆる過酷な環境下において確実な作動を要求される軍用機器は、民間のものより低性能であることがよくあります。例えば戦闘機のコンピュータは、最新のコンピュータよりもはるかに旧式のものが使われています。原子炉は主機関の他、蒸気カタパルトにも高圧蒸気を供給しています。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)にはそれまでの蒸気カタパルトにかわり、電磁式カタパルトが採用される予定でしたが、蒸気カタパルトとなりました。これは、高度な技術を要する電磁式カタパルトの開発が間に合わなかったといわれており、次世代のジェラルド・R・フォード級に搭載されることになっています。

蒸気カタパルトは、アングルド・デッキとあわせて空母を劇的に変えた発明。航空機を蒸気の力によって射出する装置です。カタパルトの長さは約94mあり、約2秒で時速265km程度まで加速させることができます。ロナルド・レーガン(CVN-76)にはキティ・ホーク級のMk.13カタパルトの改良型であるMk.13-2が4基設置されています。

飛行機が着艦する際には飛行機の機体につけられたアレスティング・フックを艦のアレスティング・ワイヤーに引っ掛けて停止させます。ロナルド・レーガンにはMk.7-3と呼ばれるアレスティング・ワイヤーが採用されています。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)に着艦する第213戦闘攻撃飛行隊(VFA-213)“ブラック・ライオンズ”のF/A-18F。PHOTO USNAVY
ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)に着艦する第213戦闘攻撃飛行隊(VFA-213)“ブラック・ライオンズ”のF/A-18F。PHOTO USNAVY

環境対策のアップグレードは、真空機器(VCHT)と海洋消毒装置です。二つの技術を融合したシステムを搭載した空母はジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)が世界初となりました。ちなみに、艦内には423もの便器が設置されています。

現代の空母は巨大な電子機器の塊といってもいい程、複雑な電子設備を搭載しています。ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)では、光ファイバーを活用して軽量化・省力化が進められています。また、電子機器の搬入・整備などを容易にするため船室の一部はモジュール化され、柔軟な対応を可能にしています。

主なレーダー

対空レーダーは、AN/SPS-49A(V)1が搭載されています。AN/SPS-49はアメリカのレイセオン社が開発した2次元対空レーダーです。レイセオン社は世界第一位のミサイルメーカーとして知られています。

探知距離はレーダー反射断面積(RCS=Radar Cross Section)1平米の目標に対して460km、探知高度は46,000m、精度は56mです。1975年に配備されて以来、改良を重ねながら世界各国の軍艦に搭載されている実績ある対空レーダーです。

ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)に搭載されているA(V)1型は1990年代に登場した改良型。目標毎の速度測定、クラッター抑制性能が向上するなどしています。クラッターとは、レーダースリーン上の乱れ(擾乱)のことです。

次世代のジェラルド・R・フォード級ではイージス艦に搭載されている多機能レーダーの最新型であるAN/APY-3が搭載される予定です。

射撃指揮レーダーはSPQ-9B。こちらも1970年代に就役した定評あるパルス・ドップラー・レーダーであり、水上目標と低高度の空中目標を対象とした捜索・追尾レーダー。探知距離は137km、探知高度は610mです。ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)に搭載されたB型はそれまでの2次元から3次元レーダーとなりました。3次元レーダーはビームを送受信することにより、方位と仰角を同時に走査することができます。

多くの艦上機を運用するニミッツ級は多数の航空管制レーダーを搭載しています。遠距離ではAN/URN-25戦術航法装置により誘導し、次いで92.6km〜55.56kmの探知距離を持つAN/APN-43航空管制捜索レーダーが航空機を補足します。さらに近づいてくるとAN/SPN-46空母進入用レーダーが使われます。条件が揃えば自動着艦も可能な程に進化していますが、パイロットの技量を維持するため普段は手動にて行っているといわれています。

着艦の最終段階において使用される最終段階光学着艦装置は、縦横にライトを並べ、着艦の最終段階にある操縦士が進入角度や方向を判断することができる装置です。ニミッツ級空母にはより改良された改良型フランネルレンズ光学着艦装置が搭載されています。

兵装

いかに強力な艦上戦闘機群を持っていても、1隻約7,500億円(62億ドルを1ドル120円で換算)の原子力空母が単独で行動することはなく、アメリカ海軍空母は空母打撃群(CSG=Carrier Strike Group)という単位で行動し、艦上戦闘機を除いた兵装は控えめなものです。

ちなみに、構成は時代や状況により異なりますが、現在では原子力空母1隻、タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦1隻、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦×2、ロサンゼルス級攻撃型原子力潜水艦1隻、補給艦1隻、総乗員は約7,000人というのが標準的な空母打撃群となっています。

主な兵装はMk.29 ESSMランチャー×2、RIM-116×2、ファランクスCIWS×4となっています。

Mk.29 ESSMランチャー
Mk.29 ESSMランチャーはRIM162 ESSM(Evolved Sea Sparrow Missile)艦対空ミサイルを発射します。速度はマッハ2.5〜3、射程距離は30〜50km、空母に搭載された射撃指揮装置(イルミネーター)からのレーダー波による誘導と、ミサイル自身のセンサによって自律誘導する慣性航法装置を併用したセミ・アクティブ・レーダー・ホーミング
(SARH=Semi Active Radar Homing)を採用しています。

ミサイル自身の能力のみに頼らないこの方式は、ミサイル開発の負担が軽減される反面、1目標に対してレーダーが1つ必要となり、飽和攻撃に対する同時多目標迎撃に弱点があったものの、近年では時間分割情報処理によりこの問題を解決しています。

RIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイル
上記のRIM-162 ESSMが30〜50kmの対空迎撃を担当するのに対して、400m〜1.5kmという近距離を担当するのがRIM-116ローリング・エアフレーム・ミサイルです。こちらは艦のレーダーを活用せず、自身のレーダーのみによって対艦ミサイルを迎撃します。4枚の後翼によってゆるやかに回転しながら飛翔することから名前がつきました。艦のレーダーに依存せず、タ弾数近接迎撃が可能な21連裝の発射システムを2基搭載しています。

艦載機

アメリカ海軍の空母に艦載される航空機は、空母航空団(CVW=Carrier Air Wing)と名付けら編制されています。ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)に艦載されるのは第8空母航空団です。内訳は以下のとおりです。

アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦、第10番艦、ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY
アメリカ海軍ニミッツ級航空母艦、第10番艦、ジョージ・H・W・ブッシュ(CVN-77)。PHOTO USNAVY

第31戦闘攻撃飛行隊(VFA-31)“トムキャッターズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 31 “TOMCATTERS”
使用機:F/A-18E ブロック2

第213戦闘攻撃飛行隊(VFA-213)“ブラック・ライオンズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 213 “BLACK LIONS”
使用機:F/A-18F ブロック2

第15戦闘攻撃飛行隊(VFA-15)“バリオンズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 15 “VALIONS”
使用機:F/A-18C

第87戦闘攻撃飛行隊(VFA-87)“ゴールデン・ウォーリアーズ”
FIGHTER ATTACK SQUADRON 87 “GOLDEN WARRIORS”
使用機:F/A-18C

第134電子攻撃飛行隊(VAQ-134)“ガルーダズ”
ELECTRONIC ATTACK SQUADRON 134 “GAURUDAS”
使用機:EA-6B

第124早期警戒飛行隊(VAQ-124)“ベア・エーセス”
CARRIER AIRBONE EALRY WARNING SQUADRON 124 “BEAR ACES”
使用機:E2-C

第9ヘリコプター海上作戦飛行隊(HSC-9)“トライデンツ”
HELICOPTER SEA COMBAT SQUADRON 9 “TRIDENTS”
使用機:MH-60S

第70ヘリコプター海洋攻撃飛行隊(HSM-70)“スパルタンズ”
HELICOPTER MARITIME STRIKE SQUADRON 70 “SPARTANS”
使用機:MH-60R

第40艦隊後方支援飛行隊(VRC-40)“ロウハイズ”
FLEET LOGISTICS SUPPORT SQUADRON 40 “RAWHIDES”
使用機:C-2A

運用者アメリカ海軍
主要なバリエーション
生産数
スペック型式
全 幅76.8m
全 長333m
全 高
翼面積
自 重
総重量/最大離陸重量
発動機ウェスティングハウスA4W原子炉×2
蒸気タービン×4(260,000shp)
4軸
最大速度
実用上昇限度
戦闘行動半径
航続距離
乗 員
初飛行
就 役2009年1月10日
退 役-
兵 装